市販車のホンダ NSXと、スーパーGT300クラスを戦うARTA55号車のNSX-GT3。一見すると同じように見えますが、その価格差は何と5000万円!そのままでも、ラグジュアリーハイブリッドスポーツとして十分高級なNSXですが、両者にはどんな違いがあるのか?なんと今回は、レース界のレジェンドであるARTA総監督鈴木亜久里さんと、GT300エグゼクティブアドバイザー土屋圭一さんに解説していただきました。
Photo : Kiyoshi WADA Text : Shingo MASUDA

いかにサーキットを速く安全に走るか

日本一の観客動員数をスーパーGTの魅力のひとつといえば、街中でも見かける車種が走っていることです。
鈴木亜久里総監督率いるARTAがGT300クラスで使用しているホンダ NSX GT3は、FIA-GT3に準拠して制作されたレース専用車両。FR化され4気筒2リッターエンジンをフロントに積み、FR化されたGT500のNSX GTと比べて、より市販車に近い存在です。
市販車のNSXと、ARTA 55号車のNSX GT3は見た目ではほぼ同じように見えますが、どういって点が違うのでしょうか?
「一番の違いを説明すると、市販車は公道を安全に走る車。NSX GT3はサーキットで安全に早く走るための車。あくまで市販車のNSXをベースにしてるんだけど、NSX GT-3はサーキットを安全に走るためにお金をいっぱいかけて改造してる。それが金額の差だね」(鈴木亜久里 総監督)
もともと市販車のNSXは、2300万円という超高級スーパーカー(取材時の広報車はカーボンブレーキ装着を装着し2700万円超え!)ですが、ARTA 55号車のNSX GT3は何と7000万円を超えるというのだから驚きです。
では、通称“現場監督”だというエグゼクティブアドバイザーの土屋圭市さんに、より詳細な部分を解説していただきます。
「フロントのリップスポイラーとかボンネットの穴なんかは、フロントのダウンフォースを得るためで市販車にはないポイントだね。あとは前後のフェンダーも市販車より膨らんでる。それと総監督が言った安全というところでは、ロールバーもドライバーを守るためについてる」(土屋圭市 エグゼクティブアドバイザー)

鈴木亜久里総監督と土屋圭市エグゼクティブアドバイザーの解説をもっと詳しく観たい方はARTA公式サイトをチェック!

同じなのはモノコックとエンジンのみ?速さに豪華さは不要

「GT3というルールでは、市販車のベースとなるモノコックを使わなくちゃいけない。あとエンジンも市販車と同じじゃなきゃいけないけど、大きく同じ部分と言ったらそれくらいかな」(鈴木亜久里総監督)
「市販車はスーパーカーとして絶対安全じゃなきゃいけないし、価格に見合った美しさと豪華さを求められるからね。全くの別物と言ってもいいかもしれないね」(土屋圭市エグゼクティブアドバイザー)
ここまでお2人のお話をお伺いしていると、速く走るための空力と、ドライバーを守る安全が市販車とレーシングカーの大きな違いということがよく分かります。
では、もう少し細かい部分をお伺いしましょう。
「さっき言ったみたいに、エンジンはノーマルなんだけど、NSX-GT3はエンジンの搭載位置がかなり低くなっている。これもかなりお金の掛かるポイントだね。」(土屋圭市エグゼクティブアドバイザー)
「レーシングカーっていうのは、重いものをできるだけ低く、車体の中心にもってくるのがセオリー。あと、市販車には無いロールゲージがあって、安全性だけじゃなく、捻じれに対して剛性を保ってる。」(鈴木亜久里総監督)
たしかに、カーボンパネルで豪華に装飾された市販車のエンジンルームに比べ、ARTA 55号車のエンジンは明らかに低い位置に搭載されています。ハイブリッド機構が取り払われたというだけでなく、いかにもメカニカルな部分まで手が入れられているあたり、車好き、メカ好きにとってたまらないポイントです。

ARTA 55号車 NSX GT3はまさに機能美!すべては速さと安全のため

価格差が5000万円という市販車のNSXと、ARTA 55号車のNSX GT3。お金の話ばかりでは下世話に聞こえるかもしれませんが、その価格差は、速く安全に走るためということは間違いありません。もちろん、レーシングカーらしい美しく勇ましい見た目も、ただカッコいいだけでなくすべては速さのため。
イチ車好きとして、ついついその見た目ばかりに目を奪われてしまいますが、ARTA 55号車のNSX GT3には、まだまだ多くの違いや秘密がありそうです。そこでお2人には、もっとお話をお伺いしたいところですが、ここから先はARTA公式サイト、またはモーターズのYouTubeチャンネルでご覧ください。

 

スーパーGTの基礎知識からレースの舞台裏まで紹介!ARTA公式サイトはコチラ