2輪の世界や、日本の古い軽自動車などで採用されている2ストロークエンジン。原付などは大半がこのエンジンでしたが、環境保護などの観点から、近年は減少傾向で、国内のバイクではもう作られていません。しかし、実際どういう構造なのか、何故採用されていたのか、考えてみたことはありますか?今回はそんな2ストロークエンジンの仕組みや、4ストより優れている点などをご紹介します。
掲載日:2018/07/23
実は、2ストのフォーミュラもあったんですよ!
CONTENTS
2ストロークエンジンとは
2サイクルエンジン、または2ストロークエンジン(以下2スト)と呼ばれるエンジンとは、その名のとおり2行程(ピストン1往復)で一連の流れを終えるエンジンです。
4ストロークエンジン(以下4スト)が、吸気・圧縮・爆発・排気の4行程(ピストンは2往復)を行うエンジンなのに対し、2ストは吸気と圧縮、爆発と排気を同時に行います。
同排気量であれば、ピークパワーは4ストロークエンジンよりも高く、エンジン自体も軽くコンパクトに作ることが可能です。
また、4ストとは違い、シリンダー内にバルブを持たず、混合気をクランクケース内に送り込み、それすらも潤滑油としているという特徴があります。
併せて、「パランパラン」というアイドリング音や、チャンバーから出る白煙、甲高いエンジン音なども大きな特徴ですね。
では、どのように動作しているのか、次の項目で動画で見てみましょう。
動画で見る2ストロークエンジン
動画の前半に4ストのエンジンも出てくるので、差がわかりやすいかと思います。
まず、前提としてシリンダーのなかでピストンが一番上になる点を上死点、一番下になる点を下死点と言います。
2ストの2行程は以下に分けられます。
上昇行程:ピストンが上死点に移動することで、クランクケース内やシリンダーに新たな混合気(空気とガソリンが混ざったもの。動画では緑色)を送り込みながら、混合気を圧縮します。
下降行程:圧縮した混合気を爆発させ、ピストンを下に押しさげます。その際に、併せて排気を行います。
ひとつ前の項目でも触れていますが、ガソリンを直接クランクケース(クランクシャフトがあるところ)に送り込んでいます。
これが特徴のひとつで、通常の混合気はガソリンと空気を混ぜたものですが、2ストの場合はその中にオイルも混ぜています。
これによって、混合気自体がクランクケースやシリンダー内の潤滑油としての役割も併せ持っているのです。
何故今は作っていないの?2ストのメリット・デメリット。
ここまで構造を説明してきましたが、2ストは4ストと比べてどのようなメリット・デメリットがあるのか、いくつかご説明します。
メリット
・シリンダー内にバルブなどを持たないので、軽く・小さく作れる。
・部品点数が少ないため、コストダウンでき、整備・修理も簡単。
・同排気量なら4ストと比べて出力が高い。
デメリット
・オイル管理を怠ると、潤滑ができないので焼き付き・抱き着きを起こして壊れる。
・燃費が悪く、オイルも燃やしているので、オイル代もかかる。
・排気音が大きい。
・未燃焼ガスが多く、オイルも燃やしているので排気ガス中の有害物質が多い。
ざっくりと、このような形です。
同排気量での4ストと比べて出力が高いという点から、50cc~250ccのバイクでは多く使用されていましたが、平成18年の自動車排出ガス規制により、新たに2ストの市販車が登場することはなくなりました。
マフラーじゃない、チャンバーって何?
クルマやバイクのカスタムで定番と言えば、マフラー交換。
ですが、2ストの場合、マフラーにあたる部品はチャンバーというパーツになります。
画像を見るとわかると思いますが、中央部分が大きく膨らんでいます。
この部分の名前が「膨張室」。
シリンダーにバルブを持たない2ストは、どうしても未燃焼ガスがそのまま排気されてしまうという弱点があります。
それを極力防いで動力に変えるために、排気のエネルギー「圧力波」をこの膨張室出口を絞ることによって跳ね返し、再度シリンダーの中に押し込んでいるのです。
そのため、2ストにおいてチャンバーはかなり重要なパーツになります。
サウンドの違い
では、2ストと4ストではどれぐらい音が違うのか、確認してみましょう。
エンジン形式は同じV型2気筒で、排気量も250ccです。
2スト・スズキ RGV-γ250SP
4スト・ホンダ VTR250
4ストの方が、野太い音で、2ストは甲高い音ですね。
WGPなどを追いかけていた世代は、やっぱり2ストのサウンドのほうが好きでしょうか?
4ストも力強く、男らしいサウンド!同じ形式で同じ排気量でも、これだけ音が違うんです。
ちなみに、2ストの動画でアクセルを煽りながら回転を落としているのは、エンジンにオイルを送っているためです。
意外な2ストマシン
バイクや芝刈り機などのイメージが強い2ストエンジンですが、実は2スト!な意外なマシンを動画でご紹介します。
クロカンと言えばジムニー!2ストもあります!
2ストの4輪と言えば、セルボ?フロンテ?すぐに想像できて、みんな知ってるのはやっぱりスズキ・ジムニーではないでしょうか?
クロスカントリーでよく使用され、愛好者の多いジムニーも、昔は2ストエンジン搭載でした。
近年は徐々に数が減ってきていますが、たまに街中で見かけるといい音で走っていますよね!
フォーミュラカーだって2ストだった!?
日本のフォーミュラマシンには、なんと360ccや500ccなど、昔の軽自動車用3気筒2ストロークエンジンが搭載されているカテゴリもあったんです!
これはFJ360やFL500、FL550などのカテゴリにあたるもので、1960~70年代に入門フォーミュラとして存在したカテゴリです。
フォーミュラとしては、見た目が非常にコンパクト。ヒストリックカーイベントなどに行くと、たまに見れますね。
https://www.youtube.com/watch?v=LlR25Yl6Eb0
当時の貴重な映像もあわせてどうぞ。
まとめ
いかがだったでしょうか?
街中でもあまり見かけなくなってきた2サイクルエンジン。
シンプルな構造ゆえに、カスタムは奥が深かったり…今後はそういった部分もご紹介していきます。
現在も2ストに乗っているオーナーさんは、今後どんどん貴重になっていくので、大事に乗ってあげてくださいね。
白煙とオイルをまき散らすせいで、汚れるからとツーリングで最後尾を走らされても、悲しまないでください。
4ストロークエンジンについて見たい方はコチラ
Motorzではメールマガジンを始めました!
編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?
気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!