メカニズムや製造元は同じにもかかわらず、別のメーカーの車種として販売されているOEM車。同じクルマなのに、なぜ違うメーカーで販売されているのでしょうか。そもそもOEM車はなぜ存在するのか、クルマがOEM供給される本当の理由に迫ります。
OEMってどういう意味?
まず、OEMの意味を改めて確認しておきましょう。
OEMとは「Original Equipment Manufacturer(オリジナル・エクイプメント・マニュファクチュラー)」の略で、「相手先ブランド製品を製造すること」と訳されるのが一般的。
アメリカのコンピュータメーカーや電子部品業界から始まったとされており、自動車メーカーのみならず、家電や食品業界でもOEMがおこなわれています。
特に、自動車など技術の結晶ともいえる製品では、技術情報の漏洩などが心配です。
しかし各メーカー、メリットの方が多いため、自動車業界ではOEMが一般的となっています。
特に2010年以降の自動車業界では、軽自動車においてのOEMが多く見られるようになりました。
自動車業界でのOEMが存在する理由
技術情報の漏洩リスクがあるのにも関わらず、自動車業界でOEMが存在するのはなぜなのでしょうか。
その答えは、開発や製造にかかるコストを大幅に削減することができるからです。
一般的に車両開発には、おおよそ7年程度の歳月がかかり、数百億単位での開発費用が必要と言われています。
どんなに短い期間で開発したとしても、数年単位での時間と億単位の費用がかかる事は間違いありません。
日本の自動車業界はバブル経済崩壊以降、軽自動車や乗用車事業から多くのメーカーが撤退し、製造・販売する車種を絞った戦略に出るメーカーが相次ぎました。
そこで、製造・販売する車種を絞っても、販売台数の減少や顧客数を減らさないためにとられた方法が、OEMなのです。
OEM供給をする側、つまり、自社製品を他社に売る側としては、業界内での販売ではあるものの利益が発生するメリットがあります。
一方、OEM供給される側、つまり、他社から車両を買う側としては、車両開発の時間や費用をかけるよりも、他社から車両を購入した方が効率よくモデルバリエーションを増やすことができるのです。
それらのメリットにより、OEM車は存在しているのです。
それぞれの得意分野を伸ばし、苦手な分野は車両供給で補填し合う関係がOEMといえるでしょう。
OEM車はユーザーにメリットがあるのか?
お互いにメリットがあるOEMですが、私たちユーザーにメリットはあるのでしょうか。OEMは基本的に同じクルマではあるものの、ブランドが異なるため競合させることができ、値引き交渉をしやすいといったメリットがあります。
そう考えると、なるべく安くて良いものを購入したいユーザーにとって、OEMは大きなメリットになりそうです。
国内だけではない?!クルマのOEM事情
では、実際にOEM車にはどのようなモデルがあるのでしょうか。
OEM車の現在と過去を見てみましょう。
【OEM供給元→OEM供給先】
- ダイハツ ロッキー→トヨタ ライズ
- ダイハツ ブーン→トヨタ パッソ
- ダイハツ ミライース→トヨタ ピクシスエポック/スバル プレオプラス
- ダイハツ キャスト→トヨタ ピクシスジョイ
- ダイハツ トール→トヨタ ルーミー/タンク
- ダイハツ ウェイク→トヨタ ピクシスメガ
- ダイハツ ムーヴ/ムーヴカスタム→スバル ステラ/ステラカスタム
- ダイハツ タント/タントカスタム→スバル シフォン/シフォンカスタム
- トヨタ プリウスα→ダイハツ メビウス
- トヨタ カムリ→ダイハツ アルティス
- 三菱 ekスペース→日産 ルークス
- 三菱 ekワゴン→日産 デイズ
- 日産 セレナ→スズキ ランディ
- スバル BRZ→トヨタ 86
- スズキ ワゴンR→マツダ フレア
- スズキ ハスラー→マツダ フレアクロスオーバー
- スズキ アルト→マツダ キャロル
- スズキ スペーシア→マツダ フレアワゴン
- スズキ エブリイワゴン→マツダ スクラムワゴン/三菱 タウンボックス/日産 NV100クリッパーリオ
- スズキ ソリオ/ソリオバンディット→三菱 デリカD:2/デリカD:2カスタム
- BMW Z4→トヨタ スープラ
- マツダ ロードスター→アバルト 124スパイダー
など
【過去のOEMモデル】
- スズキ ワゴンRプラス→シボレー MW
- スズキ スイフト→シボレー クルーズ
- スズキ SX4→フィアット セディチ
- オペル ザフィーラ→スバル トラヴィック
- シボレー キャバリエ→トヨタ キャバリエ
- トヨタ iQ→アストンマーティン シグネット
など
※2020年4月時点
圧倒的に日本車同士でのOEMが多いものの、日本メーカーと海外メーカーの間でもOEM供給がおこなわれていることが分かります。
まとめ
エンドユーザーへのメリットは少ないかと思いきや、競合させる材料となるOEM車。
絶対的な車種数は、OEMが存在することで減ってしまっているのは事実ですが、OEMをうまく利用して賢い買い物をしてみるのも良いかもしれません。
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