1970年代後半、日本では漫画「サーキットの狼」が火付け役となり、スーパーカーブームが巻き起こります。1980年代初頭からは、日本車も追い付けと言わんばかりにどんどん高性能になっていきました。そんな中、国産メーカーは高性能技術にわかりやすいネーミングを与え、当時の車好きをワクワクさせてくれました。どのような用語やネーミングがあったのか、覚えていますか?
トヨタのツインカム24
トヨタが1967年に発売したトヨタ 2000GTには、同社初のDOHCエンジンの3M型が搭載されていました。
当時としては高性能なエンジンでしたが、バルブ数は吸気1、排気1の2バルブ。
その後70年代から80年代初頭に発売されたR型、T型、M型のDOHCエンジンもみな、1気筒あたり2バルブ仕様でした。
ちなみに、このころトヨタはDOHCエンジンを「ツインカム」と呼び、直6DOHCを「ツインカム-6-」と呼称。
当時のツインカム後の数字は、気筒数だったのです。
そして1982年に、トヨタ初の1気筒4バルブDOHCエンジン「1G-GEU」型がセリカXXを始め、マークII、チェイサー、クレスタなどに搭載されます。
この時のエンジンのキャッチフレーズが、「ツインカム24」。
6から24と、4倍にアップしたためか、直列6気筒 4バルブDOHCに高級・高性能のイメージを定着させることに成功し、日本の車好きをワクワクさせました。
現在では、ツインカムはDOHCを意味する一般的な呼称となっているので、ワクワクする人は少ないと思いますが、それだけトヨタのDOHCエンジンの普及が、成功したということです。
マツダのロータリーロケット
ロータリーロケットは、初代RX-7(SA22型)のロータリーターボエンジン搭載車に与えられたキャッチフレーズです。
マツダファンやスポーツカーファンにとって、ロータリーエンジンは高性能なイメージを持つパワーワード。
そこに宇宙へと飛び出さんとするロケットを組み合わせたネーミングには、ロータリーターボはNAのロータリーエンジンと比較して、どれだけじゃじゃ馬なのかと想像せずにはいられませんでした。
その後、RX-7がSA型からFC型へとモデルチェンジした際、ロータリーエンジンも12A型から13B型へと変更され、排気量も573cc×2から654cc×2へとアップします。
そして日本仕様のFC型にはNAロータリーの設定はなくなり、全車ロータリーターボになると、ロータリーロケットはさらなる高性能化を遂げます。
その究極形が、ユーノス コスモに搭載された20B型3ロータリーターボ(654cc×3)でした。
ミッドシップ
ミッドシップというエンジンレイアウトは、レーシングカーやスーパーカーなど特殊なスポーツカーをメインに採用されていました。
量産車でありながら、ミッドシップレイアウトを初めて採用したのは、1973年に発表されたフィアット X1/9でした。
X1/9は製造手法がユニークで、同じくフィアットのFFレイアウトの大衆車『128』のエンジン/ミッションを、180度回転させることでミッドシップに搭載するというもの。
日本ではトヨタが、フィアットと同じ手法で、カローラのユニットを反転させたミッドシップスポーツ『MR2』を開発し、1984年に発表しています。
カローラをベースに、スーパーカーのようなミッドシップ車が作れるのかと、当時は大きな話題となり、ミッドシップが一気に世の中に知れ渡りました。
さらにこの手法は1980年代初頭の人気漫画「よろしく!メカドック」でも取り上げられ、ミッドシップ化されたホンダ・バラードスポーツCR-Xが登場。
このFF車を逆転の発想でスーパーカーへと変身させるチューニングに、メカドックファンはワクワクがとまりませんでした。
日産のV6エンジン
乗用車の国産メーカーで、初めてV型エンジンを市販したのは、日産自動車でした。
1983年6月にY30型セド/グロに、9月にZ31型フェアレディZに、3.0リッターのV6エンジンを搭載。
新開発のVG型V型エンジンは、従来のL型直列エンジンの代替機種として開発され、SOHCながらZ31型フェアレディZに搭載されたターボ仕様は、ネットで230PSを発揮し、日本一パワーのある車でした。
当時はまだあまり聞き慣れない「V6」という響きと、日本最高出力の230PS。
スーパーカーブームまっただ中の、当時の車好きが、ワクワクしない訳がありません。
ツインターボ
1970年代後半から1980年代初頭にかけて、ターボの日産vsツインカムのトヨタの図式で、高性能エンジン競争が行われていました。
このころのターボは、タービンが鉄製で大型で重かったため、過給を行うまで時間がかかる、いわゆるターボラグがあったのです。
エンジンのトルクバンドを外れそうになると、一気にパワーを出力するため、「どっかんターボ」と呼ばれました。
そんなタービンが2基も搭載されているのが、ツインターボです。
このネーミングには、どっかん具合も2倍、出力も2倍になるのではとワクワクを通り越して、恐怖すら覚えるレベルでしたが、実際には出力向上よりも、ターボラグの解消とドライバビリティの改善のために導入されました。
日本で初搭載されたのは、X70系マークII3兄弟に搭載された「1G-GTEU」型で、1985年10月のことです。
そしてマークII3兄弟を皮切りに、2代目ソアラ、スープラなどのラグジュアリーモデルやスポーツモデルに搭載されていきました。
1988年に発表されたR32型スカイラインGT-Rには、レースに勝つために開発された「RB26DETT」型ツインターボエンジンを搭載。
ツインターボは、1980年代後期から現代まで、ツインカムに代わる新たな高性能の代名詞となったのです。
フルタイム4WD
BFファミリア
ラリーでは雪の女王ど親しまれてた一台
個人的にはメタルダーのイメージがデカイw pic.twitter.com/mFUWfqCr07
— イツヤ@シグレーシング (@itsuya_re) 2017年6月13日
現代ではGT-RやNSXなど高性能スポーツカーには必須となったフルタイム4WDを、世界で初めて実用化したのがアウディでした。
そして国産メーカーで初となるのが、マツダ。
1985年10月に、1.6リッター直4DOHCターボとの組み合わせで、BF型6代目ファミリアセダンと3ドアハッチバックに搭載されました。
ちなみに3ドアハッチバックのファリミア4WDは、ラリー参戦車としても使用され、ファミリアのスポーツイメージを牽引。
当時の日本での4WDはパートタイム方式のみで、主にジープなどRV車に搭載されていたのですが、乗用車では、スバル レオーネやジャスティが目立ったところ。
他社で乗用車にパートタイム式4WDを搭載する例は、稀有でした。
そんな情勢の中、マツダがファミリアにフルタイム4WDを搭載。
しかもアウディ クワトロと同様のシステムとくれば、車好きの話題に登らないはずがありません。
ファミリア以降も、レオーネRXシリーズ、セリカGT-FOUR、スカイラインGT-Rとフルタイム4WD車が続々と発売されました。
まとめ
1980年代はオイルショックや排ガス規制を乗り越え、日本車が高性能になっていった時代です。
今回紹介した以外にも、スーパーチャージャー、スーパーターボ、4WS、ATTESA、VTEC、TEMSなど、高性能を期待してワクワクせざるを得ない専門用語が多々あります。
昔の自動車のカタログを見る機会があれば、当時の先進技術の詳細を読んでみてください。
現代の自動車技術の起点を、発見できることでしょう。
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