現在は軽自動車にすら当たり前のように使われている可変バルブ機構ですが、一躍有名になったのはホンダVTECが「リッターあたり出力100馬力」を達成するスポーツカー用自然吸気エンジンとして登場した時でした。それを達成するための構造、そして開発のポイントはどんなところにあったのでしょうか。

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ホンダVTECとは何が「世界初」だったのか?

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4サイクルエンジンのエネルギー効率は吸排気バルブの開閉タイミングとリフト量によって決められますが、昔のエンジンはその用途によって、最適とされる回転数で最大効率に達するよう設計され、それ以外の効率低下は目をつぶるようになっていました。

例えばレース用エンジンなら高回転高出力な代わり、低回転ではアイドリングも困難なほど効率が悪くなり、逆に実用エンジンなら低回転で粘り強いトルクを出す代わり、高回転は回らないなど。

その解決策として、回転数に応じバルブの開閉タイミングやリフト量を変化させれば、低回転でも高回転でも効率が良くなるとして各メーカーで研究が進められていました。

その一部は1970年代から、日本でも1980年代前半には初期の可変バルブタイミング機構を搭載したエンジンが量産車に搭載されていましたが、吸排気バルブ開閉タイミングとリフト量、双方を初めて同時に変化させたのがホンダVTECです。

 

VTEC誕生の経緯は、意外なところにあった

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VTECの元になったのは、意外と言うべきか今となってみれば当たり前というべきか、高性能エンジン開発ではなく燃費向上研究チームの考案した「エンジンの高効率技術」でした。

低速時と高速時でバルブ開閉タイミングを変えれば効率の良い、つまり低燃費エンジンが作れますが、それはもちろん高回転高出力エンジンにも応用可能です。

可変バルブ思想を取り込んだNCE(New Concept Engine)計画は、次期インテグラに搭載することを目指し、1986年11月に商品化に向けた開発のGOサインが出されます。

さらにインパクトを求め「最高出力はリッター当たり100馬力」も決まりました。

開発は当然難航しましたが、有名な「焼き鳥屋で店主の回すねぎまの串からヒントを得て、低速時と高速時で分離結合して使い分ける3分割ロッカーアームを考案」など、地道な技術革新を経た夢の新エンジンは、ついに完成したのです。

ホンダB16A型 DOHC VTEC 1.6リッターエンジン。

最高出力160馬力 / 7,600回転・最大トルク15.5kgm / 7,000回転。

世界初の可変バルブタイミング&リフト機構を搭載したB16Aは、予定通り1989年4月19日、2代目DA6 / DA8インテグラに搭載されてデビュー。

現在に至るホンダVTECは、ここから走り始めたのです。

 

進化を続け、現在は総称して「i-VTEC」へ

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最初は高回転高出力と低回転での実用トルク両立を目指したVTECでしたが、本来の目的としていた可変バルブタイミング機構による高効率エンジンとしても発展しました。

5代目EGシビックから採用された、一般車向けの「SOHC VTEC」とリーンバーンエンジン用「VTEC-E」。

6代目EKシビックでは両者を統合した「3ステージVTEC」。

2000年10月デビューのストリームで初搭載されたK20Aエンジンからは、「i-VTEC」へと改称。

これはVTECに何らかの新機構がプラスされたものの総称となり、スポーツエンジン・高効率エンジン双方が作られています。

さらに、長らく登場しなかったターボとの組み合わせもダウンサイジングターボの「VTEC TURBO」として実現し、2015年4月に発表された5代目ステップワゴンから搭載されました。

軽自動車では厳密に言えばVTECではないものの、2011年11月に登場したN-BOX搭載のS07Aエンジンから、吸気側に可変バルブタイミング機構VTCを装着しています。

 

現在はほとんどのメーカーで当たり前のように使われる可変バルブ機構

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2017年現在では他メーカーでも何らかの可変バルブ機構が当たり前になっています。

トヨタでは「VVT」やその発展型、三菱ではさまざまな方式の可変バルブ機構を「MIVEC」で総称するなど呼び方もメカニズムも自動車メーカーによってさまざまですが、基本的な役割は大別すれば2種類です。

スポーツカー向けとしては、高回転高出力と低回転での実用トルクを両立したDOHC VTEC同様のもの。

エコカーやコンパクトカー、軽自動車向けとしては、高効率型のものが広く採用されています。

 

まとめ

可変バルブ機構そのものは特にホンダが初めてでは無いのですが、やはり「リッターあたり出力100馬力」には非常にインパクトがあり、初のDOHC VTECであるB16A以降、各メーカーの自然吸気エンジンの目標になりました。

これによって、リッターあたり125馬力のホンダF20C(2リッター250馬力)や日産SR16VE赤ヘッド(1.6リッター200馬力)を産みましたが、極端な高回転高出力エンジンがあまりにマニアック過ぎたのか、それらを頂点として自然吸気エンジンのパワー競争は収束。

その後もターボとの組み合わせでパワー志向のエンジンは残りましたが、主に環境に優しい高効率エンジンの技術として発展を続けています。

 

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