ランサーと共に三菱を代表するモデルとして様々なモータースポーツシーンで活躍してきたミラージュ。現在は低価格コンパクトカーとして再出発していますが、かつては初心者から上級者まで扱いやすいジムカーナマシン、あるいはラリーやダートラで活躍する4WDマシンとして、国内モータースポーツのあらゆるステージで見る事ができました。
掲載日:2017/02/03
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「スーパーシフト」で活躍した初代
三菱 ミラージュの初代モデルがデビューしたのは1978年の事でした。
同社として初のFF車であり、また三菱500以来追い求めてきた「国民車」に近い安価なコンパクトカーとしては、初めて成功したモデルでした。
3ドア/5ドアハッチバックと4ドアセダン(ランサーフィオーレの兄弟車)が存在し、エンジンは1200・1400・1600と3種類のSOHCエンジン。
特徴的だったのは、マニュアルトランスミッションにハイ・ロー切り替え式の副変速機付き4速MT「スーパーシフト」を設定しており、うまく使えば8速MTとしての使用が可能な点でした。
ラリーでも名ドライバー、山内伸也がこの「スーパーシフト」の名手で、初期のアドバンラリーチームの一員としてミラージュ1400GTを駆り、優勝するなど好成績を収めています。
まだまだFF車がマイナーだった時期の名車と言えるでしょう。
三菱 A152A ミラージュ(初代・3ドア1600GT)のスペック
全長×全幅×全高(mm):3,790×1,585×1,350
ホイールベース(mm):2,300
車両重量(kg):800
エンジン型式:G12B
エンジン仕様:直列4気筒SOHC8バルブ
総排気量(cc):1,410
最高出力:82ps
最大トルク:12.1kgm
トランスミッション:副変速機付き4MT
駆動方式:FF
中古相場価格:- 円
「ミラージュインター」が始まった2代目
1983年には変らずのコンセプトながらデザインがリファインされた2代目が登場します。
ミラージュのワンメイクレースシリーズ「ミラージュインター」(ミラージュ・インターナショナル・ラリーアートカップ・シリーズ)が始まったのはこの代の途中、1985年からでした。
1987年までは画像左側のC13A型ミラージュGT(1.6Lターボ)、それ以降は右側のC53Aミラージュ・サイボーグにスイッチし、以後CJミラージュの途中1998年までワンメイクレースは開催されていたのです。
三菱 C13A ミラージュ(2代目・GT)のスペック
全長×全幅×全高(mm):4,005×1,635×1,360
ホイールベース(mm):2,380
車両重量(kg):880
エンジン型式:G32BT
エンジン仕様:直列4気筒SOHC8バルブ
総排気量(cc):1,597
最高出力:115ps/5,500rpm
最大トルク:17kgm/3,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古相場価格:- 円
ダートラやラリーで活躍した元祖4WDターボの3代目
1987年登場のこの代から、完全にランサーの兄弟車となったミラージュ。
4ドアセダンは共通(ランサーセダンは海外のみ)、3ドアハッチバックがミラージュ、5ドアハッチバックがランサーとなり、それぞれにスポーツ仕様には1,600㏄ccDOHCエンジン、または1,600ccDOHCターボが設定されています。
FFのC53A型はレースやジムカーナなどで活躍しましたが、それより息の長い活躍を見せたのがC73A(セダン)/C83A(ハッチバック)型の4WDターボモデルでした。
ダートトライアルやラリーでは同時期のギャランVR-4や後のランサーエボリューションより軽量なC73A/C83A型を好むドライバーも多く、1600ccターボが活躍できたダートトライアルA3クラスでは、クラス廃止となる2002年までいすゞ ジェミニイルムシャーRとともに活躍したのです。
三菱 C73A ミラージュ(3代目・4ドアサイボーグツインカムターボ)のスペック
全長×全幅×全高(mm):4,235×1,670×1,425
ホイールベース(mm):2,455
車両重量(kg):1,140
エンジン型式:4G61
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,595
最高出力:160ps/6,000rpm
最大トルク:22.5kgm/2,500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古相場価格:- 円
ジムカーナでシビックに立ちはだかった4代目
1991年登場の通称「CAミラージュ」。
さらにランサーとの共通化が進み、4ドアセダンはデザイン以外ほぼ共通(この代からランサー4ドアが国内で定着)、ミラージュはさらに3ドアハッチバックが設定されていましたが、それに加えて2ドアパーソナルクーペの「ミラージュアスティ」が初設定されました。
国内最小のV6エンジン(1.6L)が搭載された「ミラージュ6」が「ランサー6」ともども設定されたのも、この代でした。
大きな転機となったのは1992年にDOHC1.6LモデルにMIVECが導入されたこと。
ホンダVTEC同様に可変バルブタイミング・リフト機構を持つMIVECで、4G92エンジンはホンダB16Aの170馬力を上回る175馬力を発揮し、1.6LのNAエンジンでは最強になったのです。
これによりジムカーナ競技などでは、明確にパワー不足で対抗できなかったシビックSiR(当時はEG6)に対抗可能となりました。
3ドアハッチバックだけでなく2ドアのアスティにも搭載されましたが、こちらも若干の重量増とはなるものの、リアのトランクとの間にバルクヘッド(隔壁)を持ち、ハッチバックボディよりボディ剛性が高いことから、アスティを好むドライバーも多かったのです。
また、この代の4WDモデル(CC4A)はラリー4WD部門のBクラスで長く使われ、1,600㏄以下のマシンで戦われた2002年まではワンメイク状態でした。
三菱 CA4A ミラージュ(4代目・3ドアRS)のスペック
全長×全幅×全高(mm):3,950×1,680×1,365
ホイールベース(mm):2,440
車両重量(kg):1,010
エンジン型式:4G92
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,597
最高出力:175ps/7,500rpm
最大トルク:17kgm/7,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古相場価格:- 円
シビックと最後まで戦い続けた5代目
1995年にはランサーともどもほぼキープコンセプトで、3ドアハッチバックや4ドアセダン、アスティといったラインナップも変更無し。
引き続きジムカーナ競技やラリーなどで使用され、同時期に代替わりしたEKシビック、ことにEK9シビックタイプRと正面から対峙する事となりました。
絶対的な速さではEK9に劣ったとはいえ、短いホイールベースによる軽快性を重視するドライバーも多く、総合的には決してEK9にも劣らなかったマシンと言えます。
さらに競技用ベースグレードの「RS」では、快適装備が簡素化されているとはいえ、競技用にブレーキなど各所が強化されているにも関わらず、諸費用込み150万円台で新車が買えるという激安ぶりでした。
しかし、時代は3ドアのホットハッチなど求めない時代に入っており、販売不振から2000年にハッチバックとアスティは生産中止、セダンはランサーに統合される形となりました。
また、ミラージュの名を冠した5ドアミニトールワゴンのミラージュディンゴが1999年には登場しましたが、正確な後継者は2002年デビューのコルトと言えるでしょう。
三菱 CJ4A ミラージュ(5代目・3ドアRS)のスペック
全長×全幅×全高(mm):3,870×1,680×1,385
ホイールベース(mm):2,415
車両重量(kg):1,010
エンジン型式:4G92
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,597
最高出力:175ps/7,750rpm
最大トルク:17kgm/7,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古相場価格:48~59万円
低価格車として再出発した6代目
ミラージュ後継車だったコルトは地味ながらも予想に反し人気が落ちず、2013年までの11年間販売されるロングセラーモデルとなりました。
しかし、三菱はコルト後継を同カテゴリーでは作らず、2012年により小さいリッターカーとして「ミラージュ」の名を復活させます。
後に1.2Lエンジンも追加されたとはいえ、あくまでタイ工場で生産する低価格世界戦略車というポジションの車でしたので、5代目ミラージュやその後のコルトよりは、初代ミラージュに近い車と言えるかもしれません。
しかし、タイなど新興国で生産する低価格車を日本でも新世代コンパクトカーとして普及させる方針は日本では受け入れられず、販売台数は伸び悩んでいます(日産も同じ成り立ちのK13マーチで低迷)。
また、ミラージュR5というランエボの4B11エンジンを縮小した1.6Lターボエンジン搭載の4WDマシンを開発中で、国際ラリーへの復帰を予定していました。
しかし、2016年に発覚した燃費偽装事件とその後の日産子会社化の影響か、ここ最近、その話題を耳にしません。
現在日本のモータースポーツで現行ミラージュが活躍しているのは、全日本ダートトライアルDクラスに参戦している、炭山義昭の改造車くらいでしょうか。
三菱 A03A ミラージュ(6代目・5ドアG)のスペック
全長×全幅×全高(mm):3,795×1,665×1,505
ホイールベース(mm):2,450
車両重量(kg):900
エンジン型式:3A92
エンジン仕様:直列3気筒DOHC12バルブ
総排気量(cc):1,192
最高出力:78ps/6,000rpm
最大トルク:10.2kgm/4,000rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
中古相場価格:19.8~127.9万円
まとめ
ラリー、ジムカーナ、ダートトライアル、レースとステージを選ばず多彩な活躍を見せた三菱 ミラージュの歴代の流れはいかがでしたか?
最後の6代目は残念な流れとなってしまいましたが、最近はホットハッチ市場が少しずつ活発になっているので、巻き返しに期待したいと思います!
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