レースWEEKにパドックを歩いていると、ライダーやドライバー、そのヘルパーなどがレーシングギアを抱えてピットとは違う方向に運んでいる姿を多々見かけます。彼らの行き先は、各レーシングギアのレーシングサービス。レースに使用するヘルメットやつなぎ、グローブなどのメンテナンスに向かっているのです。そんなレースには欠かせないレーシングサービスの仕事に、先月末鈴鹿サーキットで行われた”鈴鹿8耐”で密着してきました。

 

©ChikaSakikawa

 

レーシングサービスって?

 

©Kabuto

 

大きなレースのパドックではチームのテント以外に、タイヤメーカーやサスペンションメーカー、ヘルメットメーカーやツナギメーカーなど様々なメーカーの看板が掲げられたテントや小部屋などを数多く見かけると思います。

それがレーシングサービスで、そこでは各メーカーがサポートしているチームやライダーがレースに集中できるように、ヘルメットやツナギの修理やメンテナンスが行われているのです。

 

Kabuto レーシングサービスに密着

搬入日

 

©ChikaSakikawa

 

製品のメンテナンスや修理と聞いて、タイヤやサスペンションなどマシンに関するパーツならわかるけど、ヘルメットなどのレーシングギアは、クラッシュでもしない限り必要ないのでは?と不思議に思った方もいるかもしれません。

そこで、鈴鹿8耐でレーシングサービスを行っていたヘルメットメーカー『Kabuto』にご協力頂いて、レーシングサービスの仕事を見せてもらう事に。

鈴鹿8耐でのKabutoレーシングサービスは、レースWEEK前日である7月25日の搬入からサーキットに入りました。

 

©ChikaSakikawa

 

突然の雨など天候の細かい変化にもすぐに対応できるよう、雨用パーツなどレースWEEKを通していつでもヘルメットを使用できるようにするための備品も多数持ち込まれます。

 

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そして作業スペースの配置など、レーシングサービスの受け入れ準備が整ったら、1日目の業務は終了!と思いきや、まだ走行も始まっていない搬入日から、サポートライダーのヘルメットが届きました。

 

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「まだ使ってないのに、いったい何のメンテナンス?」と思うかもしれませんが、8耐はEWC(世界耐久選手権)の1戦なので、スポット参戦で出場しているライダーのほとんどが、普段はスプリントレースを走っています。

しかし、鈴鹿8耐は8時間の耐久レース。1チーム2名~3名のライダーが交代で真夏の8時間を走り切るので、レース中の水分補給は必須。

 

キャメルバック / ©ChikaSakikawa

 

そこで登場するのが、キャメルバック。

正式名称は、アンチドートリザーバートと言うそうなのですが、この水色の袋状の水筒をレーシングツナギの背中にあるこぶの内部に装着し、そこから水分補給をする為のホースをつなげるようにヘルメット側にも加工が必要となるのです。

 

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ちなみに、キャメルバックが装着されていないライダーの背中からは、チューブは出ていません。

 

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レースWEEK

 

©ChikaSakikawa

 

レースWEEKに入ると、走行が終わるごとに代わる代わるサポートライダーや、そのヘルパーがレーシングサービスにヘルメットを持ち込みます。

 

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そして天候やフィーリングにより、次の走行に備えての要望を伝えるのです。

ちなみにフリープラクティスなど、走行後に余裕のある時はライダー本人が持ってくる事もありますが、8耐決勝中は熱中症ギリギリの極限状態で走っている事と、次のスティントに備える必要がある事から、ほとんどの場合はヘルパーが持参するそうで、その要望を伝えるヘルパーの責任は重大!

 

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要望を聞いたらメモを貼り付け、レーシングサービスでお預かり。

 

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作業工程に入ったヘルメットはまず、清掃&チェックチームによりシールドが外されます。

そして丁寧にシールドの傷や曇り、汚れ方などがチェックされ、問題が無ければクリーニングへ。

 

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その後、受付表に書いてある要望に応じて、ティアオフシールドを貼ったりするそうです。

ちなみにティアオフシールドというのは、バイクレースを見ているとスタート後にライダーがシールドから薄い透明のシートを外す光景を見る事があると思いますが、その薄いシートの事で、走行中に虫やタイヤカスがシールドに付着する事を防ぐ使い捨てのフィルムのようなもの。

 

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そしてヘルメット本体は真夏の長時間走行ということもあり、絞れるほどの汗で内装がずぶぬれになっているので、乾燥コーナーへ。

 

©ChikaSakikawa

 

そして乾燥が終わると、各部のチェックとクリーニングを経て、組み立てチームの元で再びシールドが付けられ、最終チェック!

ライダーのリクエストに応じてフィッティングを再調整するなど、次の走行に備えるのです。

 

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8耐レースWEEK中のヘルメットへの要望ってどんなもの?

 

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ヘルメットのサービスに来る要望は、ライダーによって様々ですが、大きな変更は天候によるものだそう。

例えば、曇り空だと薄い色のシールドに、雨だとレイン用シールドに変更するのが基本です。

また、鈴鹿8耐のようにナイトセッションがある場合は、最後のスティントを走る頃にはかなりの西日となっており、その後にナイトセッションが続くので、クリアシールドにスモークのティアオフシールドを貼るなどの対応も!!

そして今回の8耐決勝中は台風の影響により、晴天、曇り、雨を繰り返す予想困難なコンディション。

そんな時は全ての天候や使用条件を考えた、仕様違いのヘルメットを2つ、3つ用意するライダーもいるそうです。

 

レーシングサービスという仕事

 

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各ライダーのレース結果を左右すると言っても過言ではないレーシングサービス。

Kabutoでそんなレーシングサービスの仕事を長年担当してきた南さんに、そのやりがいを聞いてみました。

南:もちろんサポートしている選手が無事にレースを終えてくれるのが一番なのですが、「クラッシュしたけど大丈夫でした!守ってくれてありがとう。」と声をかけてもらえた時は、やっててよかったと思いますね。

あとは、今では当たり前になっている曇り止めシールドとか、内装やシールドが簡単に脱着できるような仕組みとか、これらは全てレーシングサービスで選手達にもらった意見からできたもので、そういった現場の声を上手く製品にフィードバックできた時にやりがいを感じます!

 

まとめ

 

©ChikaSakikawa

 

今年の8耐で、Kabutoがサポートしていたライダーは全27名!

走行ごとに、そのヘルメットがレーシングサービスを出入りするので、今回のレースWEEKで対応した数は約250個にのぼるそう。

それを約10人のメンバーで作業にあたるので、決勝中は大忙し。

各ライダーの要望に間違う事なくキッチリ応えられるよう、独自のスケジュール表や作業分担を工夫して、レースWEEKを乗り切りっていました。

 

©ChikaSakikawa

 

チームやライダー達が安心してレースを戦う為には、実はこうしたレーシングサービスのサポートや頑張りがあるのです。

 

©ChikaSakikawa

 

レース観戦の際は是非、好きなライダーやチームをサポートしているレーシングサービスにも注目してみてくださいね!!

きっと、選手の片隅でサポートスタッフが頑張っている姿を見つけられるハズです!

 

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