冬の朝、なかなかエンジンがかからない。しばらく乗っていなかったら、バッテリーが上がっていた。バイクや車に乗る人なら、一度は経験したことがあるはずだ。

そんな「バッテリー上がり」の悩みを根本から変えるかもしれない新しいバッテリーが登場した。今回愛知県のBMW Motorradディーラー「Motorrad Toyokawa(モトラッド豊川)」を訪ね、OUTDO(アウトドゥ)が開発した「ナトリウムイオンバッテリー」の始動テストに立ち会ってきた。

鉛でもリチウムでもない新しい選択肢

バイクや車のバッテリーといえば、これまでは鉛バッテリーか、その後登場したリチウムイオンバッテリーの二択だった。今回のナトリウムイオンバッテリーは、いわばその次にあたる新しいタイプのバッテリーだ。

©︎https://www.outdo.jp/

OUTDOの担当者によると、大きな特徴は3つ。長期間放置していても弱りにくいこと。寒い時期でもしっかりエンジンがかかること。そして発火や熱暴走のリスクを抑える安全設計。担当者によれば、長期保管時の自己放電が少ないほか、0Vまで電圧が低下しても再充電できる高い過放電耐性を備えているという。

持ってみるとわかる、片手で軽々の軽さ

まず驚いたのが重さだ。今回比較した製品では、同じサイズの鉛バッテリーが約5kgあるのに対し、ナトリウムイオンバッテリーは2kgをわずかに切るくらい。片手で持ち上げても「軽い」とはっきりわかるほどの差で、蓄えられる電気の量(容量)はほぼ同じだという。

バイクなら車体からバッテリーを外して充電する機会も多いし、キャンピングカーのようにそもそも車体が重くなりがちな乗り物なら、この軽さは日々の扱いやすさに直結する。

冬の朝でも一発始動。その秘密は「電圧の高さ」

寒い朝にエンジンがかかりにくくなるのは、気温が下がるとバッテリーの力そのものが弱まってしまうからだ。ナトリウムイオンバッテリーは、満タンに充電した状態での電圧が、鉛バッテリーやリチウムイオンバッテリーよりもはっきりと高い。

満充電時の電圧が高く、さらに始動時に必要な大電流を供給できることが、力強いセルの回転につながるという。実際に満充電の状態でセルを回すと、迷いのない力強い音とともに、あっという間にエンジンがかかった。

「もうダメだろう」という状態でも、かかった

ここからが今回の検証の本題だ。バッテリーをわざと弱らせた状態、つまり充電が減った状態を再現し、それでもエンジンがかかるかどうかを試した。

まず、普通のバッテリーなら「そろそろ危ない」というラインまで充電を落とした状態。ここでも、満充電の時とほとんど変わらない感覚であっさりとエンジンがかかった。

さらに、普通のバッテリーなら「まず間違いなく無理」というレベルまで充電を落とした状態でも試してみた。さすがに一瞬の間はあったものの、体感で1〜2秒ほどのうちにエンジンは無事に始動。

念のため、鉛バッテリーでも同程度まで電圧を落として同じテストをしてみたところ、電圧としてはむしろナトリウムイオンバッテリーの時よりやや高い状態だったにもかかわらず、こちらは2回試してもうんともすんとも言わなかった。

一度「バッテリー上がり」を起こしても、買い替えなくていいかもしれない

鉛バッテリーは、深い放電や放電した状態での長期放置によって劣化が進むと、再充電しても元の性能まで回復しない場合があります。バッテリーが上がってしまった経験がある人なら、「これはもう交換ですね」と案内された記憶があるのではないだろうか。

ナトリウムイオンバッテリーは、かなり弱った状態からでも、充電し直せばほぼ元通りの状態まで回復するという。もちろんバッテリー上がり自体は避けたいところだが、「万が一の時も、買い替えずに済むかもしれない」というのは、地味だが大きな安心材料だ。

選ばれているのは「冬でも安心して乗りたい」人たち

実際にこのバッテリーを導入している店舗のスタッフに話を聞くと、一番驚かれるのはセルを回した瞬間の力強さだという。

選ばれる人の傾向としては、一年中バイクに乗っていて、特に冬の始動性に不安を感じている人が多いそうだ。寒くなるとバッテリーの力が落ちやすいという弱点を克服できる点が、選ばれる決め手になっている。

その効果は雪国でも実証済みで、北海道のスノーモービルショップでも、寒さに強いという理由で導入が進んでいるという。

この先の可能性は、バイクだけにとどまらない

現時点で製品化されているのはバイク用のみだが、以前の動画ではキャンピングカー「オステリア」のサブバッテリーとしても試験的に積ませてもらっていた。実際に使ってみた感触は、これまでのリチウムイオンバッテリーと大きな違いを感じないほど自然だったという。

ただし、バイク用として使われている今回のバッテリーと、キャンピングカーのようにじっくり電気を使い続ける蓄電池としての用途とでは、求められる性能の方向性がまったく異なるため、そのまま流用できるわけではないそうだ。今後、乗用車のメインバッテリーやキャンピングカーのサブバッテリーとしての展開も研究が進んでいく可能性があるという。

まとめ

「充電が減っていても、エンジンはかかった」。これが今回の検証で一番印象に残った瞬間だった。

軽くて、寒さに強くて、多少弱っても回復する。バッテリーという地味だけれど欠かせないパーツの世界に、静かに大きな変化が訪れようとしている。冬の始動性に不安がある人や、バッテリー上がりに悩まされてきた人にとっては、一度チェックしてみる価値のある選択肢と言えそうだ。

提供:
OUTDO(ナトリウムイオンバッテリー)
https://www.outdo.jp/