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スカイラインと決別したGT-R。R35GT-Rが最強になり得た理由とは

2007年12月の発売から10年以上を経て、現在でも販売が続けられている日産 R35型GT-R。かつては国内専用、あるいは限定的に輸出されるのみだったスカイラインGT-Rとは異なり、最強最速の国際戦略車として日産のイメージリーダーであり続けていますが、開発が凍結されたという噂もあり、次期型の存在は不透明です。そんな、もしかしたら最後のGT-RになるかもしれないR35型GT-Rとはどんな車なのか、簡単に振り返ってみましょう。

掲載日:2019年7月16日

日産 R35 GT-R NISMO GT3(SUPER GT GT300仕様)  / 出典:http://mos.dunlop.co.jp/gt300_report/gt300-2015-3

 

スカイラインからの訣別を迫られた”日産の象徴”

 

奥から32~34型”スカイラインGT-R”、そしてR35 “GT-R”  / Photo by peterolthof

 

ポルシェ904との激闘で名を上げたスカイラインGTの量販版、S54BスカイラインGT-B(1965年)や、その後継として数々のレースで活躍したPGC10 / KPGC10(1969年)、諸々の事情で少数生産に終わったKPGC110(1973年)と2代続いたスカイラインGT-R。

一旦その役目を終えて眠りについた後、国産マシンが海外勢に対して戦闘力が乏しく、苦戦していたグループAレースで巻き返しを図るべく、3代目BNR32スカイラインGT-R(1989年)が登場し、期待通り圧倒的な速さで無敵を誇りました。

当時日産は、1990年代で技術力世界一を目指す『901運動』で成果を上げつつあり、ベースとなったR32型スカイラインそのものが近代的なルックスと高い質感、良好なハンドリングに支えられた高い走行性能で好評を得ていた時期です。

そのような時代だったので、『スカイライン』と『スカイラインGT-R』は併存しつつ双方とも良好なセールスを記録していたのですが、その後継車の時期になると、様相が一変する事に。

バブル時代に開発された車にありがちだった、開発初期のユーザーの上昇志向や販売サイドからの居住性向上の要求による大型化・大排気量化・高価格化、そして開発後半でバブル崩壊による低コスト要求による、クーペモデルのショートボディ化の断念。

さらにはユーザーの嗜好が変化して、ミニバンやSUVが販売の主力となった事により4ドアセダンも2ドアクーペも需要が停滞。

スカイラインGT-Rの存在そのものが、ベースのスカイラインに格落ちの印象を与えたことも否めません。

やがて、経営不振となり存続の危ぶまれた日産は1999年に事実上フランスのルノー傘下入りしてルノー・日産連合が誕生。

車種整理によって、スカイラインGT-Rも2002年に最後のBNR34が生産終了を迎えました。

しかし同時に、世界戦略車(インフィニティの高級セダン / クーペ)としてのスカイライン継続と、同じく日産のイメージリーダー的世界戦略車としてのGT-Rの復活が発表されます。

そして既に次期型の開発が進み、XVLの名でコンセプトカーも発表されていたスカイラインに対し、GT-Rは紆余屈折を経た末にそれまでとは異なる独立車種としての開発が決定して、2007年に5年ぶりの復活を果たしました。

ちなみに、その開発初期には11代目V35型以降のスカイラインと同じFMプラットフォームで『スカイラインGT-R』的なモデルも構想されましたが、新たな日産の象徴として世界で通用するにはスカイラインからの徹底した訣別が必要だったと言われています。

 

世界トップクラスの戦闘力を持った、ブランニューGT-R

 

最高出力600馬力を誇る最強のGT-R、GT-R NISMO  / 出典:http://www.nissan.co.jp/CROSSING/JP/INFORMATION/20170207.html

 

“インフィニティ”ブランドの高級セダン / クーペ(G35)であり、日本では引き続き日産ブランドでV35と型式を改めつつその名を引き継いだスカイラインに対し、R34型スカイラインから型式を引き継いだR35型GT-Rは、スカイラインを名乗らず、中身も完全な別物です。

プラットフォームもV35のフロントミッドシップ用FMプラットフォームに対し、”プレミアム・ミッドシップ”を意味するPMプラットフォームを、事実上GT-R専用として採用。

2ペダル式のセミAT、6速DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)を主駆動輪であるリアに配したトランスアクスル構造を採用し、BNR32~BNR34で採用した電子制御4WD、アテーサE-TSの発展型を搭載した4WDマシンとしました。

その上で、動的荷重(走行中の実際の前後輪への荷重)を考慮して弾き出した最適な静的前後荷重を53~54:46~47として、それを実現するために、これも事実上GT-R専用となる3.8リッターV6ツインターボエンジン、VR38DETTを選択しています。

それにより重量配分の最適化をエンジン後方にミッションを配置しないことで車体下部の通風を良くしてエンジン熱を排出し、ミッションの冷却などの空気抵抗増加を伴うことなく実現しました。

また、あえて軽量化にこだわらず、重量をむしろトラクションに活かしたのも特徴で、トラクションを空力パーツでのダウンフォースに頼るスーパーカーに比べ、静止状態からの加速性能や低速域でのコーナリング能力は高価でよりハイパワーなスーパーカーをしのぎます。

さらにスタビリティコントロール(横滑り防止装置)は200km/h以上の高速域でも作動する、一般的な市販車とは次元の異なる特殊な装置が採用され、レーシングドライバー並のスキルが無くとも高速走行が可能となりました。

最高速こそ300km/hをわずかに超える程度に留まるとはいえ、最高速度記録でも狙わない限りは世界最速クラスの性能を誇りつつ安定感のある高性能スポーツカーは、こうして誕生したのです。

 

レースや記録走行で活躍したR35 GT-R

 

MOTUL AUTECH GT-R(SUPER GT GT500クラス)  / 出典:http://jaf-sports.jp/topics/detail_000022.htm

 

もちろんレースなどモータースポーツでも活躍したR35 GT-Rですが、『R35のイメージを持ったレーシングカー』と、『レースや記録走行で活躍したR35」は、分けて考えなければなりません。

前者は主にSUPER GTのGT500クラスやFIA GT選手権のGT1クラスで活躍したもので、4WDではなくFR(フロントエンジン・後輪駆動)化、エンジンも3.4~5.6リッターのV8、あるいは2リッター直列4気筒ターボを搭載しています。

ボディもR35のイメージは残しているものの全くの別物と言ってよく、実質的には昔のシルエットフォーミュラのようなものだと考えて良いでしょう。

 

GT-R LM NISMO(2015ル・マン24時間レース)  / Photo by Kevin Decherf

 

これらSUPER GT、FIA-GT用マシンはそれぞれのステージで活躍しましたが、一方でもうひとつ、FF(フロントエンジン・前輪駆動)の特異なGT-R、GT-R LM NISMOも存在しました。

それはヘッドライト周りやフロントグリルに何となく面影を残す程度でR35とは全く無関係な上に、フライホイールを使って運動エネルギーをため込み、後輪を機械的に駆動する回生システムが全く機能せず、2015年のル・マン24時間レース1戦のみで消えています。

また、後者の代表格はFIA GT3レギュレーションに沿ったGT-R LM NISMO GT3で、規則上FR化されているもののエンジンはVR38DETTのままで、『もっともR35 GT-Rらしいレーシングカー』です。

スーパー耐久レースのST-XクラスやSUPER GTのGT300クラスに参戦しており、市販されているR35 GT-Rがサーキットでどれだけのポテンシャルを持つのかという意味では、もっとも感情移入しやすいかもしれません。

 

©️Motorz

同様にD1グランプリなどドリフト競技に使われているR35 GT-Rも中身がノーマルそのままではないとはいえ市販車ベースのマシンで、その活躍は目を見張るものがあります。

 

主要スペックと中古車相場

 

日産 R35 GT-R  / 出典:http://www.nissan.co.jp/OPTIONAL-PARTS/NAVIOM/GT-R_SPECIAL/index.html#!visual

 

日産 R35 GT-R 2018年式

全長×全幅×全高(mm):4,710×1,895×1,370

ホイールベース(mm):2,780

車両重量(kg):1,760

エンジン仕様・型式:VR38DETT 水冷V型6気筒DOHC24バルブ ICツインターボ

総排気量(cc):3,799

最高出力:570ps/6,800rpm

最大トルク:65.0kgm/3,300~5,800rpm

トランスミッション:6速DCT

駆動方式:4WD

中古車相場:369.9万~1,880万円(各型含む)

 

まとめ

 

次期GT-Rをイメージしたと言われるNISSAN CONCEPT 2020 Vision Gran Turismo  / 出典:http://www.nissan.co.jp/MS/TOKYO2015/EN/

 

高性能スポーツカーとしてはかなり高額なGT-Rですが、それでも1,000万円台で購入できることや、実用性にも配慮されていてコンビニへの買い物にも、気軽に行けることなどから「スーパーカーではない。」という声もあります。

しかし、空力効果に頼らない領域での加速性能や運動性能では、高額でスペック上もはるかに上回るだけという下手なスーパーカーでは太刀打ちできないほどの性能を持っていることも事実で、現在の日本で普通に購入できる国産車の中でも最高の性能を持つ事も確かです。

ただ、さすがのR35 GT-Rも登場から10年を経て、いつまでも『最強』というだけが売りにはできなくなってきました。

そのため、次期R36 GT-Rに関する噂は常に絶えない状況ではありますが、ここ1~2年の間に自動車を取り巻く環境は劇的に変化し、今から内燃機関で圧倒的なパフォーマンスを誇る高性能車を、開発費の回収ができるほど長く作り続けられるか、疑問な所も。

既に「次期GT-R開発は中止。」という声すら上がっていますが、これからの世界で高性能マシンに何がどこまで許されるのか、それがわかるまでは、R35 GT-Rは作り続けられるのかもしれません。

あるいは、いよいよもって「電動車技術を使っていない車は販売禁止。」と言われ、後継車が出る前に販売終了するかもしれませんが、その日がいつ来るのかはまだ誰にもわからないのです。

これ以上は劇的な変化を望めないR35を今のうちに買ってしまうか、それとも出るかどうかわからないR36を待つべきか、気が気ではないユーザー予備軍のためにも、日産も何らかのアナウンスをすべき時が近づいているのではないでしょうか?

 

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