最近はなかなか見かけなくなりましたが、1990年代半ばから2010年代前半くらいまでタクシーやパトカー、教習車で一大勢力を誇っていた日産 クルーには何かとお世話になった人も多いと思います。さらにRB系の直6エンジンを搭載可能だった事から、シブいドリフトマシンとしても活躍していました。
掲載日:2018/11/12
トヨタのコンフォートと小型タクシー市場を争った定番車種、日産 クルー
1955年に登場した初代クラウン以来、タクシーは一般向け乗用車をベースとしたタクシー仕様がメインになっていき、1980年代に入ると旧型セダンのタクシー仕様が長く継続生産される形が続きました。
そんな中、単なる転用ではなく旧型ベースでもタクシー向けの改良を施した『タクシー専用車』というべきモデルがマツダ カスタムキャブ(1989年登場)あたりから登場するようになり、第2弾として1993年に日産からデビューしたのがクルーです。
小型タクシーとしての使い勝手を追求した機能性の高いパッケージをセールスポイントとし、タクシーやハイヤーでの採用が相次いだため、トヨタのコンフォート(1995年登場)と市場を二分するかのように、街中を走り回っていました。
販売されていたのは2009年までだったので、さすがに2018年現在ともなると大半がコンフォートやその他小型セダンのタクシー仕様車に置き換わり、あまり見なくはなりましたが、タクシーやハイヤー、パトカーなどで今でも時々現役車を見かけます。
使い勝手を追求した左右非対称ボディ
クルー最大の特徴が左右で前後ドアの長さが異なる非対称ボディで、左側後席ドアが右側より50mm大きく作ってあり、タクシーで頻繁に乗降するドアを最重視して小型タクシーながら良好な乗降性を確保していました。
そのためタクシー専用車の印象が濃いクルーですが、廉価でMTも設定された5ナンバーサイズセダンとして旧型のローレルやセドリックを代替えしていき、パトカーや教習車として使われる姿もよく見られたものです。
そして、タクシー以外の仕様は随時追加されていきましたが、1994年から2002年までは一般向けクルー・サルーンも販売。
最新のローレルやスカイラインの豪華装備や動力性能は不要で、昔ながらのトランクつき5ナンバーFRセダンを安く求めるユーザーには貴重な選択肢でした。
エンジン換装でドリフトマシンにも
個人向けクルー・サルーンは『直6エンジン搭載、5速MTも選べる5ナンバーFRセダン』という、ある種の人間にとっては非常に魅力的な車でした。
また、ガソリンエンジン車に搭載されていたのはSOHC12バルブのベーシックなRB20Eでしたが、もちろんRB系ならある程度他のエンジンに載せ替えるスワップチューンが可能だったのです。
そこでDOHCターボ版RB20DETや、果てはスカイラインGT-R用RB26DETTまで搭載されたクルーが存在し、LSDを装着してサスペンションやボディにも手が加えられ、ドリフト競技でも使われたクルーがありました。
とはいえ、クルー自体がタクシー仕様も含め一般の中古車市場にあまり出回らなかった事や、カッコ良さというよりは『ハズシ技のウケ狙い』で目立つ要素の方が大きく、FRという以外で必ずしもドリフト向きとは言えなかったため、あくまで少数派ではあります。
そんなタクシー仕様の全盛期にクルーのドリフト車が派手なエキゾーストノートとスキール音とともにコーナーを横向きにすっ飛んでくる姿は迫力ともまた異なる、何とも不思議な光景でした。
主なスペックと中古車相場
日産 HK30 クルー LXサルーン 1999年式
全長×全幅×全高(mm):4,595×1,695×1,460
ホイールベース(mm):2,665
車両重量(kg):1,300
エンジン仕様・型式:RB20E 水冷直列6気筒SOHC12バルブ
総排気量(cc):1,998
最高出力:96kw(130ps)/5,600rpm
最大トルク:172N・m(17.5kgm)/4,400rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FR
中古車相場:26万~98万円
まとめ
クルーが2009年で販売終了したのを最後に、日産の小型タクシー専用車は消滅。
2014年にはY31型セドリックのタクシー仕様も消滅したため、日産車のタクシーは今やかなりの少数派となりました。
また、タクシーやハイヤー以外に教習車やパトカー用途もほとんど無くなってしまった今、ミニバンやSUV、軽自動車以外で日産車を見かけたり触れる機会もだいぶ減ってしまったのは、少々寂しい気がします。
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