5月15日に行われたF1スペインGPでまさかの同士討ちリタイアとなったメルセデスのニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトン。これまでも衝突が絶えなかった2人がまた接触という事で、今後の関係なども注目されています。今回は2人のこれまでの戦いを振り返ってみようと思います。
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F1でのチームメイトバトルと同士討ち
F1において「チームメイトは最大のライバルだ」という言葉があります。
同じ性能のマシンでレースをするドライバーが自分以外にも必ず1人はいます。その相手に負けるということは、純粋に相手が優れているとみられることも少なくありません。
時に“F1は戦いの場”だとは言え、2人のドライバーが協力して互いに切磋琢磨するケースや、セカンドドライバーが徹底的にエースのサポートに回るという明確な役割分担が出来ている場合もあります。
しかし、優れたマシンに2人が対等の条件で乗った場合は、互いの確執が表面化しドライバー同士コース内外で争いを繰り広げるという事がよくあります。
マクラーレンで圧倒的な強さで今でも語り継がれるアイルトン・セナとアラン・プロストのタイトル争い。両者の同士討ちがチャンピオンシップを左右する衝撃の結末を迎え、チームが別々になった後もお互い深い遺恨を残しましたという歴史も残っています。
現在のメルセデスの二人もそれに近い関係になりつつあり、幼少期のカート時代から「一緒にF1に乗ってチームメイトになろう」と誓ったロズベルグとハミルトンの夢は達成されました。
しかし昔に思い描いた二人の夢はF1チャンピオンという最大の栄華を前にした時に、その形を留められるほどの余裕は偉大なF1ドライバーとはいえ、持ち合わせていなかったようです。
昨日の敵は今日の友という言葉があるように、レースの世界でその反対は珍しいことではありません。
今年で4年目、激しいチームメイトバトルを繰り広げるロズベルグとハミルトンの戦いを少し振り返ってみようと思います。
ハミルトンの電撃移籍により始まった二人の戦い
2007年マクラーレンで鮮烈なデビューを飾ったハミルトンは、その翌年には当時のF1史上最年少王者となり一気にスタードライバーに。その後も長年マクラーレンのエースドライバーを務めました。
一方のロズベルグは、1年早い2006年にデビューを果たし、当初は高い評価を受けていました。
しかし戦闘力の低いウィリアムズで善戦するも勝利に届かない日が続き、メルセデスへ移籍し手3年目となる2012年にデビュー7年目でようやく初優勝を迎えたシーズンを終えたばかりでした。
そして2013年、ハミルトンがメルセデスへ移籍します。大物ドライバーのニュースは衝撃的なものとして扱われたのと同時に、若い頃からライバルだったロズベルグと“チームメイト”としての関係が始まります。
最初の関係悪化は3年前から
メルセデスが現在のドライバーラインナアップとなって2戦目となる、2013年第2戦マレーシアGP。ここで早くも2人の関係が悪化する出来事が起こりました。
マレーシアでのレース終盤、表彰台を争うメルセデス勢はハミルトン3番手、ロズベルグ4番手という展開でした。
ハミルトンはマシンに少々トラブルを抱え、そこへロズベルグが追い抜きを仕掛けますが、チームからの指示は「ポジションキープ(そのままの順位を維持しなさい)」でバトルをやめさせるものでした。
幾度にわたりロズベルグは3位の座を奪いにかかりますが、最終的にはチームの指示を守り4位に甘んじる結果に終わりました。
長年メルセデスに在籍してきたロズベルグからすると、新しく加入してきたハミルトンに順位を譲ることはとても屈辱だったようで、レース後マシンから降りる際チームに対し、「Remenber this one(この事は覚えておいてくれ。)」と一言残し、マシンを降りました。
1度目のタイトル争いと同士討ちは2014年
2014年の第12戦ベルギーGP。ついに2人が同士討ちをする事になります。
このシーズンはメルセデスが19戦16勝と大活躍しドライバーズ・コンストラクターズの二冠を達成。同時に2人のチャンピオン争いも熾烈を極めました。
ポールポジションのロズベルグを2番手ハミルトンがスタート直後に抜きトップへ。しかし反撃に出たロズベルグが2周目にケメルストレート終わりでアウトから追い抜きを仕掛かります。これにハミルトンも応戦した結果、2人は接触。
ハミルトンはタイヤがパンクし最終的にリタイア。ロズベルグもフロントウィングを破損し、結果的に2位フィニッシュ。しかし表彰台でファンからブーイングを浴びせられるなど、大きなニュースとしてこの出来事は報道されました。
鈴鹿でも見られた1コーナーでも“2度目の衝突”
2015年も2人の衝突は続きます。
チャンピオン争いも佳境に差し掛かった第14戦日本GP。
9戦ぶりにポールを獲得したロズベルグですが、スタートではハミルトンも好ダッシュを決め、両者並んで1コーナーへ。
ギリギリまで粘ったロズベルグは2コーナーのアウト側で押し出される形でコースオフ。これで失速してしまい4番手へ後退。苦しいレースを強いられます。結果的に2位までポジションを取り戻しますが、レース後も怒りは収まっていない様子でした。
そして同じような出来事は鈴鹿のわずか一か月後、第16戦アメリカGPでも繰り返されます。
ここでもポールポジションはロズベルグ。2番グリッドのハミルトンは自身3度目のチャンピオンに王手をかけている状態です。
2人はサイドバイサイドで1コーナーに進入。またしてもロズベルグが押し出される形となり、トップを奪ったハミルトンが優勝。2015年の王座を確定させました。
しかし表彰式の直前は一触即発のムードが漂っており、喪失感を隠さなかったロズベルグは表彰式でも笑顔を見せることはありませんでした。
ついに3度目の衝突が!気になる今後の行方は?
今季は開幕前の予想でも、過去2年連続王者のハミルトンがやはり優位に立つだろうという意見が多かったですが、蓋を開けてみればロズベルグの開幕4連勝で幕を開けました。
それに対しやや焦りを見せるハミルトンは、トラブルも重なり表彰台すらままならないレース運びに。4戦を終えて早くも43ポイントもの差がついてしまいました。
迎えた第5戦スペインGP。またしても衝突が起きてしまいます。
悲願の初王座がほしいロズベルグは、チームメイトに対しても今年は譲らない姿勢を固いものとし、厳しいブロックで妨害。
逆に、今季勝利がないハミルトンも3連覇への強い意志で、芝生の上でもアクセルを緩めず、前に出ようと試みたことで、同士討ちという結果に。
接触した両者は言葉も交わさず、目も合わさず、ヘルメットを被ったまま現場を去るシーンは緊迫感に包まれていました。
さすがに今回はチーム内のムードは今までにないほど険悪になっており、ついにはロズベルグのチーム移籍の噂まで聞こえてくるほど。今後の去就にも注目が集まっています。
しかもシーズンはまだまだ前半戦。2人の確執が、チーム全体の士気にも影響しないか、心配ですね…。
まとめ
今年で3年連続3度目となるロズベルグ、ハミルトンの戦いは落ち着きを見せるかと思いきや、さらに激しさを増す一方で、目が離せない展開となっています。
幼馴染の友達と世界チャンピオンを賭けて戦うというのは、普通は経験できないこと。そこに人間ドラマがあり、レースがあり、これがワンメイクにはないF1の魅力なのかもしれませんね!