SUPER GTのGT300クラスを戦うレーシングチーム「GOODSMILE RACING & TeamUKYO」が、AMG GT3の本来の力を解放して行うタイムアタックイベント『メルセデスAMG GT3 タイムアタック チャレンジ』を開催!BoPという性能調整を全て排除し、富士スピードウェイのコースレコードを狙う前代未聞のイベントに、編集部ヤマトが潜入取材してきました!
Photo&Text Yamato.
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GOODSMILE RACING & TeamUKYOとは
国内最高峰モータースポーツであるSUPER GTの、GT300クラスを戦うレーシングチーム「GOODSMILE RACING & TeamUKYO」(以下GSR)。
“ファンと共に走るレーシングチーム”をスローガンに掲げる、「初音ミク GTプロジェクト」の中心となる同チームは、従来のレーシングチームには無かった様々な取り組みで、ファンの心をがっちりと掴んでいます。
2020年シーズンは通称EVOモデルと言われる新型AMG GT3を導入するも、BoP(※全車を均一のポテンシャルに保つべく行われる性能調整)が厳しく、マシン本来のポテンシャルを発揮することができませんでした。
そこで、新たな試みとして2020年12月26日に、2021シーズンに参戦するマシンデザインを発表すると同時に、AMG GT3のリストリクターによる吸気量制限とウェイトを全て外し、クルマ本来の性能で富士スピードウェイのタイムアタックに挑戦する『メルセデスAMG GT3 タイムアタック チャレンジ』を行うことになったのです。
2021年モデルのAMG GT3はパステルな色合いに。
2021年のマシンは、ここ数年のモデルと比べても、かなりパステルなカラーリングとなりました。
このマシンをデザインしたのは、八塚 悠輔氏 (グッドスマイルカンパニー)。
なんと、社内デザイナーであり、レーシングマシンはおろか、クルマのデザインが始めてにも関わらずこのクオリティ。ただただ驚きです。
2021年の初音ミク レーシングVer.(通称レーシングミク)のデザインを担当したのは、Vチューバーのキズナアイのキャラクターデザインなどで知られるイラストレーターの、森倉円さん。
ヘッドライトのアイラインはグラデーションになっており、ボディ全体にはラメがきらきらと輝いています。
さらに、レーシングミクの後ろやボディ側面には、パステルピンクのような色で「グッドスマイル」という文字が隠れているなど、マシン全面に施されたギミックを見ているだけでも、ワクワクしてしまうデザインです。
スポーツ走行スタート!しかし、まさかのアクシデント…。
チームは前日からピットの設営を行い、タイムアタックに向けて入念な準備を行います。
今回走行を担当するのは、谷口信輝選手。数々のマシンでコースレコードを持つレーシングドライバーです。
当日の富士スピードウェイの気温は6℃。
少しでも早くタイヤをベストコンディションまで温めるために、テントの中でストーブを焚いて温度を上げておくなど、タイムを出すための努力は惜しみません。
ちなみに、現在のコースレコードは1:34.665。レコード更新を狙います。
当日のスケジュールは、13時と14時20分からの30分の走行枠にエントリーし、15時からコースを貸し切り。誰もいない、占有状態のコースでアタックする計画です。
13時になり、まずは富士スピードウェイの一般スポーツ走行枠での走行がスタートします。
一般参加者の車両に交じってGT3マシンがテストをするという驚くべき状況の中、谷口選手はマシンの感触を確かめるべく走行を進めますが、ここでアクシデントが発生。
最終コーナーで他の参加車両と接触をしてしまい、AMG GT3は右リアに走行不能なレベルのダメージを負ってしまったのです。
イベントの中止も危惧されるなか、メカニック総出でマシンの復旧作業がスタートします。
予定していた14時20分からの一般走行枠も走ることができず、破損したパーツをスペアパーツに交換。
一番破損の酷かったサイドステップは、2020年のパーツが装着されました。
そして、限られた時間の中で、手際のいい迅速な作業が行われ、無事に15時からの走行に間に合わせることができたのです。
全てを解放した圧巻の走り!
15時ちょうどにすべての作業が完了し、ピットのガレージが開かれると、グランドスタンドで待ちわびていたGSRファンから、ピットまで響くほどの拍手が巻き起こります。
そして、遂にAMG GT3がコースイン。
今回の走行メニューは、最初の10分間をスーパーGTのレギュレーション通りのBoPで走行。
その後ピットインしてセッティングを変更し、リストリクターの変更やウェイトを降ろすことでAMG GT3本来の性能に戻したうえで、タイムアタックを行います。
最初の10分間。ここでのベストタイムは4周目に出した1:37.366。最高速は270.677km/hを記録しました。
しかし、ここまではシーズン中も見慣れたタイムであり、2020年シーズンの最終戦では1’37.111を叩き出す走りを見せているので、ベストタイムからは0.2秒遅い状態です。
このタイムを出した次の周でピットイン。
ピット作業メニューは、4本のタイヤを全てニュータイヤへ交換する事と給油です。
そしてリストリクター交換と、バランスウェイトの取り外しが行われ、全ての力を解放したAMG GT3とタイム請負人、谷口選手がコース上に戻ります。
タイヤを温め、8周目にアタックを開始。
この周の最高速は、なんと279.793km/h!リストリクターの変更で、最高速が9km/hも向上しています。
そして、そのまま全セクターでベストを叩き出し、最初に出したタイムが1:36.032。約1.3秒もタイムを縮めることに成功し、そのままアタックを継続します。
その後、9周目には最高速279.070km/hに落ち着くも、さらに全セクターでベストを叩きだし、1:35.736までタイムを更新。10周目にピットに戻ります。
ここで終了かと思われましたが、さらにタイムアップを狙うべく、チームはもう1セットニュータイヤを装着することを決断したのです。
2度目のピット作業を終え、コースインした時点で残り時間は約5分。
アタックできるのは2周あるかないかという緊張が走る中、谷口選手が叩き出したのは、0.8秒タイムを縮めた1:34.864!最高速は、最初と同じ279.793km/hでした。
残念ながら、コースレコードには0.2秒届きませんでしたが、見ごたえのある圧巻の走りを披露。
30分間で、走った周回数は13周でした。
この僅かな時間で叩き出した驚きのタイムに、グランドスタンドに集まったファンからは拍手喝采。
こうしてイベントは、終了となりました。
まとめ
GSRが主催した『メルセデスAMG GT3 タイムアタック チャレンジ』では、別の記事でも紹介させていただきましたが、なんと5G回線を使用して、オンボード映像をZOOMでリアルタイム配信するという試みまで行われました。
これは、作戦の都合で表に出せない情報が多いレース業界では異例のコンテンツで、普段は見ることができない映像というだけでなく、どうしても現地に来れないファンも楽しめる、GSRらしいコンテンツでもあります。
その他にも様々な企画が用意されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止したものも多々。
早くこの、苦しい状況が終わることを祈るとともに、2021シーズンのSUPER GTに、期待が高まるイベントとなりました。
来シーズンもGSRが魅せてくれる新たなイベントと、モータースポーツを思い切り楽しみましょう!
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