現在も開発競争は留まることなく進化を遂げてきたF1マシン。時にはファンの目を引く奇抜なマシンも登場し、たくさんのルールに縛られながらも、開発者はアイデアを形にし速さを追及してきました。1983年にグランドエフェクトカーが禁止されてから現代までどのように進化してきたかを振り返っていきましょう!
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ルール改定以降、速さを取り戻すべく工夫が見られたF1マシン
1980年前後にF1界で普及したグランドエフェクトカーですが、大きな事故が相次ぎ1983年から禁止されることが決定。その姿を消すことになりました。
新たなルールである「フラットボトム規定」が導入され、前輪から後輪までの車底は平らにするよう義務づけられます。これによりF1マシンのダウンフォースは大きく失われることになりました。
しかしルールの穴を狙って、新たな空力パーツを開発。現代のマシンにも用いられる「ディフューザー」でした。
これは車底が平らにも関わらず、マシン後方をせり上げることで、グランドエフェクト効果を生み出すことができる優れものだったのです。
またボディにはそれまでのアルミからカーボンファイバーを用いるチームも現れ、軽量化のみならずスピードアップにも繋がり、安全面も性能も大きく向上を見せていました。
この当時のエンジンはターボチャージャーで1000馬力を超えるパワーを誇り、それをコントロールするため空力の役割は非常に重要だったのです。
ハイノーズ化が進んだ1990年代
空力も進化を続け、1990年初頭から流行し始めたのはハイノーズ。
これは大きなフロントウイングを装備することで、床下でのグランドエフェクト効果を狙うというもの。ノーズを持ち上げることでマシン前方から多くの空気を床下に流し、より効率よく空気を利用しようという意図で生まれました。
それまで床下のダウンフォース発生はディフューザーに頼っていましたが、1990年にティレルが初めて導入して以降、各チームに浸透していき。90年代後半には完全に主流になっていきました。
この考えは現代でも引き継がれ、レギュレーションが大きく変わる2013年まで流行しました。
また、この時期は安全面においても、凄まじい進歩が見られました。
1994年にアイルトン・セナの事故死以来ドライバー周辺の衝撃を防ぐような配慮がなされ、大きな事故にも耐えられるよう設計が大きく見直されました。
同時に多くの空力パーツが禁止されますが、ルールの穴を狙って一風変わったマシンも登場します。
そのなかでも1997年に現れたティレル025の「Xウイング」は物議を醸しました。
1994年末のレギュレーション変更でドライバー周辺の空力パーツ取り付けに細かく制限が設けられ、そのためドライバーから離した位置にウイングを取り付けることになったのです。
翌年には車幅の減少や溝付きタイヤ導入など、全体的なグリップ力が減った事に伴い、このアイデアを多くのチームが追随するようになりますが、これも安全性の理由から禁止されることに。
しかし禁止に至った本当の理由は美観上の問題とも言われており、見た目こそ不評でしたがファンに記憶されるマシンとなりました。
コンピューターでマシンを設計、近代的なマシン形状に突入した2000年代
2000年代に入るとマシンはコンピューターでのシュミレーションを繰り返し、マシンを熟成させるという方法が主流になっていきます。
この頃になると様々なレギュレーションに縛られ、マシンの外観は大きな違いが見られないようになり、見た目と同じくレースは微々たる空力性能が勝敗を分ける時代に突入するのです。
そして2004年にもウィリアムズから珍しいマシンが登場します。
このFW26は大きく持ち上げられた特徴的なフロントノーズ。その見た目から「セイウチノーズ」と呼ばれました。
これは床下に空気を流すハイノーズの考えに沿ったものでしたが、熟成には至たらず半年ほどで開発を断念し、姿を消すことになります。
この時代のマシンはF1の歴史の中でも最も多くの開発費がかけられ、多くの自動車メーカーが莫大な資金を使ってマシンを開発し続けました。
その甲斐もあってか、F1マシンは理論上では高速走行時に天井に張り付いて走行ができるほど、大きなダウンフォースを獲得しており、空力面は大きな進化を見せていたのです。
こうして風洞など工場で研究を重ね続けた結果、2000年代後半に入ると前後ウイングの上にも小さな空力パーツが取り付けられ、ボディの至る所にダウンフォースを獲得するべく工夫が見られるようになります。
しかし、これらの空力パーツは多くの乱気流を発生させるため、レース中に前方のマシンの背後を走行することが困難になっていきバトルの減少に繋がりました。
そこでFIAは打開策としてマシン規定に関する、ある方向性を打ち出しました。
バトル増加を狙い空力パーツを規制、すっきりした見た目に変貌した近年のマシン
バトルの減少を問題視したFIA(国際自動車連盟)は、2009年からボディに空力パーツを取り付けることを禁止し、代わりにより大きなウィングを搭載することになりました。
これにより近代のF1マシンはすっきりとした見た目に変貌し、ダウンフォースの抑制に成功したのですが、大きなフロントウイングが搭載され、その見た目はチリトリに似ているという揶揄もありました。
2011年には禁止された可変ウィング(DRS)をバトル時のみ許可するなど、さらなるバトル増加を狙いこの目論見は成功。コース上ではバトルが多く見られるようになったのです。
バトルが増えた一方で、空力パーツの禁止などでダウンフォース量が減少すると、エンジニアは再びマシンの床下でのグランドエフェクト効果を狙うようになります。
するとフロントノーズは年々持ち上げられ、90年代に見られたようなマシンの下に空気を送るべく、ハイノーズ化がより一層進むことになりました。
ところが、マシン同士が接触した際にフロントノーズがドライバーに当たりかねないという理由から、またしてもレギュレーションで縛られることになったのです。
そして誕生したのが「段差付きフロントノーズ」でした。
少しでも高さを保ちたいチームの意向と、安全面に配慮したいFIA(国際自動車連盟)の意見がぶつかり合った結果、2012年にはこのような段差が生まれることに。これには多くのファンも困惑することになったのです。
そこで翌年にはこの段差を隠すための化粧パネルが許可され、見た目に関した否定的な意見は少なくなりましたが、結局ノーズは依然高いままで、肝心の目的を果たすことが出来ていませんでした。
そこでFIAはさらに細かくフロントノーズの先端の高さを制限し、F1マシンは大きく変貌することとなるのです。
2014年からはフロントノーズの先端の高さを制限したことにより、当初懸念された危険性を打ち消すことに成功します。
それでも床下に空気を送りたいというチームの思惑は変わらず、ノーズの先端部分のみを細くし、ルールの範囲内で無理やりレギュレーションに対応。
その結果生まれた「アリクイノーズ」は、奇妙なフロントノーズとして大きな衝撃を与えたのです。
しかしアリクイノーズも開発が進むと、少しずつその姿を消すことになりました。
フロントノーズに穴を開けたり、ウイングを吊り下げる部分を小型化したりといった工夫がなされ、チームによりそれぞれの方向性を持って開発が進められています。
そうして2016年のマシンはF1史上で最も速いと称されることもあり、開幕戦オーストラリアGPでは早速コースレコードを記録するなど、その速さを証明する実績も残しています。
このような進化には失敗と成功を繰り返し、0.001秒を削るべく開発に励んだエンジニアたちの努力が、F1マシンから見て取れますね。
まとめ
創世記から2本に分けてF1マシンの歴史をご紹介しました。
まさに命がけといえる初期から、最新のテクノロジーを駆使した近年のマシンなど。
少しずつ縛られるレギュレーションと、その穴を狙い少しでも速いマシンを作りたいチームの意向がぶつかった結果、たくさんのマシンが登場してきたのです。
2017年からは車両に関するレギュレーションが変更されることが決定しており、またルールの穴を狙って印象に残るマシンが生まれてくるのか、これからも注目ですね!
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