R32 GT-RといえばRB26DETTエンジンのイメージが強いと思いますが、ATTESA E-TSを忘れてはいけません。このATTESA E-TSというシステムは、どういうシステムでどこが優れていたのでしょうか。
ATTESA E-TSの基本構造
ATTESA E-TSは、Advanced Total Traction Engineering System for All Electronic – Torque Splitの頭文字をとってつけられた略称で、日本語では「電子制御トルクスプリット四輪駆動システム」です。
ベースは後輪駆動(FR)で、ATTESA E-TSが機能すると後輪のタイヤのキャパシティーを超えた分のトラクションを前輪へ配分します。
前輪 : 後輪 = 0 :100 ~ 50 : 50の範囲で駆動配分を行うのです。
前輪へ駆動力が伝わる仕組みを説明すると、トランスファーと呼ばれる機構の内部に湿式多板クラッチが入っていて、そのクラッチが油圧ユニットによって押し付けられ、その押し付け圧の程度で前輪への駆動力が決定されるという流れ。
油圧ユニットへの指示やブレーキアクチュエーターへの制御などを行うのがETSコントロールユニット、そしてそのETSコントロールユニットへ信号を送るのが、前後・横方向のGを感知するGセンサーと車輪回転センサーになります。
ATTESA E-TSの何が優れているのか
グループAでR32 GT-Rが活躍していたこともあり、ATTESA E-TSが優れた四輪駆動システムであったことは言うまでもありません。
ただ、いったい何が優れていたのでしょうか。
その答えは、路面へ無駄なくトラクションを伝えることができるということに尽きると考えられます。
R32 GT-Rに搭載された新開発のRB26DETTエンジンには、ツインターボが搭載されており、最高出力280馬力に最大トルク36.0kgfと、従来モデルと比べてスペックが高くなりました。
しかし、ただ高スペックなエンジンからパワーを生み出すだけでは、十分なトラクションを伝えることができず、すぐにスピンするだけです。
つまりATTESA E-TSは、RB26DETTのエンジンパワーをコントロールしやすく、かつ無駄にすることなく伝えてトラクションを稼ぐことに貢献し、コーナーリングスピードを高めたということになります。
また、サーキットのような舗装路においてATTESA E-TSは、アクセルワークによる後輪のスライドコントロールとアンダーステアが出ないような操縦を可能とする役割を果たすことも。
ステアリングを切ってもアンダーが出ず、リアのスライドをアクセルワークでコントロールできるなんて、まさに非の打ち所がない四輪駆動システムではないでしょうか。
まとめ
ATTESA E-TSが優れた駆動システムであることは明らかです。
その凄さは、高スペックなエンジンパワーから生み出されたトラクションを、無駄なく効率的に路面へ伝えることができ、なおかつアクセルワークでコントロールできたというだけで、説明は十分でしょう。
ATTESA E-TSは、エンジンの性能を十二分に活かすことを可能とするシステムだったのです。
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