日産ブルーバードは、日本におけるモータリゼーションの発展と共に歩んできた小型乗用車です。そして昭和34年の誕生以来、トヨタ コロナと小型車の人気を二分して販売台数を争った『BC戦争』や、オイルショック、排ガス規制など様々の苦難を乗り越えて開発され、1979年に誕生した最後のFRモデルが”ブルーバード910系”でした。
掲載日:2018/10/30
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幸せの象徴・初代ダットサン・ブルーバード310(1959年-1963年)
1959年、戦後の混乱は収束に向かい、人々は平和な日常を取り戻しつつありました。
そんな自動車を保有することが夢として具体的に語られる様になった時代に、初代ブルーバードは誕生したのです。
人々の夢が叶うようにとの意味も込められていたのか、メーテルリンクの小説の中で幸せの象徴とされた”青い鳥”から命名された初代ブルーバードは、スタンダードなヨーロッパ調デザインの車体に998cc 34psのエンジンを搭載。
前輪にはコイルばねを利用したダブルウィッシュボーンの独立懸架が採用され、P310と呼ばれた1189ccエンジンを搭載したモデルには、先進的な”ユニサーボ方式”のブレーキを装着。
流行のツートンカラーやホワイトリボンタイヤが標準装備されました。
また、1960年のマイナーチェンジ後には、国産車としては初めてローギアにも”フルシンクロメッシュ機構”が採り入れられ、ブルーバードの先進的なメカニズムを誇示するかのようにフロントグリルには”FULL”というゴールドエンブレムを装着。
1961年には”ファンシーDX”というネーミングで特別なカラーリングやバニティミラーを装着した画期的な女性仕様車を発売し、女性ドライバーの増加を見据えた販売戦略がとられました
初代ブルーバード310型は、メーカーの様々な先進技術と革新的なカープロデュースにより大成功をおさめ、販売年数4年で、当時としては驚異的な合計21万台が世に送り出されたのです。
一方、ライバルであるトヨタ自動車の小型乗用車”コロナ”は、モノコック構造ボディや1500ccのエンジンを搭載したモデルをいち早く登場させていて性能面ではブルーバードを凌いでいましたが、デザインやイメージ戦略に欠けており、初代ブルーバードの人気には勝てませんでした。
アバンギャルドデザイン2代目ダットサン・ブルーバード410(1963年-1967年)
モノコックボディを採用し、イタリア人デザイナー、ピニンファリーナ氏に委嘱したデザインで1963年に登場した2代目ブルーバード410は、リアフォルムが下がり気味の斬新すぎるデザインとエンジン排気量を据え置きにした事などが災いし、大人気となった310系と比べて発売当初からライバルのトヨタ・コロナに対し、やや劣勢な展開となっていました。
翌1964年にSUキャブレターを装着して4速フロアシフトミッションを備えたSS(スポーツセダン)をバリエーションに加えるも、ライバルのコロナが大ヒットとなる3代目のアローライン(RT40系)を発表したため、小型車販売台数で首位の座を明け渡すことに。
しかし、1965年にブルーバードにとって歴史的なサブネームであり、後に代表的なシリーズとなるブルーバード”SSS”が登場します。
”SSS”は排気量1595cc、SUキャブレターを連装して出力90ps/6000rpmをひきだし、最高速度は160km/hをマークするスペシャリティーカーで、マニアのコクピット願望を満たすタコメーターも装着されていました。
残念ながら販売面では、トヨタ・コロナと比べて劣勢となってしまった410系ブルーバードでしたが、1966年、当時世界でもっとも過酷なラリーとされていた東アフリカ サファリラリーの排気量1300cc以下クラスで”クラス優勝”を果たし、耐久性の高さを証明したのです。
永遠の名車3代目ダットサン・ブルーバード510(1967年-1972年)
小型車販売戦線でのコロナの独走を止めるために、1967年に発売されたのがブルーバード510系です。
既に登場していた大衆車、ダットサン・サニーとの区別化をはかるために、一回り大きくなったボディに新開発のL型エンジン(L14およびL16エンジン)を搭載。
後輪にも、セミトレーリング アーム式の独立懸架を採用して4輪独立懸架を達成し、スーパーソニックラインと呼ばれる角張ったボディデザインが人気を博します。
そしてRT40系コロナに数年間奪われていた、小型車販売台数トップの座を奪い返す大ヒットをおさめたのです。
また、リア・フィニッシャーにブラックラインを施して登場した1600SSSには、SUツインキャブレターを装着して92馬力を発生するオーバーヘッドカムシャフト エンジンを搭載していました。
1969年、第17回サファリラリーでクラス優勝、翌年の第18回サファリラリーでは見事総合優勝を果たす事に成功しています。
ブルUシリーズ・4代目ブルーバード610(1971年-1976年)
自動車が、既に庶民の所有出来る身近な存在となった昭和40年代中期。
高度成長期を過ぎ、ブルーバードにも上級グレードの存在が必要と考えられ、1971年に発売されたのがブルーバードUシリーズ(610系)です。
デラックスで重厚なデザインは、当初併売されていたファミリーカー的存在の510系ブルーバードとの”区別化”をはかる事を意識して開発されましたが、残念ながら好評は得られず。
時代に先駆けて、L型エンジンに電子制御燃料噴射装置を採用した1800SSS-Eモデルや、2リッター6気筒エンジンの2000GTなどもラインアップされましたが、自社モデルで人気の高かった”スカイライン2000GT”との競合となってしまい販売台数は伸び悩無結果に。
この時期のBC戦争では、トヨタ・コロナ(含むコロナ・マークⅡ)に敗退する事となってしまいました。
豊かさよりも環境問題や燃費重視の省エネルギー思考に転換していった時代背景と、1973年に発生した第一次オイルショックの影響を受け、4代目Uシリーズ(610系)は急変する社会情勢の対応を誤って登場した、”悲劇”のブルーバードとなったのです。
排ガス規制との闘い・5代目ブルーバード810(1976年-1979年)
自動車メーカーにとって、暗黒時代となった昭和50年代前半……
デザインや性能アップよりも、排ガス規制をクリアするためのエンジン開発をせざるを得なかったこの時代に産まれたのが、5代目ブルーバード810モデルでした。
2プラグの急速燃焼方式を採用したZ型エンジンを搭載し、昭和51年の排ガス規制をクリアして、1976年に誕生したブルーバード810系は、2000ccクラスとSSSグレード以外は4輪独立懸架サスペンションではなく、リアにリジットアクスルを復活させます。
もはや衰退とも言える徹底したコスト削減策は世間を驚かせてしまいます。
その後、日産自動車の技術開発陣が苦労の末に開発した1800ccエンジン搭載車を、1978年1月に”昭和53年排出ガス規制”に適合させ発売。
同年8月にヘッドライトを丸型4灯式から角形4灯式へマイナーチェンジさせるとともに、1600ccと2000ccエンジン搭載車を昭和53年の排出ガス規制に適合したZ型エンジンでなんとか登場させます。
そんな5代目ブルーバードはライバルのコロナに向けた販売戦略というよりは、排ガス規制対策のエンジン開発に翻弄された時代を乗り越えて、僅か3年あまりという短い生涯で次の世代にバトンを渡す事になりました。
ターボモデルの誕生・6代目ブルーバード910(1979年-1983年)
1979年に発売され、CMのイメージキャラクターに沢田研二氏を起用するという新鮮な宣伝戦略を行って、デビュー後すぐに爆発的ヒットとなった910系ブルーバードは、直線基調のクールな箱型スタイルに、窓面積を大きく取った飽きの来ないデザインを採用。
先代までの6気筒エンジンは搭載されず、パワーユニットを4気筒エンジン一本に絞り込んで開発され、1979年11月から1982年2月までの27ヶ月連続で小型車販売台数1位に君臨します。
そしてライバルのコロナに、圧勝という結果を残しました。
ブルーバード2000SSS-ESスペック
エンジン形式 | Z20E |
種類・シリンダー数 | 水冷直列4気筒OHC |
ボア×ストロークmm | 85×86 |
総排気量 | 1952cc |
最高出力ps/rpm | 120/5600 |
最大トルクkgm/rpm | 17.0/3600 |
燃料供給装置 | ニッサンE.G.I |
サスペンション | F ストラット / R セミトレーリング |
ブレーキ | F ベンチレーテッドディスク / R ディスク |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン式 |
モータースポーツの分野では、グループ5規定で行われていたスーパーシルエットレースに、1982年から参戦していました。
デビュー戦となる、富士グランチャンピオンレース併催のスーパーシルエットレース第2戦でブルーバード スーパーシルエットは、見事3位入賞。
3位入賞マシンは、ルーフとボンネット部分はブルーバード910のものを使用。
パイプフレームにアルミパネルを組み合わせて制作されたセミモノコックボディに、L型系直4をベースにツインカムヘッドを組み込んだLZ20Bエンジンを搭載し、トリプルプレートクラッチにクロスレシオ5速ミッションを装備していました。
また、ギャレット製のターボでチューニングされた心臓は、570馬力を発生しパワーウエイトレシオは1.75というモンスターマシン。
83年シーズンには、セントラル20の柳田春人氏がシリーズ10戦中4勝を獲得し、見事シリーズチャンピオンに輝いています。
まとめ
四半世紀にも及ぶ”ブルーバード”の歴史をカーデザインにおいて振り返ってみると、510系、910系など3ボックススタイルの4ドアセダンとして、オードソックスなエクステリアデザインを採用した系統が爆発的なヒットとなったことがうかがえます。
逆に、少し個性的なデザインとなった410系や思い切って大型高級志向に走ったブルU610系などは販売戦線で苦戦する結果に。
オードソックスなデザインは、あまり目立たない存在かもしれませんが、人々がデザインを多く受け入れるという傾向を考えると、小型乗用車には”飽きの来ないスタイリング”が望まれていた時代だったと考えられます。
メーテルリンクの小説で、青い鳥(しあわせ)が自分の部屋の鳥かごで見つかった様に、ブルーバードという小型乗用車には身近な存在である普遍的なデザインを、人々は期待していたのかもしれません。
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