先代の14代目トヨタ クラウンが発表された時、そのデザインへの衝撃度は凄まじいものがありました。ましてや、ピンク色に若草色、空色とカラフルなクラウンが登場するに至っては、「とうとうクラウンもこれでオシマイか?!」と思った人もいたはずです。しかし、見捨て身の奇策に見えたカラフルクラウンは『究極のクラウン』として大きな話題にを集め、トヨタが長年苦労しながら進めてきたユーザー層の若返り策が実った瞬間となったのです。

 

14代目トヨタ クラウン(ロイヤル)  / Photo by Amila Tennakoon

 

ロイヤル/アスリート/マジェスタが揃った最初で最後のクラウンは驚きのデザイン

 

14代目トヨタ クラウン(アスリート) / 出典:https://www.favcars.com/toyota-crown-athlete-g-s210-2015-images-423093-800×600.htm

 

2012年12月に発売された14代目クラウンは、ロイヤルサルーン系に廉価版ロイヤルを加えた『ロイヤルシリーズ』、スポーティな『アスリートシリーズ』、後にそれまでの独立車種からクラウンへ統合された上級モデルの『マジェスタシリーズ』の3種類となりました。

そしてロイヤルシリーズのロングホイールベース版となった『マジェスタシリーズ』は、全車3.5リッター(FR)または2.5リッター(4WD)のハイブリッド専用。

『アスリートシリーズ』には2015年10月に2リッター直列4気筒のダウンサイジングターボ8AR-FTSを搭載するなどそれぞれの特色を出し、販売面でもイメージ面でも主力はアスリートシリーズへ移っていましたが、マジェスタシリーズを含むロイヤル系が設定された最後のクラウンでもありました。

 

14代目トヨタ クラウン(ロイヤル)  / 出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-crown-hybrid-royal-saloon-s210-2012-190687-800×600.htm

 

しかし、そのような多少の変化は些細な事とばかりに、発表された14代目クラウンを見た者はそのデザインに文字通り度肝を抜かれます。

先代、先々代とクリーンでスマートなイメージでキープコンセプトデザインを保ち、決して派手では無いもののさりげない躍動感や若々しさを持つ『落ち着き成熟した人物から、アグレッシブな若い世代まで通用する車』として人気を維持してきたクラウン。

しかし気が付けば真っ向からライバルになるような車は、少なくとも国産車には無くなってしまい、もはや4代目(クジラクラウン)や9代目のような大変革を行ってもシェアを奪う者は無く、ただ己と向き合うのみ!と考えたのかもしれません。

もっとも保守的なはずのロイヤルシリーズでさえ、巨大なフロントグリルとバンパーまで達して正面から見れば凸状となるメッキモールが装着され、アスリートシリーズに至ってはボンネットからフロントバンパー下端まで左右からズドンと稲妻が落ちたような切り欠きに挟まれた、何ともアグレッシブなフロントグリルとなっています。

 

14代目トヨタ クラウン(マジェスタ)  / 出典:https://www.favcars.com/toyota-crown-majesta-s210-2013-pictures-417974-800×600.htm

 

そんなメカニズム面も含めた他のどの部分よりインパクト抜群のフロントマスクは、ユーザーにとって「ついにクラウンがまたやってしまったか!」と考えるか「新しいクラウンの始まりか!」と考えるか、おそらくは大きな賭けでした。

とはいえ4代目や9代目の頃ならば、ここでサッと日産がセドリック/グロリアに気の利いたモデルチェンジでシェアをさらうところですが、両者とも既にこの世のものにあらず。

その結果、気が付けば誰もがすぐに慣れてしまい、発売と同時に月間販売台数トップ10に入り、2013年3月には5年ぶりに月販1万台を突破するヒット作となりました。

情報があふれる現代社会において、もはや多少派手なデザインになったくらいではクラウンはビクともせず、11代目(1999年)から本腰を入れて取り組んだ若返り策が見事に実ったのです。

 

歴代クラウンのイメージを斜め上に弾き飛ばした3色+αのカラフルクラウン!

 

14代目トヨタ クラウン(アスリートG “ReBORN PINK”)  / © 1995-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

14代目クラウンが世間を驚かせたのは、そのデザインばかりではありません。

モデルチェンジの発表会には全身をピンクのボディカラー、純正カラー名”モモタロウ”に包んだクラウンアスリートが登場したばかりか、「この特別色を2013年末に発売を予定しています!」と断言したではありませんか!

実際にイメージしたのは桃太郎ではなく『ドラえもんのどこでもドア』だそうで、そう言われると急に高級な夢のある未来の世界を想像できてしまします。

そして2013年9月から、1ヶ月間限定受注を行ったハイブリッドFRの『アスリートG “ReBORN PINK(リボーン ピンク)”」と4WDガソリン車の「アスリートG i-Four”ReBORN PINK”」2種類のモモタロウカラー特別仕様車には実際に650台ものオーダーが集まりました

その後、生産は同年12月から開始され、現在は中古車市場でも数台流通していますが、14代目クラウン全体の中古車相場が119~598万円なのに対し、ReBORN PINKピンククラウンは259万~498万円と、初期型としてはなかなかの高値推移です。

 

14代目トヨタ クラウン(アスリートS”空色edition”)  /  © 1995-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

しかもクラウンのボディカラー戦略は、ピンクだけでは終わりませんでした。

2014年7月30日から全国放映していたCMには、鮮やかな空色および若草色のクラウンが登場し、2015年1月に「クラウン誕生60周年を記念し、このCMのクラウンを売ります!」と発表されたので、世間はまたも度肝を抜かれます。

そして2015年4月に1ヶ月限定で発売されたクラウン60周年特別仕様車は、『アスリートS』『アスリートS Four』をベースとしたそれぞれ『空色edition』『若草色edition』というド直球の名前で話題を集めます。

 

14代目トヨタ クラウン(アスリートS”若草色edition”) / © 1995-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

また、14代目クラウンにはメカニズムや装備面でも見るべき部分が多数あるのですが、上記3色カラフルクラウンの衝撃度に比べれば、特別なセンチュリーを除けばトヨタブランド最高級セダンなのだから当たり前の装備としか言えません。

 

14代目トヨタ クラウン(アスリートG “ReBORN PINK”)  / 出典:https://www.favcars.com/images-toyota-crown-hybrid-athlete-g-reborn-pink-s210-2013-418012-800×600.htm

 

ちなみにピンク、空色、若草色の3大カラフルクラウンは内装も独特な白基調で、視覚的衝撃による従来からのクラウンの『破壊』は徹底されていました。

そんなクラウンのボディカラー戦略はその後も続き、2015年10月のマイナーチェンジでは『天空(そら)』、『茜色(あかねいろ)』などかなり古風な和式ボディカラー12色に内装色も白、黒、こがねの3種類を組み合わせ可能な『ジャパンカラーセレクションパッケージ』が登場。

先の3色を合わせて15色のカラフルなクラウンは、まさに革命的でクラウンの殻を破る偉業でした。

 

主なスペックと中古車相場

 

14代目トヨタ クラウン(アスリートG “ReBORN PINK”)  / 出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-crown-hybrid-athlete-s210-2012-418009-800×600.htm

 

トヨタ AWS210 クラウン アスリートG “ReBORN PINK” 2013年式

全長×全幅×全高(mm):4,895×1,800×1,450

ホイールベース(mm):2,850

車両重量(kg):1,680

エンジン仕様・型式:2AR-FSE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ

総排気量(cc):2,493

最高出力:131kw(178ps)/6,000rpm

最大トルク:221N・m(22.5kgm)/4,200~4,800rpm

モーター仕様・型式:1KM 交流同期電動機

最高出力:105kw(143ps)

最大トルク:300N・m(30.6kgm)

トランスミッション:電気式無段変速

駆動方式:FR

中古車相場:119万~598万円(14代目全モデル)

 

まとめ

 

14代目トヨタ クラウン(アスリートS”若草色edition”)  / © 1995-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

どれだけ熱心にメカニズムやコンセプトの説明を受けたとしても、目前にピンクなど鮮やかなクラウンが並べば、チラチラとそちらばかりに視線が行ってしまい、説明がロクに頭に入らないのではなかろうかと思うぐらいのインパクトが14代目クラウンにはありました。

もちろん極めて真面目にトヨタの大型高級セダンとして作られてはいるのですが、斬新なカラーやデザインが奇抜過ぎて見るに耐えないならともかく、実物を見るとクオリティが高く似合っているので、その実力を認めるほかありません。

筆者も知人宅の近所に若草クラウンを買った家があるのでしばしば目にしますが、奇をてらうわけでもなく、むしろ『鋭い自己主張を放つ独特の高級感』すら感じます。

これはまさにトヨタ自身による『クラウンの創造的破壊』と言うべきで、大成功したトヨタは15代目クラウンで再出発ともいえる大転換を図り、ヨーロッパ的な走りと塊感あるデザインが魅力な高級スポーティセダンとして再出発するのでした。

 

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