80年代後半から90年代、高校生の足に、ミニバイクレースに、峠のローリング族になんでもござれで大人気だったフルサイズ50ccのオートバイ。高性能の2st50ccエンジンはサーキットや峠で遺憾なくその能力を発揮し、フルサイズの車体は、通勤・通学・普段使いにと、使い道の広さが大きな魅力でした。そして2st全盛時代を支えた、僕らの為の僕らのバイク。手軽で便利、そして速さも申し分なし!そんなフルサイズ50ccをご紹介します。
掲載日:2019/04/02
CONTENTS
高性能フルサイズスポーツ!NS50Fエアロ NS50F
1987年、スポーツモデルが人気を博した背景から、MBX50の後継機として作られたNS50F。
CBR400fourをイメージし、当時流行りであったハーフカウルを装着したデザインで大人気となりました。
初期型は、ほぼMBXにカウルを付けたものでしたが、1988年からの後期型はエンジンがNSR50と統一され、戦闘力もアップ!
後期モデルは一次バランサーにより振動を軽減され、より乗りやすく、長時間乗っても疲れにくいなどの改良がなされました。
そして1989年にマイナーチェンジ。NS50FエアロからNS50Fに車名が変更され、ロスマンズカラーも限定販売。
1995年に販売は中止されましたが、NS50FをベースにHRCが受注販売するミニバイクレースの専用車両NS50Rは2008年まで販売されおり、クオリティの高さがうかがえます。
エンジンがNSR50と同じでフルサイズと言う事でとても人気があり、NSR50と人気を二分する車両となったこのモデルは、特に通学や通勤と兼用で峠に行くとういう、当時の若者のライフスタイルにもマッチした本当に楽しい車両でした。
フルサイズ50ccのスポーツモデルにメットイン!?NS-1
1991年NS50Fと平行する形で発売されたNS-1。
エンジンはNS50Fと同じですが、最大の特徴はなんといっても、フルカウルボディーなのにガソリンタンクをシート下に配置し、通常ガソリンタンクになる部分がメットインになっている事でした。
その事により、当然荷物が入る、ヘルメットを収納できる、オートバイでちょっとしたお買い物にも行けてしまうという利便性の高いモデルとなりました。
ただ、コスト削減の為、フロントフォークのスライドメタルを省略されています。
その後、1995年2月にマイナーチェンジされた折、RVFをイメージしたデュアルヘッドライトに変更され、インテークチャンバーの装備やDC-CDIへの変更も行われました。
また、レプリカブームが終了した後も、その汎用性の高さやスタイリングの良さから人気は衰えず、生産は継続され1999年の排ガス規制の実施まで続いていました。
フロントフォークのスライドメタルがない事での足回りの問題点や、メットインボディーであることから、レースシーンではNS50Fに押され実績は少ないですが、純正・社外ともにアフターパーツが充実しており、様々なカスタムを楽しめる街中を乗って楽しい車両です。
レーサーと共に開発されたTZR50・TZR50R
1990年RZ50の後継機として、レーサーTZ50(3XM)と共に開発されたのがTZR50(3TU)です。
純粋な50ccオンロードレーサーが開発されるほど、ミニバイクレースも過熱している時代の中、TZ50と保安部品の有無以外はほぼ同一車両という本格的なフルサイズ50ccレーサーレプリカとして発売されました。
1992年にマイナーチェンジされ、点火時期の変更などにより中速域のパワーを上げ、リアサスも高性能化、ウインカーがプッシュキャンセル式になっています。そして、フレームが黒になっていることも特徴です。
そして、1993年にはTZR50R(4EU)へとモデルチェンジされました。
なんと、オフロードレーサーYZ80ベースのクランクケースリードバルブエンジンを採用するという力の入れようで、フレームも補強が入り、セルスターター付となったのです。
また、1994年にはTZM50R(4KJ)が開発され、それと同時にシリンダーが変更。キャブレターも大径化され18パイとなり、さらなる高性能化が図られました。
その後、レーサーレプリカブームが去りネイキッドブームが訪れる中、再び1998年にRZへとモデルチェンジし、生産が終了となります。
50ccフルサイズの純粋なレーサーレプリカという、この時代ならではの特別な車両で、モデルチェンジのたびに高性能化されているのは、驚嘆とともに所有欲を掻きたててくれる一台ではないでしょうか。
レーサーレプリカの終焉と共にネイキッド化された2ストフルサイズスポーツ・RZ50
1982年に2ストローク水冷エンジンという最新スペックをを持って発売されたRZ50。
一旦はTZR50に引き継がれ生産を終了しましたが、レーサーレプリカの終焉と共に1998年に復活した珍しい車両です。
名前こそRZ50と同じですが、1998年にエンジン・フレームなどが一新されています。
1980年代のモデルは最新スポーツモデルのイメージで作られていましたが、1998年以降のモデルは60~70年のレーサーをイメージさせるスポークホイールにロングタンク、短いシートカウルと言うカフェレーサースタイルでした。
国産最後の2ストロークスポーツとして販売されていましたが、2007年の排ガス規制により生産終了となり、2ストロークのオートバイの歴史に最後の幕が下ろされたのです。
様々な変遷歴をたどる、アプリリアRS50
アプリリアの特徴は、シャーシメーカーとしてレーサーを創っているだけあり、フレームがとても贅沢にできている事です。
そして、とにかく美しいフレーム。
国内産の50ccはやはり価格の問題からどうしても鉄フレームで安価な創りになっていますが、アプリリアはどの車両をとってもシャーシの創りに贅沢さが見えます。
レーサーそのもののように磨き抜かれた(年式・排気量によって異なる)アルミフレーム、カウル、タンク、保安部品を外してみると、その凝った作りに驚かされます。
このように、マイナーチェンジが繰り返され熟成を重ねた、50ccとしては本当に珍しい車両です。
1993年に生まれたRS50(MMA型)はAF1/50futuraのフレームにヤマハ(ミナレリ)のエンジンを積み、8.8psを発生するパワフルな車両です。
ヨーロッパの大柄なライダーに合わせて車体を設計しているため、国産車両と比べてかなり大柄で大迫力。
初期型はCheasterfieldカラーで、ワークス車両そのもののような外観が人気を博しました。
1995年にマイナーチェンジされ、RS250のスタイルに合わせてアッパーカウルとヘッドライトが変更されています。
また、19パイキャブレターが搭載された最後の車両としても有名です。
1996年、国別仕様の適正化が行われ、キャブレターが14パイに絞られパワーダウンとなっています。
そして、日本仕様はこの年式からで、フレームがグレーとなっている事で見分る事が可能です。
1997年にはエンジンがAM5から6速ミッションのMA6に変更されました。
そして、1998年にフォークキャップやリアサス、ミラーの形状変更が行われ、ロッシ・原田レプリカが発売されています。
その後、1999年にPGE型としてフルモデルチェンジ。
アルミダイキャストフレームをボルトで連結するという新しい構造となり、スイングアームも片持ちから両持ちに変更。
走りを追求した形となり、レーサーRS125と同じデザインのカウルを装備します。エンジンもポート形状を変更し、中速トルクを向上すると共に、サイレンサーを直管型からパイプを分割し、騒音を抑えています。
また、2000年には冬場のオーバークール対策として、ラジエター容量が縮小されました。
ここまでの車両は非常にパワフルで速く、人気の高い車両でしたが、翌年ヨーロッパの規制が変わり混迷期に入っていくのです。
そして2002年衝撃のSE型が販売されます。
こちらは排ガス規制・騒音規制・モペット規制に対応するために、大幅なパワーダウンとなった車両でした。
とにかく衝撃的なパワーダウンだった為、ユーザー・販売店ともに大混乱となった衝撃の一台です。
チャンバー入り口を大幅に絞るためのリストリクターを取り除き、キャブセッティングをすれば通常のパワーに戻す事は可能ですが、ノーマル状態だですと、とにかく遅い。
遅すぎて公道を走るのが危険と感じるほどで、信号待ちから走り出すときに遅すぎて車にクラクションを鳴らされたり、4ストのスクーターにあっと言う間においていかれる事も。
その為、一部の販売店ではチャンバーを加工もしくは変更し、キャブセッティングをお勧めして、販売していたそうです。
ただ、こちらは日本や一部の地域に対するモデルであったため、フルパワーモデルも存在しています。
2004年には、TSJ型が発売されました。
こちらは、SE型からモペット規制を外したモデルで、吸排気のリストラクターが外され、キャブセッティングが成されていたので、ある程度のパワー回復はしているものの、やはり低出力で実馬力は4~5psぐらいだと言われています。
そして、2006年RS50最後のマイナーチェンジとしてフレームがバフがけされた仕様が発売されています。
その後2007年に、DEBIL GPR50Racingをベースとした新型RS50が日本でもデビューしました。
こちらの中身は全てGPR50Rで、新型RS125のカウルとメーターパネルを装備した車両でした。
馬力はやはり4~5馬力で、キャブレターのイン側のインシュレーターと排気側の漏斗型の点付けされた金属パーツを外し、キャブセッティングすることでフルパワーにする事ができます。
2000年までの車両は、魅力的なパワーと50ccとは思えないサイズ感が人気を博しただけに、後半のモデルは非常に残念な結果となっています。
もちろんちょっと詳しい人であれば、フルパワーにすることが可能なのですが、キャブセッティングや、若干の専門性が必要となるためハードルが高いかもしれません。
2002年以降の車両を選ぶ場合はどんな改造がされているかなど、難易度が高い状況で、年式の違いをよく踏まえて選ぶことが購入のコツとなっています。
まとめ
乗って楽しい50ccフルサイズスポーツ。
普段の足に、通勤通学に、時には峠やサーキットなど、どんなシーンでも気軽に楽しめるのが魅力です。
そして誰でも手に入る気軽さ、チューニングの幅広さも面白さの一つです。
私たちの時代は、高校に入ったらまず原付免許を取って、バイクに乗り、そこから新しい楽しみをサーキットに求めるか、峠に求めるか、カスタムに求めるかなど幅広く楽しんだ時代でした。
普通に自分でエンジンをばらし、組みなおしたり、チューニングしたり。そんな楽しみも身近にあった時代の産物。
2スト車両はもう数は少なくなりましたが、またそんな時代を思い出し、コツコツ直してきれいにしたり、時にはサーキットに出かけてみるのもいいかもしれません。
あの時代の仲間たちと思いをはせて、時には遊んでみませんか?
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