11月19・20日に鈴鹿サーキットで開催された「鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2016」。今回はグループCカーばかりに注目が集まりましたが、往年のF1マシンたちも10台以上が参加。その中には、世界中にファンも多い、フェラーリのマシン。コース上では新旧フェラーリの競演も見られるなど、本当に夢のようなイベントとなりました。今回は鈴鹿に登場したフェラーリのF1マシン6台を紹介します!
フェラーリ312T
1975年にニキ・ラウダが初めてワールドチャンピオンに輝いたマシン。
それまでの葉巻型マシンから、前後にウイングがつき、現代のフォーミュラカーの流行の原型となった時代で、成功した1台です。
フェラーリの水平12気筒ボクサーエンジンにギアボックスを横置きにするという斬新なデザインを採用。これにより、重いものがホイールベースの中に収まりマシンのハンドリングは大幅に向上。
これが大きな武器となってニキ・ラウダとクレイ・レガッツォー二が大活躍。
2人でシーズン6勝を挙げ、ラウダが初のワールドチャンピオンに輝きました。
ここからフェラーリの快進撃が始まり、1980年までの312T5までドライバーズタイトル3回、コンストラクターズタイトル4回を獲得。フェラーリの第一次黄金期を築きました。
現在、このマシンは今イベントの冠スポンサーとなったRICHARD MILLEの代表を務めるリシャール・ミル氏が所有しているもの。
しっかりウエットタイヤも持っていて雨となった初日も快調に走っていました。
特徴的な銀色の前後ウイングや、ボディデザインなど、もちろん当時そのまま。エンジンも本当に快調で、このマシンが走り過ぎていくと約40年前にタイムスリップしたような感じでしたね。
フェラーリ312T スペック
シャシー:アルミ・モノコック
エンジン:フェラーリ312B
エンジン種類:水平対向12気筒
排気量:2992cc
過給器:なし
出力:500馬力/12200rpm
ギアボックス:フェラーリ015(5速)横置き
ホイールベース:2517mm
トレッド:前1511mm、後1529mm
車重:583kg
フェラーリF187
ニキ・ラウダやジョディ・シェクターの活躍以降、再びフェラーリは低迷期に入ってシーズン未勝利で終わってしまうことも。
その中で、久々の勝利を挙げてティフォシを喜ばせたのが、このF187。
これは1987年に参戦したマシン。ゲルハルト・ベルガーとミケーレ・アルボレートがドライブしていました。
当時はターボエンジンが主流で、中でも圧倒的な強さを誇っていたのがホンダエンジン。
1986・1987年ともにウィリアムズ・ホンダがコンストラクターズチャンピオンを獲得。ドライバーズでもネルソン・ピケが1987年のチャンピオンとなりました。
そんな中、劣勢状態だったフェラーリに千載一遇のチャンスが訪れます。
それが鈴鹿サーキットでのF1初開催となった1987年第15戦日本GP。
予選でベルガーがポールポジションを獲得すると、スタートもきっちり決めてトップで1コーナーへ。
本命視されていたライバルたちが次々とトラブルやアクシデントで脱落していく中、ベルガーは順調に走りきりトップでフィニッシュ。
陣営に約2年ぶりとなる勝利をもたらし、チームのピットは一気にお祭り騒ぎとなりました。
すでに、今年のF1日本GPやファン感謝デーなどでもデモランをしているマシンなので、新鮮さは少なかったですが、他のフェラーリマシン(特にN/A車)と比べると、その音の違いを体感できたのではないでしょうか。
フェラーリF187 スペック
シャシー:カーボン コンポジット・モノコック
エンジン:フェラーリ033
エンジン種類:V型6気筒(90度)
排気量:1496cc
過給器:ギャレット・ツインターボ
出力:880馬力/11500rpm
ギアボックス:フェラーリ6速
ホイールベース:2800mm
トレッド:前1796mm、後1608mm
車重:540kg
フェラーリF310
2年連続でF1王者となったミハエル・シューマッハが「フェラーリ再建」ために跳ね馬へ移籍。その1台目となったのが、このF310です。
移籍1年目ということで苦戦もしましたが、シーズン3勝をしたマシン。
当初はローノーズのデザインでしたがカナダGPからハイノーズを投入。その他にも様々な改良を施していき、戦闘力を高めていきました。
この年からN/Aになってからフェラーリエンジン最大の特徴と言われていたV12エンジンからV10エンジンに変更。
基本的には、このあと出てくる2000年代のマシンとエンジンのレギュレーションはほぼ同じなのですが、このマシンだけ少し音が独特だったのが印象的でしたね。
フェラーリF310 スペック
シャシー:カーボン コンポジット・モノコック
エンジン:フェラーリ046
エンジン種類:V型10気筒(75度)
排気量:3000cc
過給器:なし
出力:非公表
ギアボックス:フェラーリ6/7速・横置きセミオートマ
ホイールベース:2900mm
トレッド:前1690mm、後1605mm
車重:600kg(ドライバー含む)
フェラーリF2001
フェラーリ黄金時代に活躍したマシンの1台。ミハエル・シューマッハにとっては通算4回目、フェラーリでは2回目のチャンピオンを獲得した時のマシンです。
前年までのハイノーズから曲線的に低く下げたノーズに変更。
この年からのレギュレーション変更に合わせて、フロントウイングの最低地上高が上がったことで曲線的なフロントウイングになりました。
ある意味、強いシューマッハ&フェラーリがイメージできるマシンのきっかけとなったモデルでもありますね。
このマシンは、現在個人オーナー所有のものになっていますが、こういったサーキット走行で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、フェラーリ直属のF1マシンメンテナンスの部署「コルセ・クリエンティ」が今回やってきて、マシンの整備を行なっていました。
ちなみに後述で出てくるF2003-GAとの見分け方ですが、エンジンカウル後部のデザイン。
エンジンやギアボックスのサイズも大きく、リアタイヤ付近までボディカウルがあるというものになっていました。
フェラーリF2001 スペック
シャシー:カーボン コンポジット・モノコック
エンジン:フェラーリ046
エンジン種類:V型10気筒(75度)
排気量:3000cc
過給器:なし
出力:非公表
ギアボックス:フェラーリ6/7速・横置きセミオートマ
ホイールベース:2900mm
トレッド:前1690mm、後1605mm
車重:600kg(ドライバー含む)
フェラーリF2003-GA
こちらは2003年にミハエル・シューマッハが史上最多のチャンピオン記録を更新する6回目のチャンピオンを獲得したマシン。
フェラーリの2003年シーズンのマシンということで「F2003」というマシン名になっていましたが、シーズン前にフィアット会長を務めたジャン二・アニエリ氏が死去。
彼への哀悼の意を表し、イニシャルのGAがつけられることになりました。
これまでと違って、ミシュランタイヤを装着するマクラーレン、ウィリアムズなどの躍進で連戦連勝とはいかず、最終戦までもつれましたが、見事に王座を獲得。
また相方のルーベンス・バリチェロが鈴鹿での日本GPを制したマシンとしても知られています。
前述のF2001とマシンカラーがほぼ一緒で見分けるのが難しいですが、前作のF2002から導入されたギアボックスの小型化により、エンジンカウル後部がギュッと絞り込まれるデザインになっています。
フェラーリF2003-GA スペック
シャシー:カーボン コンポジット・モノコック
エンジン:フェラーリ046
エンジン種類:V型10気筒(75度)
排気量:3000cc
過給器:なし
出力:非公表
ギアボックス:フェラーリ6/7速・横置きセミオートマ
ホイールベース:2900mm
トレッド:前1690mm、後1605mm
車重:600kg(ドライバー含む)
フェラーリ248F1
2006年、ミハエル・シューマッハが1度目の引退をした時の最後のマシン。
前述の2台と比べると、レギュレーション変更もあり、大まかなボディラインや前後ウイングの形状も異なります。
また、この年から2,400ccV8エンジンに変更されました。残念ながら、このマシンは展示のみでしたが、存在感がハンパなかったです。
ちなみにカーナンバーは6。2016シーズンでF1を引退したフェリペ・マッサが乗っていた仕様ですね。
フェラーリ248 F1 スペック
シャシー:カーボン コンポジット・モノコック
エンジン:フェラーリ056
エンジン種類:V型8気筒(90度)
排気量:2398cc
過給器:なし
出力:非公表
ギアボックス:フェラーリ7速・横置きセミオートマ
ホイールベース:3050mm
トレッド:前1470mm、後1405mm
車重:600kg(ドライバー、冷却水、オイル含む)
何年経っても色褪せないフェラーリサウンド
今回は、この6台のフェラーリマシンが登場しました。
それぞれの時代、それぞれの走りを見せてくれたのですが、一番印象的だったのは「音」。
特に一際甲高いサウンドを放つフェラーリのF1用N/Aエンジンは、有名ですよね。
特にF2001とF2003-GAは、3コーナー前くらいから音が聞こえて、目の前を通過していくとお腹が振動で揺れるような迫力あるサウンドを響かせてくれていました。
もちろん、当時となんら変わっていません。
今は時代の流れもあって、1600ccV6ターボエンジンになりましたが、どうしても迫力という意味では負けてしまう部分があります。
今回フェラーリマシンの走行を現場で観ることができて「やっぱり、F1はこうでなくちゃいけない」と改めて感じました。
だからと言って、すぐにF1のレギュレーションが変わるわけでもないのですが、こういった往年のマシンが今でも100%に近い状態で残っていて、その走行を見ることができるのは、本当に重要だしすごいことですね。
まとめ
ここまで、日本で新旧フェラーリのマシンが揃って走行するのは初めて。
昔憧れたマシンを目の前にして興奮して、当時の思い出話に花を咲かせた人も多かったでしょう。
そんな夢のようなことが実際に実現されたイベント「鈴鹿サウンド・オブ・エンジン」。来年はどんなマシンがやってくるのか?楽しみですね!
次のページでは、鈴鹿サウンド・オブ・エンジンで駆け抜けたフェラーリマシンをフォトギャラリーにまとめてみました!