日本に存在する高速道路の中で、全国で唯一バイクの2人乗り禁止の区間が設けられているのが首都高です。禁止区間は中央環状線の内側で、このエリアは平成17年に高速の2人乗りが解禁された以降も、禁止されたまま。では、どうして首都高では、タンデム走行ができない区間があるのでしょうか。それには首都高の「道路構造」が深く関係していたのです。

昼の首都高/photo by Toshihiro Gamo

首都高ではタンデム走行ができない

東京 首都高/photo by kambayashi

現在、全国の高速道路では、ほぼ全域でバイクの2人乗りが可能となっていて、車で走っていてもタンデム走行をしているライダーを見かけることは少なくありません。

しかし国内で唯一、首都高速道路にだけタンデム走行が禁止されている区間があることをご存知でしたか?

2人乗り禁止区間は以下の通りで、規制区間には乗り入れ禁止の標識が立っています。

  • 都心環状線 都心環状線 全線
  • 高速1号羽田線 高速1号羽田線 上り線:芝浦出口から都心環状線接続まで
  • 下り線:都心環状線接続から芝浦入口まで
  • 高速1号上野線 高速1号上野線 全線
  • 高速2号目黒線 高速2号目黒線 全線
  • 高速3号渋谷線 高速3号渋谷線 上り線:渋谷出口から都心環状線接続まで
  • 下り線:都心環状線接続から中央環状線接続まで
  • 高速4号新宿線 高速4号新宿線 上り線:新宿出口から都心環状線接続まで
  • 下り線:都心環状線接続から中央環状線接続まで
  • 高速5号池袋線 高速5号池袋線 上り線:東池袋出口から都心環状線接続まで
  • 下り線:都心環状線接続から東池袋入口まで
  • 高速6号向島線 高速6号向島線 上り線:向島出口から都心環状線接続まで
  • 下り線:都心環状線接続から向島入口まで
  • 高速7号小松川線 高速7号小松川線 上り線:錦糸町出口から6号向島線接続まで
  • 下り線:6号向島線接続から錦糸町入口まで
  • 高速9号深川線 高速9号深川線 全線
  • 高速11号台場線 高速11号台場線 全線
  • 高速八重洲線 高速八重洲線 全線
  • 東京高速道路株式会社線 全線

出典:https://www.shutoko.jp/use/restriction/bike/

では、何故これら区間でのタンデム走行は禁止されているのでしょうか。

首都高の道路構造はタンデム走行に向いていない

出典:写真AC

首都高はカーブが非常に多い高速道路なのですが、なかでも特に環状線は過去に事故が多発した地点及び、事故が予想される箇所が多く存在します。

なぜなら首都高は既存の市街地の河川、地下、一般道路上空などの限られたスペースを最大限活用してつくられた道路なので、路肩幅員が狭い箇所、アップダウン、カーブが連続する区間などが多数あるのです。

そしてタンデム走行は、ただでさえ車体の安定性を損ないやすい走り方。

そのため急カーブや左右入り混じった合流の多い首都高での2人乗りは、あまりにも危険だと判断され、現在のタンデム走行禁止区間が設定されました。

なぜ車と同じ料金を取るのか

出典:写真AC

つまり首都高でタンデム走行ができない理由は、「急カーブが連続する道路の構造自体が不安定なタンデム走行に向いていないから」ということになります。

しかしここで気になるのは、定員乗車で何も制限を受けない車と規制を受けるバイクが同じ料金を取られるということ。

実際に、東京オートバイ協同組合には、以下のような意見が届いているそうです。

「高速道路会社は四輪車と変わらないサービスを提供しているので、二輪車の料金区分はできないと説明する。しかし、オートバイの定員乗車が危険というほどの道路構造であれば、そもそも同一サービスを提供しているとはいえない。走った分だけ料金を支払う対距離料金制に倣うなら、定員の半分のサービスしか提供できない二輪車は、料金も四輪車の2分の1が妥当だ」

環状線の内側のほとんどが走れないとなると、タンデム走行で移動できる範囲も自動車と比べて制限がり、目的地へ行くのに遠回りせざるを得ない場合だってあります。

そう考えると、上記の要望はもっともだと言えるのではないでしょうか。

他の高速道路の場合

大阪・法円坂/photo by m-louis .®

首都高以外の高速道路では、平成17年以前までタンデム走行が禁止されていました。

しかし平成17年4月1日以降は、大型二輪免許または普通二輪免許を受けた期間が通算3年以上ある年齢20歳以上の人であれば、走れるようになりました。

そうなると、首都高でも他の高速道路と同じくタンデム走行がしたいと思っているライダーは、数多く居るでしょう。

しかし道路構造上の問題である以上、首都高の構造自体をどうにかしない限り、タンデム走行は難しいというのが現状です。

まとめ

首都高 横浜駅東口/photo by being0828

首都高でも他の高速道路と同じく、カーブに差し掛かる前に大型の標識が掲げられ、画面上への「カーブ注意」、「減速」などの文字や道路形状表示、車体安定性向上のための排水性舗装の敷設が実施されています。

これらは全てドライバーやライダーの安全を図るための対策ですが、一方でタンデム走行禁止区間があるのに、自動車とオートバイの料金が同じという首都高特有の問題も抱えており、ユーザーからも指摘されているのが現状です。

果たして今後、首都高の運営会社は上記の指摘にどう答えていくのでしょうか。

高度経済成長期、1964年東京オリンピックに合わせて急ピッチで整備したツケが、今になって回ってきているのかも知れません。

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