様々な新車に試乗したり自動車の記事を書き続け、古今東西のクルマを知り尽くした自動車雑誌の編集長がマイカーを選ぶ決め手は、いったいどんなポイントなのでしょうか?また、数あるクルマの中からなぜこの1台を選んだのか。そんな疑問を紐解く為の連載第3弾!今回はスポーツドライビングを楽しむ人の為の月刊誌『REVSPEED(レブスピード )』の塚本 剛哲 編集長の愛車に迫ります!
CONTENTS
塚本編集長の簡単な経歴
名前:塚本 剛哲(ツカモト タケノリ)
1968年 佐賀県生まれ。
高校卒業後、都内の夜間部のある大学で勉学に励みながら、日中は中古車雑誌の業務に携わる。
3年間の勤務を経て、フリーランスのライターとして活動を開始。
その後、編集プロダクションや出版社での勤務を経て、REVSPEED誌のある三栄書房へ。
2005年から副編集長として同誌に携わるようになり、2007年から編集長に就任。
2014年から一度、別誌の編集長となるも、2016年からまたREVSPEED誌の編集長に戻り、現在に至る。
19歳のころから自動車雑誌の編集に携わっているというツカモトさんは、業界歴30年以上の敏腕編集者です!
しかし、意外にも当初は全くクルマに興味が無かったらしく「スカイラインも知らないし、FFとFRの違いも分からないくらいクルマに興味がありませんでした。」というから驚き。
「多分、本をつくることには興味があったんだろうね〜。」と語るツカモトさんは、仕事でクルマに触れることで、次第にクルマへの興味が沸いてきたそうです。
そしてフリーのライターとして活躍し始めた頃には、チューニング雑誌の仕事ばかりだったそう。
こうして外堀を埋められるかのように、今度はレースに興味を持ち始めたツカモトさんは、1993年に当時大流行していたワンメイクレース『ミラージュカップ』でレース活動を開始します。
その後もEG6シビックでN1耐久シリーズ(現在のスーパー耐久シリーズ)にスポット参戦したり、新たにスタートしたアルテッツァレースにも参戦するなど、90年代から精力的にレース活動を行っていきました。
塚本編集長の愛車遍歴
S13シルビア(Q’s):19歳の頃に初めて自分で購入した愛車。後にK’sに乗り換え。
S14シルビア:ドリフト練習車
日産 スカイラインGT-R(R32)
BMW 635CSiA(E24)
VW ゴルフⅢ
初代 VWポロ
トヨタ・アルテッツァ:新車で購入。この頃アルテッツァレースにスポット参戦していた。
アウディ A6(C4)
トヨタ・ソアラ(Z20):
一世を風靡したスペシャリティカーに一度乗ってみたかったので。 メルセデスベンツ E320(W210)
ベルセデスベンツ E500(W211):一度V8に乗ってみたくて購入。
ポルシェ・ケイマン(987型)
マツダ RX-7(FD3S):10年以上所有した愛車。チューニングし尽くして様々なサーキットを走りまくった。
BMW M3(E36):6年前に購入し、現在も所有。詳しくは後述!
レクサス IS200 Fスポーツ:現在のメインカー。通勤や取材の移動として。
トヨタ・エスティマ:現在も所有。家族など大人数での移動の際などに活躍。
マツダ・ロードスター(ND5RC NR-Aパーティレース仕様):現在の練習車。
現在はレクサス、ロードスター、エスティマ、M3の4台を所有するツカモトさんですが、様々な愛車の話を伺う中で特に印象的だったのが「常に左ハンドル/右ハンドルのMT車を所有していたい」ということでした。
若い頃は「いつかフォーミュラに乗る機会があるかも……!」と思って左ハンドルのMT車に乗り始めたのですが、そんなご縁はありませんでしたね!(笑)。
しかし、左ハンドルと右ハンドルだとやはり運転する時の感覚が狂っちゃうことがあるので、常にどちらにも自分を慣らしておきたいという想いから、なるべく左右両方のMT車を所有するように心がけています。
中でも忘れられない1台はありますか?
10年も所有し続けたFD3Sは、10年間の中でコツコツとクルマを仕上げ、スポーツ走行を楽しんだ1台だそう。
しかし、過去に乗った愛車の中で未だに忘れられない1台を聞いてみたところ、その答えはFDではありませんでした。
そうですね。やはりR32GT-Rとケイマンは「もう一度欲しいな。」と思います。
特にケイマンは全てが良いんですよね。クルマとしての完成度が高いんです。
GT-Rは加速フィールとコクピットのムードですかね。
10年乗ったFD3Sは手を加えまくりました。
ブーストアップのライトチューンでしたが、あれこれお金がかかりました。その分いいクルマになったのですが、この頃の設計の限界もあって……もう一度乗りたいか?と言われたら、別に乗りたくはないです(笑)。
「十分に満足しました」という感じなんですよ。
ズバリ、愛車の決め手は?
ツカモトさんとM3の出会いは、1993年頃に遡ります。
この頃にレース活動を開始したツカモトさんでしたが、それより少し前にBMWがE36型の3シリーズをデビューさせます。
サーキットに乗ってくる人がいて、「カッコいいな〜。」と思ってたんですよね。
そしたらM3もデビューして……、当然気になりますよね。
M3のいい所は、長く乗ることを考えられている点なんです。
ブッシュなんかがヘタっても、ボディはそうそうヘタらないので、お金をかければキチッと乗り続けられる所と、あとは2度と生まれてくることのないサイズ感。
まだこの頃はセダンが『318i』はギリギリ5ナンバーサイズだったんですよ。
ただ、クーペボディは3ナンバーなんですけど、要するにちょうど良い大きさで、そこに伝統の6気筒エンジンが積まれているわけです。
以前、635CSiにも乗っていたこともあって、BMWの6気筒エンジンが好きだったことも購入の大きな決め手ですね!
レースを始めたばかりの若い頃に憧れだったM3を6年前に手に入れたツカモトさんは、FD3Sのメンテナンスを任せていたショップで偶然このクルマに出会い、そのオーナーに譲って頂いたそうです。
それより前に、セントラルサーキットで開催されているユーロカップの耐久レースなどでE36M3には乗る機会があり、欲しいという気持ちは余計に高まっていました。
そして若い頃の第一印象通り、エンジンやミッションのフィールが心地よいドライバーズカーだったと購入当時を振り返りますが、唯一予想と違った点は、フロントヘビーで意外にも直線番長だという所。
そんなE36型M3の弱点をツカモトさんはどのように克服させたのでしょうか?
ツカモトM3のカスタムポイントをチェック!
エンジンはECUチューンのみ。
基本的に足回りのみのライトチューンだというツカモトさんのM3ですが、そんなライトチューンだからこそ、選んだパーツはこだわり抜いたアイテムばかり。
例えばホイールは、アドバンレーシングのRSⅡをチョイス。サイズはフロント 17×8.5J インセット35、リアは17×9.0J インセット35。
実はフロントヘビーだという同車について、ツカモトさんはタイヤサイズの選択にとても悩んだそう。
フロントタイヤのサイズを大きくしてみたりしたのですが、ステアリングを切り込んだ際にタイヤが大回りしてるような感覚で、いわゆるアンダーステア傾向になってしまったんですよね。
17インチのフロント225ってサイズがもうイマドキあまり無いんですけど、色々と組み合わせを試した結果、結局前後とも純正サイズに戻って来ました。
サスペンションはアクレのスピリットをチョイス。
シートはややコンフォータブルなBRIDEの『edirb110』をチョイスしたのですが、シート高が少し高い事が気になり、シートレールを加工してアイポイントを下げました。
こちらも、こだわりポイントのひとつです。
また、メーターパネルの前にはDefiの『ADVANCE ZD』を設置し、油温や水温を管理していました。
RB26 vs シルキーシックス!?
R32GT-RとBMW。
どちらにも乗っていた経験がある直6好きのツカモトさんに、この2つのクルマの良し悪しについて聞いてみました。
う〜ん、難しいですね。
確かにBMWはシルキーシックスと言われますけど、実はRB26もタービン選択やチューニングによっては滑らかですよね。
いやぁ〜……本当に甲乙つけがたいのですが、強いて挙げるのであればBMWのエンジンよりはRB26の方がチューニングの余地が残っているというか、発展性がありますね。
ボクはどちらも好きですが、チューニングが好きな方ならRB26が良いって意見もあるんじゃないでしょうか。
REVSPEEDってどんな本ですか?
1990年に創刊され、もうすぐ創刊から30年を迎えようとしているレブスピード誌は毎月26日発売!
スポーツドライビングを楽しむ為のドライビングテクニックや、あくまで合法にスポーツ走行を楽しむ為のチューニングを紹介する雑誌として、クルマ好きから広く知られている同誌ですが、創刊当初はスポーティーカーのインプレッション本だったのだとか。
付録に毎号DVDが付いてくることでもお馴染みです。
さらに日本全国のサーキットや走行会情報も満載で、クルマで走ることが大好きな方が、クルマで走ることが大好きな人の為に作っている濃厚すぎる内容となっています。
まとめ
最後にM3が欲しいと思っている方へのアドバイスと、改めてM3について振り返って頂きました。
まぁ、悩みは尽きないクルマですよ(笑)。
この個体は燃料計が何回修理しても壊れちゃって……。
私のクルマは燃料漏れとパワステオイル漏れに悩まされました。
コンディションが良いクルマは高く、そうでないクルマは安い。
当たり前ですけど、安いのはあとでお金がかかります(笑)。
直す費用もある程度覚悟して買うしかないと思います。
私の場合は腐れ縁というか、なかなか手放そうにも手放せない状況にありまして、メンテを任せているショップもこの手のクルマが大好きで「売る」と言うと悲しまれてしまうんですよ(笑)。
更にそれだけじゃなくて、実はもう一台部品取りに不動車のまったく同年式同色のE36型M3があるという事情もあります。
あと、フロントヘビーと言いましたが、別に街乗り領域では全然気にならないです。限界領域ではそう感じるというだけで。
もっとも、サーキットはロードスターがありますから、M3はストリートで今後は楽しみたいと思います。
この業界に飛び込み、30歳から様々な雑誌の編集長を歴任しているツカモトさん。
どこよりもドライビングテクニックに真剣に向き合う雑誌の編集長が、実は元々クルマ好きではなかったという事実に驚いたのは筆者だけではないはず。
クルマを好きになる時期に遅いも早いも関係はないのだと、自動車雑誌の編集長が自ら証明しているからこそ、REVSPEEDの初心者向けドラテク解説には説得力があるんだと、心から納得させられる取材となりました。
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