7月28~31日に行われた2016“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース。39回目の決勝レースを大いに湧かせたのが、ヨシムラ・スズキ・シェル・アドバンスだった。予選ではヤマハに対して0.1秒差に迫る2番手。決勝でも手に汗握るバトルを何度も見せ3位表彰台を獲得。68台中の3位は立派な結果だ。しかし、レース後の表彰式になると、ライダーたちは揃って「悔しい」の一言。やはり彼らが目指すのは頂点だった。

Photo by Tomohiro Yoshita

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最強の助っ人「芳賀紀行」が加入

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第1回大会の優勝者であるヨシムラ。以来、毎年鈴鹿8耐に挑戦を続け、今年も「打倒ワークス」を合言葉にやってきた。

ライダーズラインナップは全日本で活躍する津田拓也を中心とする布陣だったが、例年にない大きな動きがあったのは、世界を舞台に輝かしい実績を残し、鈴鹿8耐でも3年連続3位表彰台の立役者である芳賀紀行の加入だった。

以前までは他メーカーで参戦していた芳賀を、再び8耐の場へ呼んだのが同じスズキユーザーの加賀山就臣。今ではすっかりチームカガヤマの一員的存在だったが、今年は一転してヨシムラへ加入した。

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さらに合同テストではヨシムラ伝統の白・赤・黒のヘルメットで登場。

トークショーでは「挨拶代わりですね。やはり仁義を尽くさないと」と、このヘルメットにした理由を明かしていた。

チームカガヤマ時代では1スティントのみの走行で終わることが多かったが、今年はテストかしっかり走り込みチームと情報を共有。彼の経験と津田が持つ一発の速さ。そしてBSBチャンピオンのジョシュ・ブルックスの安定感。この三つが揃えば名門ヨシムラもトップ浮上の可能性も十分にあった。

津田が魅せた、鈴鹿が興奮した…ヤマハに迫ったトップ10トライアル

Photo by Tomohiro Yoshita

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30日(土)のトップ10トライアル。ここまでの流れを見ると十中八九ヤマハ・ファクトリーがポールポジションだろうという場内の雰囲気を一掃させたのが、ヨシムラだった。

直前にポル・エスパルガロ(ヤマハ・ファクトリー)が2分6秒258を記録。
それまでの2番手に対し1秒近い差を築いた。

「やっぱりな…」という空気が漂う中、エスパルガロがアタックを終えた約1分半後には、場内はとんでもないどよめきに変わる。

ヨシムラのエース、津田拓也がセクター1で0.075秒更新したのだ。

その勢いでダンロップコーナー、デグナーカーブを抜け、2つ目の区間タイムを計る立体交差を抜けると、その差は0.158秒に広がり、絶対王者のヤマハを打ち砕くのではないかという期待が高まっていった。

しかし、後半のセクター3では若干の遅れをとり、最終のセクター4も詰め切ることができず、トータルタイムは2分6秒405。わずか0.147秒届かず2番手に終わった。

それでも「ヨシムラ・スズキ、ここにあり!」という存在感を場内にいたファンや関係者に見せつける素晴らしいアタックだった。

 

最後の最後まで一歩の引かないバトルを展開

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31日の決勝レース。昨年は途中で転倒を喫してしまい上位争いから脱落してしまったが、今年は序盤から3位争いに加わり、優勝を目指した。

結果的に、ヤマハ・ファクトリーを逃す結果となってしまったが、TeamGREENと真っ向勝負は今年のハイライトにもなるほど白熱。

レース中盤から常に接近した争いを展開し、両チームのエースライダーのパートではオーバーテイクして順位を入れ替えながら夕暮れの時間帯へ。

特にスタンドのファンを沸かせたのが、140周目付近だった。

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それまではヨシムラがリード。

芳賀が必死にリードを守ろうと周回していたが、今年はTeamGREENの一員として8耐に帰ってきたハスラムが2分09秒台に迫るペースで猛追。ついに背後に追いつき、シケインでインを突いて勝負に出る。

しかし、ここはバックマーカーの影響で行き場を失い失速。その隙をついて芳賀が冷静にポジションを取り戻した。

それでもハスラムは諦めず141周目のシケインでバックマーカーをうまく使って攻略。
これで勝負ありかと思われたが、芳賀も必死で食らいつき翌周の1コーナーでインに飛び込み再び前へ。

ところが目の前に別のバックマーカーがいて引っかかってしまったところを、2コーナーアウトからハスラムが抜き返した。その後もしばらくは2台とも超接近戦のバトルを展開。お互い一歩も引かない気迫のこもった走りで、観客を沸かせた。

 

粘り強く走り3位表彰台、しかしライダーのコメントは…

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こうしたバトルの末、最後まで走りきったヨシムラ・スズキ。

今年は大きなミスもなくつかんだ表彰台だったが、いざマイクを向けられると、津田は

「悔しいです。やっぱり応援してくれていたファンの皆さんのためにも絶対勝ちたいという気持ちで挑んでいたので、3位でも悔しいです。来年は…勝ちます!!」

と高々に勝利宣言。それだけ、やはり3位という結果は満足がいかなかったものなんだろう。

また素晴らしいバトルをみせた芳賀も第一声は、

「応援してくれたファンの皆さん、すいませんでした」と始めた。

その理由については「最後、僕のスティントで(TeamGREENに対して)20秒も離されてしまって……ダメですね」と反省モード。

しかし、勝利への思いは大きく「来年はもっと腕を磨いてきます。来年もしチャンスがあったら、一番てっぺんに登れるようにがんばります」と締めくくった。

 

まとめ

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レースが終わって数日。ヨシムラの公式サイトを訪問すると、こんなメッセージが。

「Thank you for the warm sports. Our race for 2017 Suzuka 8H has been already started.(あたたかい声援をありがとうございました。我々の戦いは、すでに2017年の鈴鹿8耐に向け動き出しています)」

鈴鹿8耐にはなくてはならない存在ではあるが、彼らの目的は「ただ参戦すること」ではなく「勝つこと」。今年はその目標がチーム全体で、いかに明確になっているのかを感じることができたレースだった。

結果的には負けだったかもしれないが、前述でも触れたとおり、トップ10トライアルで津田が魅せた気迫のライディング。決勝で芳賀が魅せた一歩も引かない勝利への思い。

それは、間違いなく…鈴鹿8耐が40周年を迎える2017年大会への、布石となるだろう。