近年、耳にすることが多い『ダウンサイジングターボ』という言葉。欧州車を中心に採用車種を増やし、最近では国産車にもその流れが伝播してきています。これは、排気量を下げることで排出ガスの量も下げようという目論見ですが、果たして本当に排ガスの量は減るのでしょうか?また、燃費などにはどのような影響を及ぼすのでしょうか?

掲載日:2019年8月18日

出典:https://www.fiat-auto.co.jp/500/

 

ダウンサイジングターボって何?

 

出典:https://www.fiat-auto.co.jp/500/

 

エコだエコだと叫ばれる世の中になって久しいですが、自動車メーカーの中にはハイブリッドのように電気とモーターの力に頼らず「エンジン自体の性能を見直して、燃費をより良くしよう」という考えをもつメーカーもあります。

例えばドイツのフォルクスワーゲンや、日本ではマツダがディーゼル技術を磨き上げ、ガソリンエンジンながらもエコロジーな性能をアピールしています。

そんな各社が提案するガソリンエンジンの最適解の中で、現在の主流となっているのがダウンサイジングターボです。

ダウンサイジングターボとは、これまで搭載していたエンジンよりも小型のターボ付きエンジンを搭載することで、エンジンの排気量自体をさげつつも、パワーを確保しようという考え方となっています。

 

ダウンサイジングターボの傑作、ツインエア

 

各メーカーから様々なダウンサイジングターボが作られている中、ダウンサイジングターボが流行り始めた頃に、まさにお手本のような形で登場したのが、イタリアのフィアット社が開発した875ccの2気筒エンジンユニット『ツインエア』でした。

そんなツインエアは、デビュー当時の2011年インターナショナルエンジンオブザイヤーで総合最優秀賞をはじめとした4部門を受賞した、まさに世界が認めた名機。

このツインエアがダウンサイジングターボの傑作と賞賛される所以は、”エコなのに走りが楽しい”ことに尽きます。

ルパン三世の愛車としても知られるチンクエチェント(ヌォーバ500)も、実は同じ2気筒エンジンでした(500ccですが)。

往年のフィアット500のように「パタパタパタ〜ッ」という2気筒ならではの独特なサウンドを奏でながら小気味よく走る姿は、思わず偉大なる先代を思い出さずにはいられないはず!

チンクエチェントの小型で取り回しの良いサイズ感にツインエアは非常にマッチしており、排気ガスを削減しつつも、先代以上のファントゥドライブを実現。

デビューから今日まで、10年近くも同車が愛され続けている理由の大きな一因を担っています。

 

ツインエアの仕組み

 

フィアット 500

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ツインエアユニットに使われている2気筒エンジンには、フィアットが10年の期間と約1億ドルもの大金を投じて完成させたバルブ可変機構『マルチエア』が採用されています。

そんな、2気筒エンジンに組み合わせられたこのマルチエアこそ、ツインエアエンジンをダウンサイジングターボユニットへと完成させた最大の功労者なのです。

そもそもですが、バルブの開閉はカムシャフトと呼ばれる部品が行なっています。

エンジンはカムシャフトの回転にあわせてバルブが開閉する仕組みとなっており、4サイクルエンジンの場合、シリンダー内でピストンを動かすクランクシャフトが2回転する毎に1回燃焼しています。

そしてクランクシャフトが2回転する間に、吸気バルブと排気バルブを動かすカムシャフトはそれぞれ1回転ずつしているのです(つまり半分の速度で回ってます)。

しかし、マルチエア搭載のエンジンには吸気側のカムシャフトが存在しません。

その代わりに油圧ピストンが吸気バルブを制御しており、自由なバルブ開閉を実現。

従来通りのカムシャフトでは実現不可能だった、1ストロークの間にバルブを2回開けることが可能となったのです。

そして、吸気バルブを自在かつ緻密にコントロールすることで、低回転時のトルク増大や、最高出力と燃費の向上、ターボのハイレスポンス化などなど……排気量を下げることで生まれるデメリットを相殺した、良いことづくめのエンジンが誕生しました。

これにはもちろん小型のターボユニットも、低回転時のトルクのアシストに一役買っています。

2気筒エンジン、マルチエアテクノロジー、インタークーラー付きターボが三位一体となって、初めて875ccでもリッターカー並みの走りを実現したのです!

 

まとめ

 

©️Motorz

 

今回はダウンサイジングターボと、その代表例としてフィアットのツインエアユニットをご紹介しました!

世の中はどんどんと電動化していく流れになっており、今後電気自動車がメインになっていくことは間違いありませんが、時代の流れの中で内燃機関はまだまだ発展していくはずです。

近い将来、電気自動車がメインストリームとなるまでに、既に誕生から100年以上が経過したガソリンエンジンはどこまで進化できるのか。

例え、世の中を走る自動車が限りなく100%に近い比率で電気自動車になったとしても、技術者たちはエンジン技術を研鑽し続けるはずです。

 

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