400馬力のV10エンジンを搭載する流麗なデザインの初代バイパーは、日本でも話題となりましたが、正規輸入されたのは後期型(SR I)の数年間のみ。しかし本国では2代目が2002年にデビュー、前期型(ZB I)では8.3リッター、後期(ZB II)に至っては608馬力の8.4リッターV10エンジンを積み、「美しき毒蛇」はさらに猛威をふるいました。

2代目ダッジ バイパーSRT10 / Photo by Greg Gjerdingen

さらに軽量ハイパワーへ進化した「美しき毒蛇」

8.3リッターへ拡大された2代目ダッジ バイパーSRT10 / Photo by Kurush Pawar

アメリカンマッスルカーの復活を高らかに宣言したような初代ダッジ バイパーは、現在もステランティス(フィアット・クライスラーとプジョー・シトロエンが合併した多国籍メーカー)の”ダッジ”ブランドスポーツ部門であるSRT(Street&Racing Technology)の手によって、2002年に2代目へとモデルチェンジ。

SRTの10気筒モデルを表す「SRT-10」がモデル名へ付与された2代目バイパーSRT-10前期型(ZB I)は、まずロードスターがデビューし、V10エンジンが、初代後期型(SR II)8リッター450馬力から、8.3リッター500馬力へと高められ、それに合わせてボディ剛性も高められました。

より軽量で高剛性のアルミ製フレームも開発されていましたが、当時のダイムラークライスラーは、北米クライスラー部門の深刻な経営不振により、ドイツのダイムラーベンツから見限られようとしており(2007年に分離)、結局アルミフレームはメルセデス・ベンツSLS AMGの基礎となり、バイパーには使われていません。

それでもエンジンやボディ各部の軽量化が進められた結果、2代目バイパーの最高速度は305km/hに達するなど、最高速や加速性能は大幅に改善。

出力アップと軽量化によるパワーウェイトレシオ向上という結果は、十分に残しています。

そして2005年のデトロイトショーでは、ついにクーペモデルも「バイパーSRT-10クーペ」としてデビュー。

ボディパネルはロードスターモデルと共通部分が多かったものの、初代クーペのダブルバブルルーフといった特徴はそのまま踏襲され、さらに最高出力も10馬力向上した510馬力となりました。

ついに600馬力オーバー、ACRモデルも登場した後期型

2代目ダッジ バイパー クーペ / Photo by SoulRider.222

2008年モデルからは後期型(ZB II)となり、外観こそ変わらないものの、中身には大幅な変化がもたらされます。

まずV10エンジンはマクラーレンなどと共同開発した新型となり、排気量が8.4リッターへと向上。

可変バルブタイミング機構や、デュアル電子スロットル機構などが追加されるとともに制御も改良され、最高出力は608馬力に達します。

前期(ZB I)では、取り回しの関係で車内に熱がこもるという、快適性において致命的な欠点もあった排気系も改善されており、ほかにも、ミッション、リヤアクスル、サスペンションが変更されました。

実用面でもクラッチ操作力の低減など、地道な改良が行われており、アクセルレスポンスや、シフトやクラッチのフィーリングなどが(アクセルを乱暴に目いっぱい踏み込むような事をしなければ)街乗りでも十分通用するレベルに達したと言われています。

そのため、日本で並行輸入の2代目バイパーを購入しようと考えるなら、この点を考慮して後期型がオススメです。

2代目ダッジ バイパー SRT10 ACR / Photo by Tim Sneddon

また、2008年もデルからの注目すべき追加モデルとして、クーペをベースにクライスラーのスポーツブランド「ACR(American Club Racer)」の名を付与した「バイパーSRT-10 ACR」および、サーキット向けに649馬力へと出力を向上した「バイパーSRT-10 ACR X」が登場します。

ACRの方は既にバイパーSRT-10がノーマルの時点で十分な動力性能を発揮していたため、主に軽量化や空力特性の向上に注力。

HCP(ハードコアパッケージ)仕様では、SRT-10クーペに対して36kg、それ以外でも18kg軽量化されたほか、ダウンフォースの増加で高速域での限界や操縦性が向上しています。

このバイパーSRT-10 ACRは、2008年8月にドイツのニュルブルクリンクサーキット北コースでタイムアタックに挑み、7分22秒1というラップタイムを記録。

当時の、より高価なスーパーカーなどを差し置いて、市販車最速を記録しました。

その後もACR Xや3代目バイパーによる挑戦は続き、アメリカンマッスルカーが単に猛烈なパワーを誇る直線番長というわけではなく、優れたスポーツカーである事を証明しています。

主要スペックと中古車価格

2代目ダッジ バイパー SRT10 / Photo by Jack Snell

ダッジ バイパー SRT10 2008年式
全長×全幅×全高(mm):4,459×1,911×1,210
ホイールベース(mm):2,510
車重(kg):1,575
エンジン:水冷V型10気筒OHV20バルブ
排気量:8,285cc
最高出力:447kw(608ps)/6,100rpm
最大トルク:759N・m(77.4kgm)/6,250rpm
燃費:-
乗車定員:2人
駆動方式:FR
ミッション:6MT
サスペンション形式:(F・R)ダブルウィッシュボーン

(中古車相場とタマ数)
※2021年2月現在
SRT10:798万円・1台

スパルタンなマッスルカーから洗練されたスポーツカーへ

2代目ダッジ バイパー クーペ / Photo by dodge challenger1

初代バイパーは、特に初期型でエアコンがオプション設定すらないなど、スパルタンな一面を持つ車であり、1960年代の「獰猛な毒蛇」、シェルビー コブラをデザイン以外の面でどこまでも彷彿とされる「美しき毒蛇」でした。

2代目ではあふれんばかりの(扱いを間違えば本当にあふれる)パワーはそのままに、快適性や操作性の改善といった、「パワーだけじゃないスポーツカーとしての立ち居振る舞い」を身に着けたという意味では、やや軟派ではあるものの、万人にとって敷居の下がる「洗練されたスポーツカー」になったと言えます。

2代目以降は並行輸入のみとなったので中古車のタマ数は少ないものの、特に操作性や快適性が向上した後期(ZB II)なら、3代目と並んで積極的に選択肢へ入れてよいアメリカンスポーツの1台と言えるでしょう。

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!