輸入車と日本車では、一般的にホイールの取り付け方法が異なることはご存知でしょうか。輸入車はボルトでホイールを装着し、日本車はナットを使用します。どうしてこのような違いが生まれたのでしょうか?
掲載日:2020/03/02
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日米と欧州で異なるホイールハブの形状
ホイールハブとは、ホイールに組込済みのタイヤセットをサスペンションに取り付ける部分のパーツで、ディスクブレーキの外側に設置されます。
日米車の場合、ホイールハブから突出しているハブボルト(またはスタッドボルトとも呼びます)をホイールの取付けボルト孔に通し、ナットで固定するのですが、欧州車の場合はホイールハブにハブボルトは存在せず、代わりにボルト穴が空いているだけです。
この違いには、どのような意味があるのでしょうか?
ナット式とボルト式ホイールハブの違いは道路環境の違い
ホイールハブからハブボルトが突出していると、タイヤセットとの接地面がハブボルトとナットの2箇所となり、剛性が落ちてしまいます。
実は、ホイールハブとボルトやナットの接地面は、数が少ないほど剛性が増すのです。
ボルト式ホイールハブが、ハブボルトの代わりにボルト穴になっているのは、ホイールハブとボルトの接地面をホイールハブのボルト穴内側の1箇所にするため。
これにより、タイヤ取付部の剛性が高められるのです。
タイヤ取付部の剛性が高ければ、運転速度域が高くても対応可能。
もし高速走行の機会が少ないのなら、タイヤ取付部の剛性が低くても良いので、日米でナット式ホイールハブが使用されているのは、高速道路でも120km/h程度までしか出せず、剛性を追求しなくても良いからです。
逆に欧州式でホイールハブに剛性が追求された理由は、速度無制限区間のあるアウトバーンや、それに接続する欧州各国の高速道路網の発展にあると言えます。
変化する欧州の道路事情
しかし近年、ドイツのアウトバーンは速度無制限区間が縮小されています。
さらにアウトバーンでは渋滞まで発生しており、高速道路とは到底呼べない状態に陥っているのが現状で、アウトバーンに接続するイタリアの高速道路、アウトストラーダも同様です。
以前とは違い、欧州はすでに200km/h以上の超高速域で運転できる環境ではなくなっています。
ボルト式ホイールハブのメリット・デメリット
ボルト式ホイールハブの利点の1つにタイヤ取付部の剛性の高さがありますが、前述した通り、欧州の高速道路は200km/h超の高速走行が可能な環境ではなくなってきています。
にも関わらず、欧州メーカーの新車はボルト穴タイプのホイールハブを新車に装着していることを見ると、高い剛性以外にも、何か利点があるのでしょうか?
メリット① ハブボルトの長さ調整が可能
例えばタイヤとフェンダーをツライチにする場合、ホイールハブにスペーサーを噛ませ、タイヤを標準状態よりも外側にセットします。
この時、ナット式ホイールハブではハブボルトの長さが足りない場合があり、ホイールのデザインやタイヤサイズなどで制約を受けることに。
しかしボルト式ならハブボルトの役割はボルトが担うため、相応の長さのボルトを購入すれば、ハブボルト部の長さが足りないケースは少なくなります。
メリット② ハブボルトの修理が簡単
タイヤ交換の際、誤ってハブボルトを破損しても、ボルト式ならボルトの破損にとどまり、ボルト交換で済む場合があります。
そのため、ホイールハブの修理まで行わずに済むケースもあるのです。
一方、ナット式ではハブボルトはホイールハブと一体式のため、修理はホイールハブ全体に及び、費用も高額になります。
デメリット① タイヤ交換が大変
ナット式ホイールハブ採用車の、タイヤ交換は簡単です。
ホイールハブからハブボルトが出ているため、ホイールの各取付けボルト孔にハブボルトを通し、ナットで締めるだけ。
しかしハブボルトが存在しないボルト式ホイールハブでは、ホイールハブのボルト穴とホイールの取付けボルト孔の位置を合わせてから、ボルトを通します。
そのため、タイヤを持ち上げて穴の位置を合わせ、ボルトを通すなど1人では大変な作業に。
この不便さはガイドバーの使用で解消できますが、それでもナット式より一手間多くなってしまうのがマイナスポイントです。
まとめ
ナット式ホイールハブは日米車に、ボルト式は欧州車に多く採用されています。
その背景には、道路環境が大きく影響しているのですが、他にも、ホイールハブはタイヤセットを装着する保安部品であり、ハブボルトをユーザー任せにできないと考えるメーカーもあります。
現代ではサーキット走行もこなすレクサス RC Fが、ナット式ホイールハブを採用していることから、剛性などの機能面ではナット式、ボルト式どちらも遜色ないと考えられます。
それでもホイールハブが統一されないのは、メーカーの自動車に対する哲学や国民の自動車に対する考え方の違いなのでしょう。
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