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伝統のコークボトルデザインを捨て、世界に通用するリアルスポーツカーを目指したシボレー・コルベット(C5)。リトラクタブルヘッドライト最後のコルベットとしてマニアには大人気のコルベット”C5”モデルが、真のスポーツカーと呼ばれる所以をご紹介します。

コルベットC5 / 出典:https://www.favcars.com/
アメリカを代表するスポーツカー

初代コルベット/出典:https://www.favcars.com/
1953年、量産車初のFRPボディ形状で発売された初期型コルベットは、“アメリカを代表するスポーツカー”をコンセプトに開発されました。
コルベットという車名は、軍艦の一種で現代の高速護衛艦に値する『コルベット艦』が由来といわれていて、当時の時代背景やスポーツカー開発への理念が感じられます。
その中でも今回ご紹介するのは、コルベットでは5代目に当たる1997年に発売され2004年まで販売された通称“C5”モデルです。
コルベットの各モデルは、Cと数字の組み合わせの通称で呼ばれていますが、そのように呼ぶようになったのは、実はこの5代目モデルからなのです。
ゼネラルモーターズ社が、公式にC5という名称を使い始めたことがきっかけで、これ以降から従前モデルも含め、初代コルベットはC1、2代目がC2、同じくC3、C4、と通称により呼ばれる様になりました。
そんな5代目コルベットの特徴は“ロングノーズ・ショートデッキ”というアメリカンFRスポーツ車の基本デザインを承継しつつ、これまでよりも全体的に外観は柔らかな曲面を多用している点です。
ホイールベースが先代モデルより10mm以上長くなっていることも相まって、ゆったりとしたデザインとなり大人しい印象を受けます。
そのため発売当初は、ダイナミックに盛り上がったフェンダーや絞り込まれた様にくびれたコクピット形状(コークボトルデザイン)を期待していた従来のアメ車思考が強いコルベットファンを少し落胆させてしまいました。
しかし、普遍的な外観とロングホイールベースのコルベットC5の出で立ちには“世界に通用するスポーツカーを目指す為”の様々な理由が込められているのです。
世界に通用するスポーツカーをめざして

コルベットC5の空力ボディ / 出典:https://www.favcars.com/
それでは、国際的なリアルスポーツカーを目指して開発されたコルベットC5のデザインと、エクステリアを生んだ理由を順に紐解いて行きましょう。
発売当初は賛否両論であったコルベットC5の曲面を多用したおとなしめなデザインは、開発チームが風洞実験を重ねて空気抵抗を減らすために生み出された形状でした。
このボディ形状により、空気抵抗係数Cd値0.29という当時の日本製スポーツカーFD3S型RX-7と同等の驚くべき数値を記録しています。
さらに、従前のC4モデルよりホイールベースが10mm以上長くなっている理由は、歴代コルベットで初めて『トランスアクスル』を採用したからです。
トランスアクスル方式とは、通常はフロントエンジンに直結されているトランスミッションを切り離して、フロントにエンジン、リアの車軸近くに変速機を配置するという、重量バランス的には理想的な方式なのです。
このことによりハイパワー車特有のトラクション不足を解消し、前後重量配分の適正化を図ることが可能となり、コルベットC5では”51:49″というほぼ理想的な数値に仕上がっています。
また、外観にとどまらず、中身のほうにも目を向けると、剛性のあるアンダーボディ構造の『フルレングスヘリメーターフレーム』を採用することによりボディの低重心化を図り、操縦性の向上や走行性能が格段に向上しました。
新開発されたコルベットC5用LS1エンジンは、鋳鉄製シリンダーライナー付きのオールアルミ製エンジンブロックを採用。
5700cc、V8 OHVのエンジンは最高出力350ps、最大トルクは驚きの48.3kgを発揮しています。
そんな伝統のOHVエンジンに空力ボディと軽量化されたフレーム形状ボディのコルベットC5は、トータルバランスの向上を図り、モータースポーツ分野での活躍が期待されて開発が行われたのです。
【1997年式 コルベットC5 クーペ スペック】
エンジン形式 LS1 OHV V8 5665cc
最高出力 350ps/5600rpm | 最大トルク48.3kgm/4400rpm
トランスミッション 6速MT・4速AT
全長4564mm |全幅1869mm| 全高1212mm|ホイールベース2654mm|車両重量1465kg
タイヤサイズ F ・P245/45ZR17 R・ P275/40ZR18
ワークスマシン コルベットC5-R

コルベットC5-R / 出典:https://www.favcars.com/
1998年、C5コルベットのワークスレーシングカー『C5-R』が発表されました。
C5-Rは、ボディのプラットフォーム、エンジンユニットなど主要部分を市販モデルから流用してレースマシンとしてチューニングが施された車です。
また、驚くべきことはオルタネーター、ウォーターポンプなどのエンジン補機類もノーマルパーツで構成されていて、アッパーアーム、ロワアームなどの脚回り、さらにはステアリングラック、パワステポンプも全て市販車用を使用していることです。
これは、レース参戦を市販モデルにフィードバックすることが企業理念の、ゼネラルモータース社の考え方から引き継がれている製作方法。
そして2000年、C5-Rはル・マン24時間レースに参戦。
FIA・GTレースGTSクラスに初挑戦ながら、クラス3位、4位に入賞して高い戦闘能力をアピールしました。
また、この年のアメリカン・ルマン・シリーズ(AMSL)でも活躍し、第7戦では見事“クラス優勝”。
翌2001年には、デイトナ24時間レースでは総合優勝およびクラス1-2フィニッシュを達成し、同じ年のル・マン24時間レースにおいても待望のクラス1-2フィニッシュを成し遂げ、同年、アメリカン・ルマン・シリーズ(AMSL)でも念願のタイトルを獲得します。
2002年、セブリング12時間レースで1-4位を独占して、ル・マン24時間耐久でもGTSクラス1-2フィニッシュを達成。
さらにアメリカン・ルマン・シリーズ(AMSL)では、9勝する圧倒的な速さをみせました。
打倒ポルシェ911を掲げて市販車ベースモデルでレース参戦を果たしたコルベットC5モデルは、期待以上のモータースポーツ分野での活躍を見せたのです。
まとめ

コルベットC5 / 出典:https://www.favcars.com/
今回ご紹介したコルベットC5モデルの一つ前の世代にあたるコルベットC4には、『ZR-1』というハイパフォーマンスモデルが存在していました。
そんなZR-1のエンジンは、1990年当時ゼネラルモータース社の傘下にあったイギリスの名門ロータスが設計。
コルベット史上唯一の“DOHC”オールアルミ製エンジンは、マーキュリーマリン社が生産を担当し、5700ccノーマルアスピレーションながら405psを発生。
ミッションにはZF社製6速MTを搭載して、リアタイヤサイズは315/35ZR17を装着するというモンスターマシンでした。

四代目コルベットZR-1 / Photo by Eddy Clio
こうしてハイスペックな先代ZR-1と比べてみると、コルベットの歴史を振り返る上でどうしても影に隠れがちなC5モデル。
しかし、空力特性の見直しや前後重量配分の適正化の他にも、C4モデルより部品点数を30%以上減らすことにより軽量化を図るなど、開発チームの努力による”トータルバランスの向上”を果たしてして大幅な性能アップに成功しています。
このことはC5-Rが、モータースポーツにおいて輝かしい成績を残してきたことにより立証されており、4代目ZR-1がロータス、マーキュリーマリン、ZFなどの技術提供を受けてスペック上の世界ナンバーワンを目指したモデルであれば、コルベットC5はゼネラルモータース社が職人的なマシン造りを重ねて完成させた純粋なスポーツカーといえるのではないのでしょうか。
コルベットがアメリカを代表するスポーツカーから世界に通用するスポーツカーへ変貌をとげたのは、間違いなく”C5モデル”からだったのです。
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