今年も熱戦が繰り広げられたスーパーGT。中でもGT500クラスは、各レースでドラマが生まれ、時には絶叫し、時には涙するシーンが数多くあった。本来なら全8戦を細かく振り返っていきたいのだが、今回は厳選した名勝負・名シーンを8つご紹介しようと思う。
脇阪寿一がGT500引退、思い出のマシンでラストラン
2016シーズンのスーパーGTは、脇阪寿一の引退から始まった。
1月末に行われたトヨタ・モータースポーツ体制発表会で、第一線を退くことを発表。そのままチームルマンの監督就任も明らかにされた。
通常なら、シーズン途中やシーズン初めに引退表明を行い、最終戦でラストランというのが普通だったが、今回は開幕を前に引退という異例の流れ。これまで3回のシリーズチャンピオンを獲得し、通算11勝を記録。それ以上に数多くの名バトルを繰り広げ、ファンを魅了した。
そんなヒーローの引退ということで、開幕戦では急遽引退セレモニーが行われた。
岡山国際サーキットには、自身が2002年にチャンピオンを獲得したエッソ・ウルトラ・フロー・スープラが持ち込まれ、当時のレーシングスーツに身を包んだ脇阪が現役最後の走行を披露。最後のスピーチ時には今季参戦するドライバーがほぼ全員集まり、彼の走りを毎回応援してきたファンもつめかけた。
長年にわたってスーパーGTを代表するドライバーの一人として活躍、またモータースポーツ普及のために様々な活動も行なってきた。そんな彼の引退するということは“いつの時代に世代交代は必ずある”ことを改めて感じさせられた瞬間でもあった。
千代勝正、デビュー戦からポテンシャル爆発
開幕戦の岡山で一際注目を集めたのが、GT500デビューを飾った千代勝正の走りだった。
2012年からGT300参戦を開始し、2014年から日本を離れブランパン耐久シリーズを主戦場として活躍。それまでは、なかなかスポットライトを浴びない日々が続いていたが、2015シーズンに才能が開花していく。
年始早々に行われたバサースト12時間レースで総合優勝を果たすとブランパンシリーズでもチャンピオンを獲得。さらに空いた時間を縫ってGAINERからGT300に参戦し、フル参戦とはならなかったがチームタイトル獲得と僚友アンドレ・クートのドライバーズチャンピオン獲得に貢献した。
そして2016年。満を持してGT500へ。チームは2度のチャンピオン経験を誇るMOLA。チームメイトは大ベテランの本山哲だ。周囲からの大きな期待と注目が集まる中で挑んだ公式予選。誰もが予想していなかった快進撃を見せる。
予選Q1は、アタック開始早々からコースレコードが更新されるハイレベルの戦いとなったが、その中で千代は1分18秒885をマーク。前年チャンピオンの松田次生(MOTUL AUTECH GT-R)を抑え込み、トップ通過を果たした。いくら才能があるとはいえ、実質一発勝負となっているGT500の予選で圧巻の走りを見せた。
その勢いと速さは決勝でも発揮される。本山からバトンを受け取ると、いきなりトップを上回るペースで周回を始め、WAKO’S 4CR RC Fの大嶋和也をパス。3番手に浮上するが、彼はさらに上を目指し、2番手のKeeper TOM’S RC F(平川亮)に接近。途中コースをはみ出すくらいの気迫ある走りでファンを釘付けにした。
何度も追い抜こうとトライするが、結局順位を上げることができず3位でチェッカー。優勝できずに悔しい結果とはなったが、今後の千代の活躍を期待する声が圧倒的に大きかった。
その後も、存在感ある走りをみせたが、第5戦富士で大クラッシュに見舞われてしまい、第6戦鈴鹿を欠場。後半戦は不完全燃焼という結果に。それでも、2017年はどんな走りを見せてくれるのか、今から楽しみだ。
これまで活躍した脇阪が去り、ルーキー千代の活躍で始まった2016シーズン。第2戦以降も、数多くの名勝負・名シーンが生まれました。その様子は次のページで!