日本で最も人気のあるツーリングカーレース、SUPER GT。全8戦のなかで最も異色なタイラウンドに、GOODSMILE RACING & Team UKYOのチームスタッフとして、Motorz編集部員が帯同しました!今回は、現地で見た海外ラウンドと日本ラウンドの違いをご紹介します。
CONTENTS
SUPER GTとは
日本で最も人気のあるツーリングカーレース、SUPER GT。
GT500とGT300という、速さの異なる2つのクラスが混走することで、コース上のいたるところでオーバーテイクが見られるだけでなく、プリウスVSランボルギーニのような、大衆車VSスーパーカーといった戦いが見られるのも魅力のひとつ。
また、ワークスチームVSプライベーターの戦いが、限りなく高次元で見れることも、多くのファンを魅了しているポイントです。
そんなスーパーGTは、日本中の国際サーキットでレースが行われますが、そのうちの1戦には、海の向こうタイでの1戦も設けられているのです。
第4戦のチャーンインターナショナルサーキットとは
タイのブリラム県にあるチャーンインターナショナルサーキットは2輪最高峰ロードレース、MotoGPも開催される国際サーキット。
高低差が少なく直線的なレイアウトなため高速バトルが多く、また、タイという国の気候の特徴により、気温や路面温度も高くなるので、身体にもタイヤにも厳しいサーキットとなっています。
SUPER GTとの縁は深く、同サーキットのこけら落としは2014年10月のSUPER GT第7戦でした。
今回は、そんなSUPER GT唯一の海外ラウンドと国内ラウンドにはどんな違いがあるのか?という点に注目して、ご紹介していきたいと思います。
金曜日:割とのんびりスタート
金曜日は比較的時間に余裕を持ってスタートします。
SUPER GTは公式練習もないため、ピットでは予選に向けた準備や設営が行われる日となるのです。
日本でも設営は行われますが、大きく違うのはピット内にキッチンがあるということ。
日本ではデリバリーのお弁当などが多いですが、チーム全員がより良いコンディションでレースを行うために、チーム側で食事を用意。
タイでもしっかり日本食が準備されました。
また、長期滞在になるため、洗濯機まで置いてあるという徹底ぶり。
この辺りは主にマネージャーさんのお仕事で、お母さんのようにチームスタッフのケアを行っている姿が新鮮でした。
もうひとつの違いは、サポートレース。
日本のスーパーGTではPCCJとFIA-F4が定番ですが、タイではホンダ車とトヨタ車による2種類のサポートレースを開催。
トヨタ車はVIOSとALTISの2種類のセダン車が中心で(VIOSはトヨタ・ヴィッツのセダン版のような車。ALTISはトヨタ・カムリと同じ仕様の一台。)、マシンは内装を外し、ロールケージが張り巡らされ、完全にレーシングカーの様相です。
ホンダ車のレースはフィット(現地名:JAZZ)やCR-Zが中心となっており、チューニングもかなり自由度が高いようで、ターボを装着したフィットや、ラムエア機構をつけたCR-Zなど、日本ではなかなか見れないレーシングカーが多数参戦していました。
パドックは、日本で並んでいるようなモーターホームは一台もなく、すべてがコンテナとプレハブ小屋。
色も統一されており、整然と並んでいる姿は壮観で、ここでしか見れない姿のひとつです。
チームとしての、金曜日の一大イベントは公式車検。
この車検を通らないと、レースに出ることができません。
各チーム、マシンを押して車検場まで持ち込む姿は、金曜日にだけ見れるレアなシーンです。
そして、タイの名物イベントといえばやはりコースウォーク。
各チームドライバーやスタッフ、RQなどがコースに出て、ゆっくりと歩いたりジョギングしたりと自由に楽しんでいる姿が目につきました。
基本、コースを歩くのはサーキットの状態をしっかりとチェックして歩くという印象がありますが、リラックスして散歩感覚で歩いている人も多い印象です。
基本的には、この日にチーム全員が集まるため、チームMTGも金曜日から。
タイヤチョイスや、予選・決勝の戦略などを簡単に話し合い、認識を合わせて翌日に臨むのですが、あまりピリピリしたムードはなく、冗談も交えつつリラックスしたムードでの進行でした。
最終的には、監督およびドライバーブリーフィングを終え、ピットを施錠して一日が終了します。
土曜日:予選
日本では、予選日の朝8時前後からピットウォークがありますが、タイでは金曜日に開催されたので、朝はのんびりスタート。
予選に向けてマシンのセッティングを変更しつつも、Q1が始まる前までにはリラックスしたムードで進行します。
この日、日本と大きくと違ったのはピットウォーク。
チャーンインターナショナルサーキットはピットレーンも広く、日本のピットウォークに比べると、かなり余裕を持って回ることができますが、日本から観戦に来たファンと、現地のレースファンが入り乱れます。
一番驚いたのはコースマーシャルがファンとともに参加し、グッズを貰ったり、写真を撮ったりと自由に楽しんでいること。
コース上をマシンが走っていない間は、彼らもイベントを楽しむことができるという点に、タイという国の大らかさを感じました。
レースを円滑に、安全に進行するプロフェッショナルが彼らであり、そのおかげでレースを楽しむことができるのですが、彼らもいちレースファン。
むしろ、最大のファンだとも言えるかもしれません。
そんな彼らと同じ時間を共有し、その場で「いつもありがとう」と伝えることが出来るのは、全8戦中タイだけかもしれません。
また、土曜日からは屋台村もフル稼働!
今回は日本のレースが来るということで、コンセプトは縁日のようでした。
鳥居や提灯が飾られているだけでなく、おでんや焼き鳥など日本食の販売も行われており、お祭りムードはばっちり!
日本でもおなじみトヨタとホンダのブースには、タイでのみ販売されている日本車を見ることができるのも嬉しいポイント!
C-HRのレーシングカーも展示されていました。
また、タイラウンドはタイの石油会社であるpttオイルがスポンサーをしているため、巨大なブースではダンスショーやドリンクを振舞っていました。
このダンスショーはピットウォーク中も開催され、コース上で現地ダンサーの迫力のダンスが見られました。
なお、pttオイルさんから今回Motorz向けに読者プレゼントをいただきましたので、記事の最後にご紹介させていただきます。
RQのステージもとても大きく、華やかなステージとなっていました。
予選が始まると、それまでの柔和な空気から一気にレースムードに!
この雰囲気に、サーキットが変わっただけで、SUPER GTの1戦であることには変わりがないということを、改めて思わされた予選日でした。
日曜日:決勝
決勝日。朝は予選日と同じように10時ごろにサーキットに入ります。
コースでは現地のサポートレースが開催されていましたが、チームの雰囲気はそれまでの2日間とは全く異なり、ピリピリとした緊張感が漂います。
この日は日本と同じようにグリッドウォークが行われましたが、日本とは比べ物にならないほどの酷暑。
コース上に置いた温度計を確認すると、なんと45℃!
次第に50℃を超えて計測不能となってしまいました。
そんな灼熱の気温のなかで、レースがスタートします。
GOODSMILE RACING & TeamUKYOの4号車は、片岡選手のドライブで8番手からスタート。
チームの作戦は、ピットストップを限界まで遅らせることでリードを築き、順位を上げ、ドライバー交代後のスティントで全開アタックというものでしたが、この作戦が裏目に。
全18台中14台がピットを終え、間もなくピットに入るというところで、GT500のNSX3台が絡むクラッシュが発生。
セーフティカーが導入されて、ピットレーンはクローズ。
これによって築いてきたマージンを全て失ってしまい、SCが解除されたピットイン後は14位でコースに復帰。
最終的には12位でレースを終えました。
レース後は、即座に撤収作業。
マシンは日本に送り返すため、コンテナの中にしまう準備が行われます。
船便で日本に送るので、コンテナや車両内には大量の乾燥材を。
また、ダクトなどはネズミの侵入を防ぐために目張りが行われます。
ドライバーや監督は、即座に撤収となり、ホテルに帰った後、ブリラムからバンコクまで5時間かけてハイエースで移動します。
そして0時頃、バンコクのホテルに到着し、長い長い決勝日が終わるのです。
まとめ
今回、タイまでGTの取材に行って感じたのは、文化の違いはあれど、レースの楽しみ方は日本もタイもあまり変わらないということ。
サーキットの中には露店が立ち、ファンは自由にレースというイベントを楽しんでいました。
その中で違ったのは、運営側と観客の境目はそこまではっきりとは分けられておらず、作り手もイベントを楽しんでいるということ。
レースに関わる人たちの大半は、もともとレースファン。
いつもは裏方として助けてくれていますが、こうやって一緒に交流できる場を日本でも持ちたいなと、改めて感じさせられたタイ取材でした。
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