今シーズン、全日本F3選手権で目覚ましい活躍を見せている三浦愛。前回の岡山ラウンドでは自己ベストとなる4位フィニッシュを記録し、今回の鈴鹿ラウンドでは待望の総合での表彰台も期待されていた。しかし、結果を見ると両レースともポイント獲得ならず。思わぬ苦戦を強いられる事となったのだが、それには“今後のこと”を見据えた理由があった。1ヶ月前までは入賞することを目標にしていた彼女だが、すでに表彰台を見据えた戦いに入っていたのだ。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

今シーズンの中で一番苦しい2連戦

 

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6月24日、鈴鹿ラウンドの公式予選。併催されているレースのセッションで赤旗が連発した事により、予定よりも35分遅れでのスタートとなるが、そこに向かう三浦は、いつになくナーバスな表情をしていた。

前回の岡山ラウンドでは2レースとも予選6番手以内からスタートし、決勝も2戦連続ポイントを獲得。特に第8戦では自己ベストの4位に入る活躍を見せた。

いよいよ、表彰台圏内も見えてきたか?と期待が集まる中、迎えた第10・11戦の鈴鹿ラウンド。

しかし金曜日の専有走行では、思うようにタイムが伸びず総合結果ではトップから3秒遅れの11番手。Cクラス最下位となった。

4月の鈴鹿ではトップ6に入る活躍を見せていた三浦だが、一転し11番手に転落。

その一つの要因は、前回の岡山から導入した新しいセッティングだった。

 

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今までは彼女の体力面も考慮しステアリングが軽くなるセッティングにしていたのだが、トップ集団に少しでも近づくためにライバルたちと同じ仕様に変更。それが岡山では躍進につながったのは確かだった。

ところが、鈴鹿サーキットは1周あたりの平均スピードが国内サーキットの中で一番高く、岡山と比べても平均で約20km/hの違いがある。

さらにS字・逆バンク区間などハイスピードコーナーが多く、その分ドライバーにかかる体力面での負担も大きいのだ。

さらに三浦のマシンは4月の第4・5戦とは違いステアリングが重い仕様になっているため、今シーズンの中で一番体力面で不安を抱えるレースとなった。

 

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「岡山と同様に、クルマから伝わってくる情報はすごくダイレクトなので、こっちのセッティングの方がいいというのは分かっていますが、自分の腕力、体力の部分でどこまで付いていけるかというのが課題でした。」

「金曜日の専有走行で3時間走って、結構きつかったです。レースでは最後までもつかなぁという不安もありました。」

体力面で余裕がなかったこともあってか、マシンの合わせ込みという部分に大きく影響してしまうのだ。

今回の鈴鹿ラウンドは「SUZUKA Race of ASIA」として開催され、ブランパンGTアジアやランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジアなども併催された。

実はこれらのレースは全てピレリタイヤのワンメイク。

溶けたタイヤのゴムが路面に付着し“ラバーグリップ”というものが生まれるのだが、そのグリップ度合いもヨコハマタイヤのものとは大きく違う。

こういった路面コンディションの変化にも、苦しめられることになったのだ。

 

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「路面も違うし、セッティングも前回(4月の鈴鹿ラウンド)と違う上に、自分自身の体力に余裕がないから、冷静な判断ができていなかったと思います。何かを感じ取っていても、それをエンジニアに伝える言葉の端々に戸惑いというか、ちょっとフィーリングの受け取り方の違いがあったのかもしれませんね。」

その結果、金曜日から思うようにマシンが仕上がらず、予選も第10戦が9番手、第11戦が10番手とここ数戦の彼女の中では悪い結果に繋がってしまったのだ。

 

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もちろん、ステアリングを前のように軽いものに戻すことは可能。それにより、本来のアグレシッブな走りを復活させることは可能なのだが、それでは“意味がない”と三浦は自分自身に厳しく向き合った。

「(キツいからと言って)セッティングを戻してしまうと、クルマのポテンシャルを落とすことになってしまって、また一歩自分が後退してしまいます。」

「鈴鹿が苦しいというのは分かっているので、ここを乗り切れば富士、もてぎは身体への負担は比較的優しいコース。体力的には気持ちに余裕を持てるだろうし、ここで痛めつけておくことで、自分のドライビングにも余裕がでて、コントロールの質が上がると思います。だから、今回はもしポイントが取れなかったとしても、次のレースにつながると思います。少し無理はしていますが、次のためにそのままのセッティングで行こうと判断しました。」

 

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「ここで無難な成績を出すことが目標ではないですから…。」

結局今回、決勝も同じ重いステアリングで臨むことを決めた三浦は、リザルト以上に中身の濃いレースを繰り広げた。

 

スタートでミスし大きく後退。第10戦は10位…

 

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9番手からのスタートとなった第10戦。オーバーテイクポイントが少ない鈴鹿では、スタートが順位を上げる重要なチャンスとなる。

直前のスタート練習では抜群の手応えを感じていたのだが、肝心の本番で大失敗。

後方のNクラスにも追い抜かれ、16番手で1コーナーを通過することになってしまう。

その後すぐに追い上げを目指すものの、Nクラスのマシンを抜いている間にライバルとの差は大きく広がってしまう。

それでも、諦めずに攻め続けたが、10位と不本意な結果に終わってしまった。

金曜日から続いた悪い流れが、決勝レースにも響く形となってしまったのだ。

「直前にスタート練習をした時はすごく良かったのですが、ちょっとレッドシグナルの時間が長くて、タイミングが合わなくて操作を誤ってしまいました。」

「前に行かなきゃという気持ちと、スタート練習が良かったのもありますし、何より金曜日からの流れがあまり良くなかったので、その部分で自分で少なからず焦りがあったのかなと思います。」

「もう割り切って、12周ずっと攻めていた感じでしたが、ちょっと前との差が離れすぎていました。」

 

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それでも、金曜日から苦戦していたマシンのセットアップという部分では徐々に改善がみられ、この決勝では現状でのベストが出せたという。

「各セッションごとにセッティング変更をして、サイティングラップ(スタート進行)で感じた状態を元に、グリッドでも再度セットチェンジをしました。そういった中で良い方向に持って行けたのは良かったです。」

「欲を言うと、それが金曜の段階からできていればというのが、心の中では残ってしまっていますが、今の状況の中ではベストは尽くせたと思います。」

「また最後までペースを落とさずに走れたので、それは自分の自信につながっています。結果よりも今日のラップタイムだったり、攻めれた部分で次につながったと思います。」

 

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翌日の第11戦に向けて、気持ちを切り替えていた三浦。

しかし、次は第10戦より5周長い17周のレースとなるので、彼女にとっては今年一番の“戦い”となるのだ。

 

残り5周でペース上がらず、第11戦もポイント獲得できず…

 

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翌25日の第11戦。当初はレース中も雨が降り続く予報だったが、明け方には止んでしまいコース上はドライコンディションに。

それでもグリッドのイン側はまだ路面が濡れている状況で、今回は10番手スタート。

不利な条件にはなったが、ポジションを落とすことなく1コーナーへ入っていった。

1周目に上位集団でアクシデントがあったこともあり8番手に浮上すると、ポイント獲得をかけ片山義章、ブルーノ・カルネイロらを追いかける展開になっていく。

途中、カルネイロをパスし7番手にポジションアップすると、片山とポイント獲得をかけた一騎打ちになるのだが、残り5周になって三浦のペースが伸び悩んでしまう。

心配していた体力面で辛くなってきたのだ。

 

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前日の第10戦は12周と比較的短く、終盤まで力強い走りを見せられていたが、第11戦は5周長い17周でのレース。その“5周”の差が三浦には大きな壁となってしまったのだ。

結局、最後は片山に離される形となり7位でチェッカー。ここでもポイント獲得はならなかった。

「ペース的には前に全然付いていけるかなと思ったんですが、後半になって自分の方がだんだん体力的にキツくなっていきました。」

「21号車(カルネイロ)はタイム差があったので抜けましたが、78号車(片山)はペースがそんなに変わらない中で、自分のペースが落ちてきちゃったので、最後は離れてしまいましたね。」とレースを振り返った三浦。

タラレバにはなるが、予選で後ろに下がってしまったことが、最後まで後手を踏む展開となってしまったようだ。

 

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「予選やスタートで(彼らの)前にいられれば、もっと楽にレースができたのかもしれませんが、金曜日からの流れが悪かったのもあって、厳しかったです。」

「序盤は詰まっていた部分があったので、自分が元気なところで攻めていければ、もっと前の集団にもある程度付いて行けたと思います。ただ、どっちにしても体力面というのは永遠の課題ですね。」

 

今後のために、あえて厳しい道を選択

 

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結果的に2戦ともノーポイントになってしまった三浦。

4月の鈴鹿ラウンドを皮切りに、各大会で必ずポイントを獲得してきたのだが、それが途絶えることになってしまった。

それでも、彼女は「次のための今日」と位置づけ、今回の2レースを前向きに捉えていた。

「正直、このセッティングで鈴鹿は厳しいと思っていて、最初は決勝だけ以前のセッティングに戻そうかと言う話にもなりましたが、今後のことを考えてそのままにしました。最後はタイムは落ちてしまったけど、そんなに大幅に遅れることもなく走り切れました。それは今後に向けての自信になったと思います。」

 

三浦が目指しているのは“トップ4の分厚い壁”

 

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体力的に厳しくなることを想定した上で、あえて厳しい道を選択した三浦。その狙いは、今回のポイントを獲得する事ではなく、トップ4の背中を目指しているからだった。

今季のF3は、高星明誠、アレックス・パロウ、坪井翔、宮田莉朋の4人が予選・決勝ともにペース的には頭一つ抜け出ており、ほぼ毎戦のように彼らが表彰台のポジションを分け合っている。

少し前まではポイント圏内が必須と語っていた三浦だが、すでに見据える先は「表彰台」に変わっており、それを実現させるためには、この4人を攻略する必要があるのだ。

 

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「今よりも上の位置に行くためには、自分の中で守りに入ることはできないです。」

「やっとビリから一番後ろの集団に入って、そこを抜け出られるかなというところまできたと思います。ただ、そこからの(トップ4へ近づく)壁というのは、ものすごく高いですけど、何かを掴めば見えてくるものはあるかと思いますし、それを掴みかけている感覚はあるので、とにかくチャレンジを続けるしかないです。」

このトップ4を崩すためには、本当に分厚くて高い壁を越えなければいけないが、その第一ステップである今回を乗り切った三浦は、結果だけでは見る事ができない大きな自信につながったようだ。

「シーズンの中で一番苦しい鈴鹿を乗り切ったので、次の富士、もてぎの2大会は必ず上位に行きたいですね。」

「特に富士は今年2回目。体力的には絶対にいけるところ。金曜日からうまく組み立てていかないとという部分はありますが、インターバルも少ないので、身体も良い状態でいけるはず。自信を持っていきたいです。」

「トップ4は速いんだけど…岡山よりも表彰台に近づけるはずだと思うので、狙いをそこに定めて、確実にいきたいと思います。」

 

まとめ

 

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ついこの前までは、入賞することを目標にしていた三浦愛。そこからわずか数ヶ月の間に表彰台を見据え、トップ4に近づくために何をしなければいけないのか?ということまで自ずと考えはじめていたのが印象的だった。

次回は第12・13戦の富士スピードウェイ。

鈴鹿と比べると体力的な負担も少なく、マシンセッティングを大幅に変えたことでポテンシャルも確実に上がっている。

彼女にとっては、勝負の2戦になりそうだ。

 

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