期待を裏切る運動性能

このように、GTOは現行GT-Rにも通じるような、先進的スペックを持ち合わせているように見えると思います。

但し、このGTOにはスポーツカーと呼ぶには致命的な問題点がいくつか存在したのです。

まずは、重い3.0リッターV6エンジンを積む故の60:40に迫るフロント・ヘヴィーな重量配分。

フロントアクスル前方にエンジンがあることで、走りの面ではヨー慣性モーメントが増大する不利なパッケージングとなってしまっているのです。

出典:http://japanesenostalgiccar.com/25-year-club-the-mitsubishi-gto-is-officially-a-japanese-nostalgic-car/

出典:http://japanesenostalgiccar.com

しかし極めつけは、1700キロを超える、超ヘビー級の車重です。

同じ4WDのギャランVR-4が240馬力で1290キロだったことを考えると、異常な重量とも言えます。

とても純正の4ポッド・キャリパーが十分なブレーキ性能を発揮しているとは言えない状況でした。

ともあれ、こういったスポーツカーとしての性能評価というのは、本来アメリカのフリーウェイをクルージングする全天候型グランド・ツアラーとして生まれたこのマシンにはやや残酷なものとも言えますが、日本市場では「GT-Rなどのライバル」として売り出された面もあり、故に避けられないものだったのです。

 

GTO TWIN TURBO MR (1994,1996)

しかし、前述のようなスポーツカーとしての不名誉な評価を許すほど、三菱は甘くありませんでした。敢えて栄光の”GTO”の名を与えただけに、ここから本気の熟成が始まるのです。

まず1993年のマイナーチェンジで、なんとゲトラグ社製6速トランスミッションを標準装備としたのです。

もちろん国産乗用車としてはほとんど前例がなく、2年後に発売されるR33型スカイラインGT-Rですら、未だ5速MTの採用でした。

出典:http://www.roadandtrack.com/car-culture/classic-cars/videos/a27885/1994-mitsubishi-3000gt-vr4-motorweek/

出典:http://www.roadandtrack.com/

これに加えてヘッドライトがプロジェクター化され、空力面でも改善を実施。

ルックスも80年代の香りのするフォルムから、より流麗で近代的なものに変化しています。

更には1994年のマイナーチェンジにおいて、一部快適装備を排すなどのシェイプアップを行ったGTO MRへと進化を遂げるのです。

このマイナーチェンジ最大のハイライトは、AP社製6ポッドキャリパーを備えたベンチレーテッドディスクブレーキがオプションとして設定された点でしょう。

標準装備でこそないものの、当時は6ポッドブレーキなどレーシングカーにしか採用されていないような代物でした。

1994年式 GTO TWIN TURBO MR(E-Z15A)のスペック

全長×全幅×全高(mm):4575×1840×1285
ホイールベース(mm):2470
車両重量(kg):1650
エンジン型式:6G72
エンジン仕様:V型6気筒DOHC24バルブICツインターボ
総排気量(cc):2972
最高出力:280ps/6000rpm
最大トルク:43.5kgm/2500rpm
トランスミッション:6MT
駆動方式:フルタイム4WD
中古相場価格:280,000〜2,900,000 円

出典:https://www.youtube.com/watch?v=c0r55jmaWHg

ラリーアートオプションとして設定された6ポッドキャリパー 出典:https://www.youtube.com/

軽量化が図られたとはいえ1600キロを超える車重。それを支えるブレーキの強化は、高額なオプションとはいえGTOの評価を押し上げることに成功したと言っていいでしょう。

その後、1996年のマイナーチェンジでは国産他メーカーに先駆けてMRのみ18インチの扁平タイヤを標準装備とし、エアロパーツもよりブラッシュアップされ大型のリアスポイラーへ変更。

ちなみこのタイミングで、アクティブエアロシステムは廃止されています。

出典:http://www.boostcruising.com/galleries/rides/746488-1996-Mitsubishi-GTO-VR4.html

出典:http://www.boostcruising.com

1996年式 GTO TWIN TURBO MR(E-Z15A)のスペック

全長×全幅×全高(mm):4590×1840×1285
ホイールベース(mm):2470
車両重量(kg):1680
エンジン型式:6G72
エンジン仕様:V型6気筒DOHC24バルブICツインターボ
総排気量(cc):2972
最高出力:280ps/6000rpm
最大トルク:43.5kgm/2500rpm
トランスミッション:6MT
駆動方式:フルタイム4WD
中古相場価格:280,000〜2,900,000 円

こうして続々とパフォーマンスアップの為に持ち込まれたウェポンの数々は、そのどれもが三菱の本気を物語るに十分なものでした。

 

レースにおけるGTOの活躍

徐々に運動性能を向上させていったGTOですが、実は発売間もない1991年に、早くもN1耐久レースにデビューを果たしています。

N1耐久といえば改造範囲が極めて狭く、競技用の安全部品など以外はほとんど市販車からの改造が認められていません。

出典:http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/000/304/04/1/11748273301559926.jpg

出典:http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/

そんな最中、当時はR32GT-Rが席巻していたクラス1に、プライベーターであるKEGANIレーシングからGTOが出走したのです。

同じ三菱のギャランVR-4は、筑波でのレースで優勝を飾ったりとGT-R勢を食う活躍を見せましたが、本来のライバルであるはずのGTOは信頼性の低さ、重過ぎる重量に悩まされ目立った活躍は残せませんでした。

また、Gr.Aでのフィードバックや、アフターマーケットで開発が進んでいたGT-Rと比べれば、孤軍奮闘のGTOは分の悪過ぎる勝負に挑んでいたとも言えます。

そんな中でも1993年開幕戦での4位入賞など、着実な努力は戦闘力を確実に引き上げてはいました。

このKEGANIレーシングの活動終了後、1995年に三菱PUMAレーシングがマイナーチェンジ後のGTOを新たに投入。

出典:http://japanesenostalgiccar.com/25-year-club-the-mitsubishi-gto-is-officially-a-japanese-nostalgic-car/

出典:http://japanesenostalgiccar.com

大井貴之/中谷明彦という雑誌やビデオなどで引っ張りだこの人気ドライバーであった二人がドライブし、この年のTIサーキット英田で行われた400キロレースで総合2位を獲得しています。

そしてこの「2位」の戦績が、三菱・GTOのモータースポーツ活動におけるベスト・リザルトとして刻まれています。

勝負にはこだわりながらも、クルマ好きオーナーの嗜好が高じてN1耐久車両に選ばれたGTO。本来ならサーキットレースで見られるはずのなかった車両だが、日本独自のN1規定が追い風となり高性能車ブームに沸くファンの目を楽しませてくれた。日本の自動車産業、大したものである。

Racing on No.473  110ページより引用

[amazonjs asin=”B00OODIE3Y” locale=”JP” title=”Racing on No.473″]

 

その後のGTO:GTO TWIN TURBO MR(1998)

1998年、GTOは更なるマイナーチェンジを施され、大胆なフロント周りの意匠変更と大型のリアウイングを装着した最終型に進化。

2001年に生産が終了するまで、GTOは飽くなき進化を続けたのです。

出典:http://japanesenostalgiccar.com/25-year-club-the-mitsubishi-gto-is-officially-a-japanese-nostalgic-car/

出典:http://japanesenostalgiccar.com/

1998年式 GTO TWIN TURBO MR(GF-Z15A)のスペック

全長×全幅×全高(mm):4600×1840×1285
ホイールベース(mm):2470
車両重量(kg):1670
エンジン型式:6G72
エンジン仕様:V型6気筒DOHC24バルブICツインターボ
総排気量(cc):2972
最高出力:280ps/6000rpm
最大トルク:43.5kgm/2500rpm
トランスミッション:6MT
駆動方式:フルタイム4WD
中古相場価格:280,000〜2,900,000 円

生まれながらの素性の悪さを背負いながらも、三菱がこのGTOに傾けた速さへの情熱・ライバルに負けんとする執念は、その開発において磨かれたノウハウを以ってランサー・エボリューションで身を結んだ…と言って良いでしょう。

尚、本来のターゲットであったアメリカでは3000GTという車名で販売され、全天候型ツアラーとして高い人気を獲得。

現在もカスタム・ベースとして、三菱・エクリプスと並び高い人気を誇っています。

出典:https://i.ytimg.com/vi/1ZQ4ac-MO7E/maxresdefault.jpg

出典:https://www.youtube.com/

 

まとめ

バブルの追い風を受けての華々しいデビューから、10年にわたる三菱GTOのストーリー。いかがでしたでしょうか。

あのバブルの時代から時は経ち、4ドアスポーツセダンの時代を築いたランサー・エボリューションシリーズも終焉に至った今。

再び訪れたこのスーパー・スポーツ百花繚乱の時代に、ふさわしい三菱のスポーツカー…世界を驚かせる真の”GTO”を、夢見ずにはいられない今日この頃です…。

出典:http://japanesenostalgiccar.com/25-year-club-the-mitsubishi-gto-is-officially-a-japanese-nostalgic-car/

出典:http://japanesenostalgiccar.com/

 

あわせて読みたい

ポルシェとも渡り合える!?三菱の個性派スポーツ、FTOの魅力とは?

WRC、ワールドラリーカー時代の歴代チャンピオンマシンとは?1997-2003年は、ランサーが、インプレッサが激戦を繰り広げた時代!

 

[amazonjs asin=”B00OODIE3Y” locale=”JP” title=”Racing on No.473″]

 

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!