現在では考えられないような話ですが、1980年代半ばから数年間の日本車には「ルーフ(天井)が低ければ低いほどいい」という時代がありました。それもスポーツカーが好きなユーザーが特に、というわけでもなく「ハイソカーブーム以降何となくみんなそういう車に乗っていたし、それが流行だった」だけなのですが、それに応えた各メーカーはとにかくルーフの低い車を競うように発表します。トヨタ コロナExivもそんな車の1台ですが、2代目はレースで活躍した車という印象の方が強いかもしれません。
掲載日:2017/10/27
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伝統の2ドアから流行の4ドアハードトップへ、トヨタ コロナExiv
かつて「カリーナED現象」とまで言われ、作れるメーカーは全てラインナップしたほど熱狂的なブームとなった、ルーフの低いスポーティな4ドアハードトップクーペ。
火付け役となったトヨタ カリーナEDの兄弟車、コロナExiv(エクシヴ)も同様に人気となり、2代目はレースでの活躍でも知られますが、そこに至るまではちょっと古い歴史がありました。
トヨタ初のミドルクラス大衆車、コロナは3代目から2ドアハードトップ車を設定、それをベースに1.6リッターDOHCエンジンを搭載したトヨタ1600GTを発売するなど、7代目まで4ドア / 5ドア車と全く異なるスポ-ティボディをラインナップしていたのです。
なんと、8代目へのモデルチェンジでカリーナと兄弟車化&FF(フロントエンジン・前輪駆動)化されたタイミングで、2ドア車は同じくFF化されたセリカの兄弟車、コロナクーペとして再出発しました。
しかし、同時期にやはりセリカをベースにした新型4ドアハードトップクーペ、カリーナEDが大ヒットした一方でコロナクーペの販売は伸び悩み、次世代からはカリーナEDの兄弟車として4ドア化されることに。
これが1989年登場の初代コロナExivで、同時デビューの2代目カリーナEDより落ち着いた雰囲気のデザインでうまく棲み分け、両車ともヒット作になります。
その後1993年には2代目へモデルチェンジしましたが、その頃にはSUVやステーションワゴン、ミニバンブームが始まっていてすっかり人気は落ち、3ナンバー化による車格アップでマークII3兄弟との住み分けも難しかったのでその代限りで廃止となりました。
ちなみにトヨペット店(コロナExiv)とトヨタ店(カリーナED)から、ネッツ店に販売店の移行という違いはありますが、実質的な後継車はFRスポーツセダンのアルテッツァ(現在のレクサス IS)となります。
4ドアセダンを押しつぶしたようなロー&ワイドが受けた時代
コロナExivは初代、2代目ともに「コロナの4ドアハードトップクーペ版」というより、キャラクター的には「セリカの4ドアハードトップクーペ版」というべき車でした。
しかしコロナと共通するような部分もあるため、両者の中間的存在とも言えます。
【セリカとの共通点】
・NA(自然吸気)スポーツエンジン3S-Gの搭載(コロナも1992年登場の10代目までは搭載)
・初代、2代目ともにセリカとホイールベースは共通(初代のみコロナも共通)
・4WS(4輪操舵)の設定
・車高(ルーフ高)が低い
【コロナとの共通点】
・セリカには無い1.8リッターエンジン搭載の廉価版を設定
・セリカにあった4WDターボの設定は無し
・4ドア車
WRCで活躍するセリカのように豪快な4WDターボを設定するほどではないものの、コロナよりスポーティなNAスポーツであり、4ドアなので日常用途、つまりファミリーカーとして使うにも不便が無い、いわば「若者向けのちょっと高級なスポーツセダン」的な車です。
2017年現在の視点から見ると「車高が低くて狭くて不便」と思われそうですが、1990年代初め頃まではそもそも「車高が高くて広い方がいい車」という発想自体があまり無く、実用性に疑問を持たれることなど無かった時代でした。
しかしそれも2代目にモデルチェンジした頃までの話で、それ以降は「ただの狭い車」としてファミリーカーユーザーに見放され、「スポーツカーとしても重くて剛性不足でおまけにFF」とスポーツユーザーにも見放されてしまいます。
ただし、それは当時の4ドアスポーツクーペ全てに言えた話で中古車市場でも全く売れず、1990年代後半の自動車販売店など、ミニバンやSUV人気で活況を呈する一方「(4ドアハードトップクーペのどれか)の下取りか…」と、その不人気に頭を抱えました。
社会現象レベルの大ヒットの中で生まれてからわずか数年、「どうにも潰しの効かない無用の車」になってしまうなど、時代の流れの激しさを物語っています。
しかし、それゆえに「スポーティな割には中古車のお買い得感が高かった」のも事実で、後述するレースでの活躍もあり、コロナExivやカリーナEDの中古車から走りに目覚めた、というユーザーもいたはずです。
激闘JTCC!2代目コロナExivはレースで活躍
初代は4ドアで便利なセリカ系としてストリートユーザーが好んだ程度、これといったモータースポーツの実績もありませんでしたが、2代目はデビュー翌年から始まったJTCC(全日本ツーリングカー選手権)という大舞台がありました。
1994年の開催当初、コロナを中心にカローラやカローラセレス、スプリンターマリノで参戦していたトヨタ勢でしたが、翌1995年には大半がコロナExivでの参戦に。
軽量ハイパワーマシンはストレートでの伸びはともかくコーナリングでの踏ん張りが効かないため、2代目で3ナンバーボディとなったコロナExivはそのワイドトレッドの利点を活かして活躍します。
同じく5ナンバーサイズのシビックから3ナンバーサイズのアコードへ変更したホンダ勢は、5ナンバーサイズのままながらプリメーラで健闘する日産勢と激しく戦うも、1997年にトヨタがチェイサーを投入すると、コロナExivはセカンド級マシンに後退する結果になりました。
JTCC自体もメーカー間の開発競争が激しすぎてプライベーター勢がついていけなくなり、同じツーリングカーレースの中でも日本独自のルールが多すぎて海外で活躍するマシンの投入が難しい「ガラパゴスレース化」がひどかったため、一気に衰退してしまいます。
最終年となった1998年には実質的にチェイサーvsコロナExivという同門対決になってしまいましたが、「FR(フロントエンジン後輪駆動)のチェイサーとFFのコロナExiv、どっちが速いか?」という意味で、最後まで見どころあるレースを見せてくれました。
トヨタ コロナExivの代表的なスペック
【トヨタ ST182 コロナExiv(初代) TR-G 1989年式】
全長×全幅×全高(mm):4,500×1,690×1,320
ホイールベース(mm):2,525
車両重量(kg):1,200
エンジン仕様・型式:3S-GE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,998cc
最高出力:165ps/6,800rpm
最大トルク:19.5kgm/4,800rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:28~33.8万円
【トヨタ ST202 コロナExiv(2代目) TR-G 1993年式】
全長×全幅×全高(mm):4,500×1,740×1,325
ホイールベース(mm):2,535
車両重量(kg):1,190
エンジン仕様・型式:3S-GE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,998cc
最高出力:180ps/7,000rpm
最大トルク:19.5kgm/4,800rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:49.8万円
※スペックは「トヨタ自動車75年史 車両系統図 コロナExiv」より引用。
※中古車相場は大手中古車サイトより2017年10月現在の流通状況から
まとめ
トヨタ コロナExivは初代が「カリーナED現象」による4ドアハードトップクーペブームに乗った形でヒット作となり、2代目はブーム終了による低迷に泣かされたものの、正常進化したFF4ドアスポーツとしてレースで活躍しました。
特にJTCCでのスタイリッシュな姿が印象に残る2代目は、現在でも「こういう走りの楽しそうなFFスポーツセダンもいいな」と思わせてくれる1台。
ワイド化とボディ剛性強化の上でパワーアップ&軽量化も果たしており、今乗っても楽しめるのではないでしょうか。
初代の頃はピラーレスハードトップ(前後ドアの間の柱が無い車。2代目は柱があるピラードハードトップ)の場合は経年劣化でボディが歪み、コーナリング中に隙間風が吹き込むほどだったので、2代目で正常進化したにもかかわらず、それっきり廃盤となってしまったのが惜しい車です。
ミニバンやSUVも良いのですが、こうした車高が低く風を切るような走りができ、かつ4ドアなのでファミリーカーとしても実用的な車、便利さをちょっと我慢する代わりに走りの楽しみがある車は、当時からの自動車ファンにとっては懐かしさを感じます。
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