日産は、海外で展開する高級ブランド インフィニティから新型QX50を発売しました。新型QX50には日産が独自で開発したVCターボエンジンを搭載、発表以降多くのメディアから注目を集めています。そんなVCターボとはどのような技術なのでしょうか。その紹介も含め、インフィニティ新型QX50の魅力に迫ってみました。
掲載日:2019/01/18
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世界初!VCターボエンジンを搭載したインフィニティ新型QX50を発売
2017年末、日産はインフィニティQX50のフルモデルチェンジを発表し、2018年春に発売が開始されました。
そんな新型の注目ポイントは、日産が長年にわたって開発してきたVC-TURBOエンジンが搭載されたこと。
昨今、国産新型モデルの多くにハイブリッドやプラグインハイブリッドが採用されており、J.D.パワージャパンが実施した今年の日本新車購入意向者調査では、次期マイカーにハイブリッド車を検討する割合が昨年の48%から53%に上昇しています。
しかし新型QX50は日産が新たな世界戦略車として販売するモデルであるにも関わらず、ハイブリッドや日産が得意とするe-POWERがラインナップされていません。
エコが叫ばれる時代にガソリンエンジンのみと言う選択肢に、消費者は少し戸惑うかもしれませんが、VCターボエンジンは日産の主力エンジンである3.5リッターV6エンジン『VQ35DE』とほぼ同等のパワーを発揮し、同時に2リッターターボエンジン搭載SUVのセグメントでトップクラスの低燃費を達成しています。
また、新型QX50は横置きエンジンで駆動方式がFFですが、VCターボエンジンは縦置きのFRにも対応可能で、今後多くの日産またはインフィニティのモデルに採用されることが見込まれる大注目のエンジンなのです。
インフィニティQX50とは
インフィニティQX50は日産自動車が生産・販売しているSUVです。
初代モデルは、日産スカイラインクロスオーバーを海外で展開するインフィニティ(Infiniti)ブランドから発売されたもので、当初は『EX35』というモデル名で発売。
日産自動車栃木工場で生産され、北米、欧州、韓国、中国に展開されました。
そんな初代モデルの原動機型式は、3.5リッターV6のVQ35HR型、3.7リッターV6のVQ37VHR型が採用され、他にも中国仕様の2.5リッターV6のVQ25HR型を搭載した『インフィニティEX25』、2010年には3.0リッターV6ディーゼルのV9X型を搭載した『インフィニティEX30d』も登場。
プラットフォームはV36型スカイラインと同じFR-Lプラットフォームが採用され、FRと4WDの駆動方式にしたラグジュアリー志向の強いSUVです。
その後、2013年7月には『QX50』に改名され、中国モデルは2015年から『QX50L』として登場。
中国湖北省の襄陽(シャンヤン)工場で生産されています。
2代目モデルが発売される以前、2016年開催の北京モーターショーで『QXスポーツ インスピレーション コンセプト』が初公開され、2017年北米国際オートショーでQX50コンセプトを世界初披露。
そして2017年ロサンゼルスオートショーで2代目モデルとなる新型QX50が公開されて、2019年モデルとして発売することを発表します。
その後メキシコ アグアスカリエンテス州にある日産とダイムラーの合弁工場で2017年11月から生産開始され、販売は北米、欧州、中国市場で行われますが、日本導入の予定はありません。
新プラットフォームを採用しFFベースに変更
初代モデルはFR/4WDに対応したプラットフォームに、縦置きにV6エンジンを搭載していました。
これを2代目モデルでは新開発プラットフォームを採用し、エンジンが横置きとなったためFFベースになっています。
また、FFベースになったことで車内を従来より広くすることができ、ラゲッジスペースはリアシートを倒せば1,048リットルまで広がり、リアシートを使用した状態でも895リットルと大容量を確保、ゴルフバック3個が入る収納性を実現しています。
とはいえ室内を広くすればフレーム剛性が弱くなる恐れがありますが、新開発プラットフォームには高成形性超ハイテン材をフレームのいたるところに使用し、従来のフレームより軽量で、ねじれ剛性を23%向上。
これにより走行時の安定性が増し、室内のノイズレベルを低減させてさらに快適な乗り心地を実現しています。
VCターボエンジンとはどんな構造か?
VCターボエンジンは『可変圧縮比エンジン』とも呼ばれ、”VC”は”Variable compression”の略記で、エンジンの圧縮比を8.1:1から14.1の範囲で可変できる世界初の技術です。
圧縮比を変えるためにピストンのストローク量を変更し、ピストンが上死点に達した時に12mmの上下差が燃焼室容量の調整を可能にしています。
また、燃焼室容量が代わるため新型QX50の排気量は1,970~1,997ccで変動しますが、日本で新車登録される際は1997ccで登録される見込みとなっており、日本の車検制度でも問題はありません。
そしてエンジンシリンダー内の圧縮比を上げることで、エンジンのパワーアップを実現。
これは、単純に圧縮比を上げれば高性能になっていくと考えてしまいがちですが、実際はそんな簡単な話ではなく、圧縮比を引き上げれば燃焼室内のノッキングを誘発する原因になります。
なぜなら燃焼室内に送り込まれた空気と燃料の混合気は点火プラグによって燃焼しますが、ノッキングはガソリンは圧縮比を高くすればするほど自己着火する特性を持っているので、プラグが点火する前に勝手に燃焼してしまう状態。
そのためノッキングを起こせば、燃焼室内が通常より高温になってしまいピストンやシリンダー内壁が損傷する恐れがあるので、最悪の場合、エンジンのオーバーヒートや焼付きを起こすこともあるのです。
また、圧縮比を上げれば熱効率は向上しますが、ターボを搭載すると過給圧を上げにくくなり最高出力は低下。
一方、圧縮比を下げれば熱効率が低下し、燃費が悪くなってしまいます。
そこで日産は圧縮比を変えることに着目。
可変圧縮比を実現することで、高負荷時に低圧縮にしてターボによる大きなトルクをキープ。
高圧縮時は低負荷にして熱効率を向上させました。
そして実用化されたVCターボエンジンはディーゼルターボのような力強いトルクと高い効率性を備え持ち、ハイパワーかつ低燃費を実現。
従来型に搭載されたVQ35DEエンジンは最高出力201kW/最大トルク341N・mだったことに対し、VCターボを採用した新型エンジンKR20DDETは最高出力200kW/最大トルク390N・mを発揮。
3.5リッターV6エンジンと同等の馬力とトルク約14%アップを成し遂げ、燃費は約30%向上しています。
インフィニティ新型QX50のスペック
2019年モデル・インフィニティQX50 | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 4,693×1,903×1,679 | |
ホイールベース(mm) | 2,800 | |
乾燥重量(kg) | 1,753 | |
乗車定員(人) | 5 | |
エンジン種類 | 直列4気筒ターボ | |
排気量(cc) | 1,970~1,997 | |
内径×行程(mm) | 内径 | 84.0 |
行程 | 88.9~90.1 | |
圧縮比 | 8.0~14.0 | |
最高出力(kW[hp]/rpm) | 200[268]/5,600 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 379[38]/1,600~4,800 | |
トランスミッション | CVT | |
タンク容量(ℓ) | 60 | |
タイヤサイズ | 前 | 255/45R20 |
後 | 255/45R20 | |
燃費 EPA値(mpg) | city | 24【リッター当たり10.2km】 |
highway | 31【リッター当たり13.2km】 |
まとめ
VCターボエンジンの開発は1998年に開始され、約20年の期間を経て誕生した日産渾身の技術です。
日産はテレビCMで『技術の日産』と公言していますが、VCターボの実用化はまさにそのキャッチコピーを証明するもの。
新型QX50は日本導入の予定はありませんが、今後新しいモデルにどんどんVCターボが採用されていくはず!
次はどんなクルマにVCターボが採用されるのか楽しみです。
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