自動車のエンジン性能を語る上で、頻出ワードである馬力やトルク。ぼんやりとした意味は分かっていても、正しく理解していないという方は多いのではないでしょうか。更に、パワーウエイトレシオやトルクウェイトレシオといった、一歩踏み込んだ部分ならなおのこと。そんなエンジン性能用語を解説していきます。
馬力とは?
エンジンパワーを表す数値として、最も多く用いられるのが馬力ですが、その定義を知っていますか?
馬一頭あたりのパワーなどと表現されることもありますが、きちんとした定義が存在しています。
その定義とは「1秒あたりにどれだけの仕事(エネルギー)を発生させるか」です。
私達が普段、パワーと表現しているものは、いかにエネルギーを発生させられるかということなのです。
これは、そのまま自動車の最高速度に影響を与える数値であり、同じ重量であれば馬力の大きい車ほど最高速度は速くなります。
自転車を漕ぐ際のペダルの回転数を馬力だと考えると、イメージしやすいかと思います。
カタログのスペック欄に「最高出力Kw(PS)/rpm;103(140)/5,500」などと表記されているのが馬力です。
この数値の意味を解説すると、エンジン回転数が1分間に5,500回転する際に、最も出力を発揮することができ、それが103kw、140PSという数値だということです。
ここで、kwとPSという二種類の数字があるのはなぜなのか、疑問を持った方もいると思います。
日本ではPSが馴染み深く、kwのイメージは薄いかもしれませんが、世界的にはSI国際単位系であるkwが一般的。
日本でも国際単位系へと移行するために、ここ数年はkwによる馬力表記が増えています。
トルクとは?
トルクは、物体を回転させる為の力の大きさを表す言葉です。
自転車を漕ぐ際の、ペダルを踏み込む力の大きさがトルクだと考えれば、わかり易いと思います
トルクが大きいほど、タイヤが転がろうとする力が大きくなるので、加速力と密接に関係する数値です。
カタログのスペック欄には「最大トルクN・m(Kg・m)/rpm;230(23.4)/2,500-3,500」という表記で示されます。
こちらも馬力と同じで、従来日本で使われてきたKg・mとSi国際単位系のN・mとの併記が増加。
数値の見方も馬力と同じように、記載されたエンジン回転数の際に、最大トルクを発生しますよという事を表しています。
気にするべきは「ウエイトレシオ」
馬力、トルクの数値が大きけらば最高速度や加速力のある車なのかと言うと、もちろんそんなことはありません。
例えば、中型トラック「日野レンジャー」のエンジンスペックを見ると、260PS、90kg・mという数値になっています。
この数値はスイフトスポーツで比較すると馬力は2倍弱、トルクは4倍弱あることになりますが、日野レンジャーはスイフトスポーツより最高速度も加速力も劣っています。
なぜなら、レンジャーとスイフトスポーツでは車両重量に8倍近くの差があるからです。
つまり、馬力とトルクから最高速度や加速力を比較するためには、車の重量も気にしなければなりません。
そこで登場するのが「ウエイトレシオ」という考え方です。
馬力/トルクを車体重量で割った時に、答えとして出てくる数値が1馬力/トルクが支える重量を表した数値となります。
その、1PSで動かさなければならない重さがパワーウエイトレシオ、1kg・mのトルクで動かさなければならない重さがトルクウエイトレシオといいます。
理論上は、パワーウエイトレシオの数字が小さいほど最高速度が速く、トルクウエイトレシオが小さいほど加速力が大きいということになります。
パワーウエイトレシオ1位の車は?
現在のパワーウエイトレシオランキング1位の車は「ケーニグセグ・ジェスコE85」です。
1420kgの車重に対し、V8ツインターボエンジンがひねり出す馬力はなんと1600PS!
この時のパワーウエイトレシオは0.888という数値を叩き出しています。
ランボルギーニのアヴェンタドールが2.06、F1が0.6前後と言われているので、ジェスコE85の数値がいかに凄いのか、ご理解いただけるのではないでしょうか?
また、トルクウエイトレシオでもこの車がランキング1位であり、現在最速のスーパーカーと言っても過言ではないでしょう。
まとめ
なんとなく、数値が大きければ凄いというイメージのある馬力やトルク。
それぞれがどの性能に影響するのか、重量との関係性を表すウエイトレシオとは何なのかを、理解していただけたのではないでしょうか?
スペックを見る際には、是非載っている数字だけでなく、ウエイトレシオを計算して比較してみてください。
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