2018年8月現在ではEV(電気自動車)のミニキャブMiEVを除き、独自生産の軽自動車販売から撤退してしまった三菱自動車ですが、軽自動車黎明期にオート3輪から軽4輪へと進出し、長らく生き残っていた老舗メーカーでした。そしてその販売第1号が商用の三菱360であり、第2号が初代ミニカです。

 

初代三菱 ミニカ(1963年4月最初のマイナーチェンジ後モデル)  / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

三菱軽四輪の胎動・三菱360

 

三菱360(ウィンカー位置から1963年頃のモデルと推定) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1960/60_2.html

 

第2次世界大戦後、旧財閥系の(旧)三菱重工業は今まで培ってきた軍需生産力を活かすべく民需転換を図り、水島工場(現在の三菱自動車水島製作所)では『みずしま』ブランドのオート3輪を開発・販売して戦前からのオート3輪メーカーに劣らぬ人気を得ていました。

その後進駐軍による財閥解体で(旧)三菱重工業自動車部門は中日本重工業へ(1950年)、財閥商標仕様禁止令解除によって新三菱重工業へと改名(1952年)されていき、オート3輪も1955年以降は三菱ブランドへ変わり、軽オート3輪の『レオ』を1959年に発売します。

しかし、軽4輪スバル 360(1958年発売)の成功でオート3輪ブームには先が見えており、軽オート3輪メーカーが相次ぎ軽4輪車に参入。1960年前後にダイハツ・ハイゼット、ヂャイアント・コニー360、マツダ R360クーペ、くろがね・ベビーが相次いで誕生していきました。

そして新三菱重工業でも初の独自開発4輪車、三菱 500(1960年4月発売)に続く4輪車第2弾にして軽4輪第1号を開発し、1961年4月に発売。

それが、三菱 360です。

そんな三菱 360は、当時の軽自動車用としては一般的な空冷2気筒2ストロークエンジンをフロントのボンネット下に収めて後輪を駆動するFRレイアウトで、オート3輪出身のメーカーでは他にダイハツとコニー(※コニー車はアンダーフロアミッドシップ)が採用しています。

これには他のスバル、くろがね、マツダ(以上リアエンジン・後輪駆動のRR)、スズキ(フロントエンジン・前輪駆動のFF)が採用した方式に対し、スペース効率こそ劣るものの、オート3輪で用いていた駆動方式を流用できるメリットがあったのかもしれません。

その中でも三菱 360は良く言えば質実剛健、言い方を変えればもっとも色気や愛想の無いボディに漠然とタイヤが4つついているようなデザインでしたが、今見ると無理に奇をてらわなかったことが、その後長年老舗として続いた理由だったとも考えられます。

また、デザイン、メカニズムともにボンネットタイプの小型商用車を軽自動車化したような三菱 360には、ライトバン / パネルバン、そして1961年10月に追加されたピックアップの3種類が販売されていました。

そして翌年に初代ミニカが発売されると同時期にデザイン変更などマイナーチェンジを受けつつ販売が続けられ、最初からバンが追加された2代目ミニカが発売される頃までは、三菱 360の名で売られていたようです。

 

三菱 360の主なスペックと中古車相場

 

三菱360ライトバン(1967年頃のモデルと推定) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1960/60_2.html

 

三菱 LT23 360 ライトバン 1968年式

全長×全幅×全高(mm):2,955×1,295×1,400

ホイールベース(mm):1,900

車両重量(kg):530

エンジン仕様・型式:ME24 強制空冷直列2気筒2ストローク

総排気量(cc):359

最高出力:13kw(18ps)/4,800rpm(グロス値)

最大トルク:30N・m(3.1kgm)/3,000rpm(同上)

トランスミッション:コラム4MT

駆動方式:FR

中古車相場:58万円(流通はピックアップのみ)

 

三菱 360の乗用版として登場、その後長い歴史を刻んだ初代ミニカ

 

初代三菱 ミニカ(1963年4月最初のマイナーチェンジ後モデル) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1960/60_4.html

 

2007年に乗用モデルが廃止されるまでの45年間、乗用登録される『軽乗用車』の車名としては、もっとも長い歴史を持っていた三菱 ミニカ(次点は現在も販売中のスズキ アルトの38年)。

その初代モデルは三菱 360の乗用登録派生車として、1962年10月に発売されました。

運転席 / 助手席から前のボディ前半部デザインは三菱360とほぼ共通で、違いといえばミニカにはボディ側面の溝にメッキのラインとフロントフェンダーに車名エンブレムがあるくらいで、前開きの左右シザーズドアも共通です。

しかしボディ後半部は全く異なり、いかにも商用車然としたライトバン / ピックアップトラックの三菱 360に対し、後席直後でリアウィンドウが垂直に落ちて後席ヘッドスペースを稼げるクリフカットデザインと、独立トランクを持つれっきとした3BOXセダンでした。

そのため、スペース効率狙いは三菱 360に任せ、『より自動車らしく』見えたのは確かで、後にリアエンジンのエンジンフード開口部面積確保のためにクリフカットを採用した初代マツダ キャロルと同様、初代ミニカでもトランク開口部を広く確保できています。

後に軽自動車は実際には1~2人しか乗らないので、後席を倒して繋げ、広い荷室にできれば便利だと考えられてハッチバック車が主流になりますが、一般家庭で自動車を所有するのがまだ贅沢だった時代、軽自動車に家族4人のファミリカーという夢を重ねられた時代の産物です。

よって、初代ミニカが独創的であったり時代遅れだったというわけでも無く、同時期の初代マツダ キャロルもエンジン搭載位置こそ前後逆なものの、似たようなコンセプトでした。

ちなみに、フロントマスクのフェイスリフトは3度行われており、識別点は以下のようになります。

【三菱360/初代ミニカの時期ごとフロントマスク識別点】

『超初期型』

ウインカーがヘッドライト内側にある。

『1度目のマイナーチェンジ』(初代ミニカでは1963年4月。三菱360も同様と思われる)

フロントグリルが縦スリット入り上下2分割から縦横網上の上中下3分割となり、ウィンカーはヘッドライト下へ移動。

『2度目のマイナーチェンジ』(同1964年11月)

フェンダーやボンネット前端におよぶ全面的デザイン変更が行われ、フロントグリル大型化とともにヘッドライト周りにもメッキパーツ追加。バンパーとの間に4本の横スリットが入り、ウインカーはその左右角へサイドからも見えるよう再配置。

『3度目のマイナーチェンジ』(同1968年9月)

周りのメッキパーツが消えたヘッドライトが、全体的にブラックアウトされ横幅一杯になったフロントグリルへ埋め込まれた形に変更。

 

なお最終的には、1969年7月にミニカが2代目へモデルチェンジして三菱 360の車名が廃止された際、ピックアップだけはそのままのデザインでミニカシリーズに組み込まれ、『ミニカピック』として生産・販売を継続しています。

 

初代ミニカの主なスペックと中古車相場

 

初代三菱 ミニカ(1962年10月~1963年4月の超初期モデル) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1960/60_4.html

 

三菱 LA20 ミニカ 1962年式

全長×全幅×全高(mm):2,955×1,295×1,370

ホイールベース(mm):1,900

車両重量(kg):490

エンジン仕様・型式:ME21 強制空冷直列2気筒2ストローク

総排気量(cc):359

最高出力:13kw(17ps)/4,800rpm(グロス値)

最大トルク:28N・m(2.8kgm)/3,500rpm(同上)

トランスミッション:コラム4MT

駆動方式:FR

中古車相場:35万~250万円(ミニカピック / ミニカバンを含む各型)

 

まとめ

 

三菱360ピックアップ初期型。2代目ミニカ登場後もミニカピックとしてしばらく販売された。/ 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1960/60_2.html

 

三菱 360 / 初代ミニカのうち最後まで残っていたミニカピックは、ミニカやミニキャブがモデルチェンジした後も販売が続いていました。

しかし1972年にミニカ、ミニキャブともに全車水冷エンジンへ変更された際、ME24型空冷エンジンのみ搭載していたミニカピックも生産終了した可能性が高いのですが、旧車イベントで『1973年式』の目撃例もあり、同年まで在庫販売は続いていたのかもしれません。

いずれにせよ、この系譜は最低12年続き、当時の軽自動車としてはスバル360と並ぶロングセラーモデルでした。

このパッケージングでは重量面で不利な上にパワフルだったわけでもなく、デザインも保守的でしたが、それでも三菱自動車としては『市場シェア拡大に貢献して同社の市場基盤を確立した商品』と評価しています。

実際、三菱 360 / 初代ミニカの成功は新三菱重工に水島製作所の軽4輪注力を決断させ、まだ売れていたレオなどオート3輪に、ダイハツやマツダより早く引導を渡したのは間違いありません。

 

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