ホイールやタイヤを純正品から社外品に交換することは、車のカスタムではポピュラーです。しかし、車高を落とそうとしたり、幅広タイヤを履かせたりする際、問題になることがあるのがフェンダー内側の「爪」。これを解消するために「爪折り」をするのですが、この部分を折ってしまうことに、問題はないのでしょうか。
掲載日:2019.7/19
フェンダーの「爪」とは
車のボディのうち、タイヤを覆っている部分が「タイヤフェンダー」、通称「フェンダー」です。
このフェンダーの基本的な役割は「タイヤがボディからはみ出さないようにする」ことであり、その内側には強度を保つべく「爪」と呼ばれる箇所があります。
フェンダーをよく見てみると、その箇所はパネルになっているのですが、それはタイヤが収まるようにカットしただけでは、走行時の衝撃に耐え得るだけの強度を持たせることができないためです。
そのためほとんどの車では、製造時にフェンダーを内側に折り込むことで強度が保たれており、この内側に折り込まれたフェンダーは”爪”と呼ばれます。
この内側に曲げられた爪はタイヤへと伸びているのですが、この部分が社外ホイールや太めのタイヤを履く場合に問題となることがあるのです。
例えば、純正品よりも太いタイヤを履かせたり、車高を落としたりすると、サスペンションが縮んだときに爪がタイヤやホイールに干渉してしまいます。
それを避けるために行われるのが、「爪折り」と呼ばれる加工です。
これはフェンダーの爪をさらに内側へ折り込むことで、タイヤがフェンダーと干渉するのを防ごうとする加工であり、爪を完全にカットしてしまう「爪切り」とは違って、ボディの強度も保つことが可能です。
しかし、元々折り込まれているものをさらに曲げることになるので、車体へのダメージは決して無視できない加工でもあります。
爪折りのメリットとデメリット
では、爪折りのメリットとデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
以下は、爪折り加工のメリットとデメリットです。
爪折りのメリット
爪折りをするメリットには、以下のようなものがあります。
- 社外タイヤやホイールを履かせても、フェンダーに干渉せずに済む
- 爪切りとは違って、一定のボディ強度を保てる
- 末端処理をしてさえいれば、車検にも通る
爪折りのメリットは社外タイヤやホイールを履かせてもフェンダーには干渉せず、ボディ強度もあまり下がらないこと。
また、車体の強度を落とすことになる爪切りとは違って、一定のボディ強度を維持できるので、バリ(金属の突起部)や塗装のサビの処理をしてさえいれば、車検にも通ります。
しかし爪折りを行った車は、ディーラーだと「事故車」扱いされてしまい、取り扱ってもらえないので、別の店舗で車検を受けるようにしましょう。
爪折りのデメリット
爪折りはメリットばかりではなく、デメリットも多く存在します。
- フェンダーの形が変わったり、塗装が剥げたりする可能性がある
- フェンダーが変形した場合、板金修理が必要
- ディーラーでの買取査定額が落ちる
- ナンバー付き競技用車両では、規則で爪折りが禁止されている
- フェンダー幅を広げた場合は、構造変更申請が必要
- 一度加工すると元には戻せない
爪折りをするにはフェンダーの鉄板を曲げる必要があり、それによって折り込んだ箇所の塗装が剥がれたり、フェンダーが変形したりするリスクがあります。
工業用ドライヤーで熱しながら加工すると、ある程度影響は緩和されますが、それでも塗装が剥がれる可能性は高く、冬場に加工した場合は広範囲の塗装が確実に割れてしまうのです。
また、爪折りをするということは、フェンダーを曲げる加工をするということなので、フェンダー自体が歪むリスクもあり、爪折りよりも費用の高い板金修理が必要になることも。
仮に問題なく爪折りができたとしても、今度はフェンダーをさらに折り込んだことによってできた隙間を、充填材で補う作業も必要です。
そしてナンバー付き競技車両を爪折りした場合は、JAFの国内競技車両規則に違反したことになるので、ジムカーナやダートトライアルなどの競技には出られず、爪折りした競技車両には一文の価値もなくなってしまいます。
まとめ
前述のデメリットの他にも、事故車扱いされて買取査定額が落ちたり、車幅が変わった場合は申請が必要になるなど、爪折りを完了するまでには非常に手間が掛かるうえに、一度加工するともとには戻せません。
そのため、「それでも爪折りをしたい!」というのであれば、失敗した場合のリスクもよく考えてから行う事をオススメします。
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