1970年代から1990年代序盤までWRCで活躍したランチア。74勝と10回のメイクスタイトル獲得というWRC史上最多勝記録を保持しているランチアの歴代マシンたちをご紹介したいと思います。

出典:http://www.bmwpassion.com

 

WRC史上最強と言われたランチア

今でこそ、WRCの印象が強いランチアですが、F1が本格的に開催され始めた1950年代には、既にコンストラクターとして参戦しており、モータースポーツ活動については積極的な自動車メーカーでした。

1954年から2年だけF1に参戦を行った数年後、WRC(世界ラリー選手権)やWSC(世界スポーツカー選手権)へ参戦を開始し大活躍。世界中にランチアファンを生み出すこととなります。

数々の参戦の中でも、特にWRCで大成功をしたランチアは通算74勝という金字塔を打ち立てており、この記録は2017年現在も破られることなく、歴代最多勝記録となっています。

今回は、そんなWRC最強と言われたランチアの歴代マシンを、迫力あるピュアサウンド動画と共にご紹介していきます。

 

フルヴィア1600HF

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ランチア・フルヴィア#/

 

1963年から1976年まで製造されたランチア・フルヴィア。

当初は、1.3Lエンジンを搭載した小型乗用大衆車という位置づけにありましたが、クーペの登場により一転してスポーティーな車へ変貌しました。

最終的に1.6L・132馬力まで引き上げられたエンジンは、1920年代にランチアが製作していたV型4気筒DOHCという伝統的なエンジン型式を採用していました。

このフルヴィアは、1972年のWRCでチャンピオンを獲得しており、トヨタのWRC参戦やF1参戦に関わったオベ・アンダーソンなどの、後にWRCで活躍する選手を育てた車でもあったのです。

イタリアらしい上品な雰囲気を与えられたこのフルヴィアが、土煙をあげながらWRCのコースを疾走する姿は、まるで美人がランニングしているのと同じような印象を人に与えたのではないでしょうか。

 

ストラトス HF

出典:http://www.auto-classiche.it/

ランチア・ストラトス HF Gr.4 スペック
全長×全幅×全高(mm):3710×1860×1114
ホイールベース(mm):2180
車両重量(kg):980
エンジン仕様:V6 DOHC
排気量(cc):2418
最大出力:190ps/7000rpm
最大トルク:23kg-m/4000rpm
トランスミッション:5MT

駆動方式:MR

サスペンション:

前:ダブルウィッシュボーン

後:マクファーソンストラット

ランチア・ストラトスは、ランチアがラリーに勝つことを目的として1971年から作られた車です。

それを裏付けるかのように、ストラトスの構想には下記に焦点を合わせられていたといいます。

  • ラリーでの高度な運動性能
  • 過酷なステージに耐える頑強な機械機構
  • 点検や補修が容易に行える整備性

この全ての条件を満たし製作されたストラトスは、ラリーに要求されることをそのまま形にした車だったと言えるでしょう。

後に量産車両が参戦できるグループ4仕様の車両も製作されたストラトスは、「ストラダーレ」と名付けられ、1974年から75年にかけて492台が生産されています。

フェラーリのエンジンをチューニングして得た十分なパワーと、ショートホイールベース・軽量・低重心という三拍子が揃ったから実現した抜群の運動性能を武器に、WRC3連覇という偉業を達成したのです。

まるで戦いに挑む戦闘機のような出で立ちをしたストラトスは、例えるならオリンピックに出場している一級のアスリートのような存在だったといえるでしょう。

 

ベータ・クーペ

出典:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ランチア

ランチア・ベータクーペは、ストラトスを陰で支える存在、サポートカーとしてWRCに参戦していました。

異なる車種であっても、獲得したポイントはランチアチームとしてカウントされるシステムとなっており、F1で例えるならセカンドドライバーのような存在といえるでしょう。

ストラトスと共にWRCに参戦したベータクーペは勝利も挙げており、ランチアのメイクスチャンピオンに大きく貢献した車なのです。

目立たずともメイクスタイトル獲得に貢献した縁の下の力持ち、ベータクーペという存在を是非覚えておいて下さい。

 

ラリー・037

出典:http://alchetron.com/

ランチア・ラリー037 スペック
全長×全幅×全高(mm):3890×1850×1240
ホイールベース(mm):2440
車両重量(kg):960
エンジン仕様:直列4気筒DOHC スーパーチャージャー
排気量(cc):2111
最大出力:325ps/7000rpm
最大トルク:23kg-m/5000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:MR

サスペンション:前/後:ダブルウィッシュボーン

MRレイアウトを採用していたランチア・ベータ・モンテカルロをベースに作られた037は1982年にWRCにデビュー。

当時のWRCはグループBというカテゴリーで開催されており、規定された販売台数を満たしている車両であればどんな改造をしてもよいというレギュレーションとなっていました。

そのため、この037は外見こそベータ・モンテカルロの面影を残していますが、中身は全くの別物となっていたのです。

パイプフレームの使用や、排気量アップ、スーパーチャージャーの採用などにより、1トンを切るボディに300馬力オーバーのエンジンを搭載するというモンスターマシンとなっていました。

4WDが主流となっていたWRCにMRで挑んだ037は、1983年にMRレイアウト車両としては最後となるメイクスタイトルを獲得したのです。

 

デルタS4

出典:http://barbarossa.red/

ランチア・デルタS4 スペック
全長×全幅×全高(mm):3990×1880×1400
ホイールベース(mm):2440
車両重量(kg):890
エンジン仕様:直列4気筒DOHC スーパーチャージャー×ターボチャージャー
排気量(cc):1759
最大出力:456ps/8000rpm
最大トルク:46kg-m/5000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WDミッドシップ

サスペンション:前/後:ダブルウィッシュボーン

市販車とは異なる専用設計とランチア初となる4WDシステムを与えら、1985年に登場したデルタS4。

スーパーチャージャーとターボチャージャーで過給したエンジンで武装しており、最大で600馬力を叩き出していたと言われています。

900キロを切るボディにこのエンジンを搭載して4WDとなったS4は、とてつもない速さを見せつけますが、乗り手を選ぶ車となり、ラリーのステージとなる公道にはオーバーキャパとなってしまいました。

そのため、ドライバーとコ・ドライバーが亡くなるクラッシュも起こしています。

ランチア以外でもクラッシュが多発したグループBカテゴリーは危険という判断から、1987年からレギュレーションが変更となりました。

通算13戦中6勝という強さを見せたデルタS4ですが、メイクスタイトルは獲得できず、レギュレーションの変更により引退を余儀なくされ「無冠の帝王」となった悲運なマシンなのです。

 

デルタ HF インテグラーレ

出典:http://squadraracing.canalblog.com/

ランチア・デルタHF インテグラーレ スペック
全長×全幅×全高(mm):3900×1770×1360
ホイールベース(mm):2480
車両重量(kg):1320
エンジン仕様:直列4気筒DOHC ターボチャージャー
排気量(cc):1995
最大出力:295ps/7000rpm
最大トルク:43kg-m/4500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD

サスペンション:前/後:ダブルウィッシュボーン

1987年からグループBからグループA規定に変更されて開催されることとなったWRC。

グループBより改造規制が多いグループA規定に合わせて製作された車がデルタ HF インテグラーレです。

大きな改造ができないグループAカテゴリーで勝利を挙げるため、前後フェンダーのブリスター化や、エンジンのパワーアップなど、ランチアは必要に応じた改良を市販車に行っていきました。

その結果、1987年から1992年の6年間で、6度連続のワールドタイトルを獲得するという偉業を達成したのです。

インテグラーレはまさにランチア史上最強のマシンといえるのではないでしょうか。

 

チェーザレ・フィオリオという存在

出典:http://www.formulapassion.it/

日本では、フェラーリF1チームの監督という印象が強いかと思われるチェーザレ・フィオリオですが、若かりし頃にランチアでラリーに参戦しており、ランチアチームの監督ともして活躍をしていたのです。

ストラトスの製作時には、勝てる車にするための開発計画を立ち上げており、フェラーリからエンジンを獲得するために、エンツォ・フェラーリに直接交渉を行ったというエピソードがあります。

その後も、037やデルタS4、デルタ HFなどの開発計画を行い、ミキ・ビアシオンやヘンリー・トイボネンなどの実力のある選手の獲得と育成にも長けていました。

ランチアがWRC通算74勝やメイクスタイトル10回という金字塔を打ち立てることができたのは、フィオリオの活躍があったからこその物だったと言っても過言ではないでしょう。

 

まとめ

出典:http://erikwestrallying.tumblr.com

ランチア特集、いかがだったでしょうか?

最強と呼ばれた裏には、速いマシンとドライバー、そして的確な判断と指示ができる監督がいるという勝つために理想的な環境が整っていたのです。

WRCが激動の時代に最強と言われたランチアは、文字通りWRC史上最強と言えるのではないでしょうか。

 

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