GT-R同士の白熱トップ争いから…

©︎Tomohiro Yoshita

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ゴールデンウィーク恒例の第2戦富士。ここでもGT-R勢が速さをみせ、終盤は昨年チャンピオン争いをしたMOTUL AUTECH GT-RとカルソニックIMPUL GT-Rの一騎打ちとなった。

迅速なピットストップでレース終盤にMOTUL GT-Rのロニー・クインタレッリがトップへ立つが、昨年のリベンジも果たしたいカルソニックGT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが意地のオーバーテイクを披露。トップを奪還する。

このまま、陣営としては2年ぶりとなる勝利に近づいていったが、チェッカーまで残り3周というところで悪夢が襲う。

100Rを全開で走行中に突然左リアタイヤがバースト。そのままマシン後部のカウルも粉々にしながらスピン。幸い大クラッシュにはならなかったが、ここまで100周以上にわたって築き上げ、掴み取ったトップの座を一瞬にして手放すことに。

あまりにもの劇的な結末に、サーキットにいた誰もが言葉を失っていた。

 

2016年の“SUGOの魔物”は…

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“スポーツランドSUGOには、魔物が棲んでいる”と言われるほど、大荒れの展開になることが多いSUGO戦。今年はラップリーダーを奪うチームが目まぐるしく変わる乱戦となった。

予選ポールポジションを獲得したWAKO’S 4CR RC FがスタートからリードするがGT300と接触に痛恨のスピン。代わってトップに立ったKEIHIN NSX CONCEPT-GTだが、こちらはZENT CERUMO RC Fとのトップ争いのバトル中にスピンを喫してしまう。

これでZENT RC Fがレースをリードするが、そこに8番手スタートのDENSO KOBELCO RC Fが接近。参戦2年目を迎えたヘイキ・コバライネンが昨年とは見違える速さをみせ、トップ浮上。ランキング首位のMOTUL GT-Rがウェイト80kgということもあり、レクサスRC F勢が速さをみせたが、最後に大逆転をみせたのが、近藤真彦監督率いるフォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rだった。

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タイヤ無交換作戦を決行し首位に浮上すると、最後までライバルたちを粘り強く抑え込み、最後はGT300車両のクラッシュになりレースは途中切り上げとなったが、待望の今季初優勝を飾った。

全15台中、半分以上の8台が同レースでトップ3争いをする、まさに乱戦となった。

 

“ギリギリセーフだった”オーバーテイク

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天候が目まぐるしく変わり、波乱の展開となった第6戦鈴鹿1000km。そのハイライトのひとつがRC F同士のバトルだった。

レース後半。トップを快走していたau TOM’S RC F(ニック・キャシディ)にZENT RC F(立川祐路)が接近。132周目のスプーンカーブでトップが入れ替わった。しかし、このオーバーテイクが大きな議論を呼ぶこととなったのだ。

2台が同コーナーに差し掛かる直前にKEIHIN NSX CONCEPT-GTがスピン。その車両回収のために牽引バギーが出動し、さらに安全を促すためにイエローフラッグが振られていた。

その最中でのオーバーテイク。公式映像でもはっきりと捉えられていたため、ZENT RC Fには黄旗区間追い越しによるペナルティが通達されるだろうと誰もが思った。

しかし、GTAの判断は“セーフ”。つまりペナルティなし。「あれはどう考えてもアウトだろう?」という声が大きかったが、レース後にGTAに確認したところ“テレビカメラの位置”が問題だったという。

映像で写っていた「21番ポスト」はスプーン1つ目から2つ目までを管轄している。スピン車両が止まっていた場所はスプーン2つ目以降が管轄となる「22番ポスト」。ここは最初から黄旗の対応だった。

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しかし、2台が21番ポストに差し掛かる際には車両回収バギーが出動しているため、白旗は振られており、ここを通過した瞬間に黄旗が出された。つまり2台が目視で確認できる時点では黄旗が出ていなかったため、追い越し禁止は適用されない、というものだ。

ZENT RC Fをドライブしていた立川も22番ポストに到達するまでにオーバーテイクを完了しているため、ここでの黄旗にも引っかからない。

今回はテレビカメラの位置的な問題で黄旗が出ているように追い抜いたように見えたが、競技委員が審判する場合は、専用のカメラを使用。そこには2台が21番ポストを通り過ぎた直後に黄旗が振られていたのが確認されたため、ペナルティには至らなかったという。

結局、2台のバトルは最終ラップまで続いたがZENT RC Fが逃げ切って今季初優勝。チャンピオン争いに名乗りを上げた。

 

ホンダに期待の新星「牧野任祐」現る

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第7戦タイを前に、ビックニュースが飛び込んできた。道上龍監督率いるドラゴ・モデューロNSX CONCEPT-GTがドライバー体制を変更。2シーズンに渡り、同チームから参戦してきたオリバー・ターベイがフォーミュラE参戦に専念するため離脱。その代わりに抜擢されたのが、若干19歳の牧野任祐だった。

第6戦鈴鹿ではロータス・エヴォーラの第3ドライバーとして初参戦を果たしたばかりで、もちろんGT500マシンに乗るのは、レースウィークが初めて。期待半分、不安半分の中で公式予選を迎えた。

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Q1では武藤英紀が好タイムをマークしQ2へ進出。ポールポジションがかかる大一番で、ルーキー牧野は圧巻の走りを見せ、トップに0.033秒差に迫る1分24秒340を記録。多くの強豪ライバルを抑え堂々の2番手を獲得した。

翌日の決勝では、Weds Sport  ADVAN RC Fの先行を許してしまうが、自分のパートではGT500初戦とは思えない冷静な走りをみせ、2位を死守。今季は不振が続いていたホンダ勢に、シーズン最高位タイとなる2位表彰台。そして、結成2年目のドラゴに待望の初表彰台をもたらした。

 

GT500参戦6年目、苦労が報われたバンドウ初優勝

©︎TOYOTA

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タイ戦でのハイライトといえば、やはりWeds RC Fの初優勝だろう。

これまではGT300で、セリカやIS350で大活躍しチャンピオンも獲得。同クラスでは強豪チームの一つだった。

そんな彼らがGT500にステップアップしたのは2011年。当時は東日本大震災直後でシリーズスケジュールも大幅に変更になるなど、様々な影響がでたのだが、デビューレースとなった第2戦富士では片岡龍也/荒聖治組が3位表彰台を獲得。幸先の良いスタートを切ったのだが、その後はハイレベルなGT500の争いに競り負ける日々が続き、我慢を強いられる日々が続いた。

参戦6年目を迎えた今年は関口雄飛と国本雄資のレクサス若手コンビ。序盤戦からトップに食らいつく走りを見せ、タイではついにポールポジションを獲得。決勝も序盤からリードを広げ“速くて強い19号車”を披露した。

途中にタイヤパンクに見舞われるが、幸いピット入り口の少し手前だったため、タイムロスを最小限に抑えてタイヤ交換。運も味方につけ、最後まで力強い走りを披露。欲しくて欲しくて仕方なかった初勝利を掴み取ったのだ。

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パルクフェルメでは、GT300時代からチームを率いてきた坂東正敬監督はパルクフェルメで号泣。彼の父であり、GTA会長である坂東正明氏も涙していた。

いまや世界トップレベルとも言われるほどシビアな争いをしているGT500。そこで勝つことがどれほど大変で、勝った瞬間の喜び何物にも代え難いもなのか、それを感じさせられた1戦だった。

 

変則2連戦でサードが本領発揮

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2016年のGT500最終ラウンドは、異例の2日連続決戦となった。

4月に起きた熊本地震の影響で、オートポリス大会が中止。その代替えとして最終戦もてぎの土曜日に第3戦のレースを行うことになった。予選はそれぞれの朝に15分ずつ行い、そのまま午後の決勝へ。スーパーGT史上初めてとなる慌ただしいレースウィークが開幕した。

ここで強さを見せたのがDENSO KOBELCO RC F。ハーフウエットとなった土曜日(第3戦)の予選でコバライネンが初ポールポジションを獲得。決勝ではフォーラムエンジニアリング GT-Rのタイヤ無交換作戦にやられてしまい2位フィニッシュとなるが、不振に陥っていたMOTUL GT-Rを逆転しランキング首位に躍り出た。

翌日の第8戦では、平手晃平が魅せる。予選ではコースレコードを塗り替える速さでポールポジションを獲得。チャンピオンが決まった最後の決勝では、前日の負け分も取り返す堂々とした走りを見せ、今季初優勝を獲得。同時に、自力でサード初となるシリーズチャンピオンを獲得した。

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彼らは勝つために今シーズンは様々な変更を行い、コバライネンをエースにする体制に。序盤に2度の2位を獲得、土曜日の決勝でも2位と好成績を残していたが、彼は純粋に“優勝”がほしかった。そのこだわりがチャンピオン獲得へつながった。

日産GT-R勢が圧倒的有利と言われていた2016シーズン。しかし終盤にはレクサスRC F勢が意地をみせ、現行マシン最後のレースで有終の美を飾った。

 

まとめ「いよいよ2017シーズンへ…」

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DTM規定ベースの車両が導入され、3年が経過。来年はレギュレーションが大幅に変わり、3メーカーともマシンが一新される。

すでに参戦マシンも発表されており、レクサスはLC500、ホンダは新型NSX、日産は2017年型GT-Rをベースにしたマシンになる。ダウンフォース25%減になるため、見た目はほぼ一緒だが、全く別物のマシンになる。つまり、勢力図も全て白紙になって2017年シーズンを迎えることになるのだ。

これまでは、日産勢の強さが目立ち、そこに最後はレクサスが追いつき、ホンダは苦戦続きという印象が強いかもしれない。これが来年はどう変わるのか、非常に楽しみなところだ。

一つだけ確実に言えることは、来年も手に汗握る興奮と、涙がでるほどの感動がスーパーGTのサーキットで生まれるだろう。