歩行者側と車両側の信号表示が異なる「歩車分離式信号」。このタイプの信号は様々なパターンがありますが、スクランブル式以外の交差点でも、道路を斜め横断して渡る人がいます。しかしこの斜め横断は“想定されていない渡り方”であるため、非常に危険な行為です。
歩車分離式信号とは
歩車分離式信号は、通過していく車と歩行者が道路上で交わらないようにすることを目的に、信号が変わるタイミングを調整(分離)している信号のことです。
この歩車分離式信号のメリットは、歩行者が交差点横断中に事故に遭う危険性を減らせることにあり、2002年に警察庁が整備した「歩車分離式信号に関する指針」によって、全国的に導入が進んでいます。
この歩車分離式信号は4つのタイプが存在しており、斜め横断が可能なものや、歩行者横断時に車両を右左折させないものなどがあります。
- スクランブル式:
全方向の車両を同時に停止させ、その間に歩行者が横断するタイプ。斜め横断可。
- 歩行者専用現示式:
全方向の車両を同時に停止させ、その間に歩行者が横断するタイプ。斜め横断不可。
- 右左折車両分離式:
歩行者横断時に、同一方向へ進む車両を右折・左折させないタイプ。
- 右折車両分離式:
歩行者横断時に、同一方向へ進む車両を右折させないタイプ。
このうち、標示版によって「歩車分離式」と示されているものは「歩行者専用現示式」ですが、スクランブル式も「スクランブル式」標示が掲示されていることもあります。
また、「右左折車両分離式」と「右折車両分離式」の2タイプは、右折による事故が左折の約4倍発生していることから設定されました。
歩車分離式信号に該当する全信号に共通することは、歩行者が横断中に交差点内へ車が侵入できないように、歩行者と車両の動きが分離されていることです。
しかし、完全に安全ということはなく、歩車分離式信号にもデメリットや、横断時の注意点が存在しています。
歩車分離式信号のデメリットと横断時の注意点
歩車分離式信号のデメリットは、次のとおりです。
- 歩行者と車両の進行方向が同じ場合、車が誤って発進することがある
- 車両と歩行者の進行方向が同じ場合、人が誤って横断することがある
- 歩行者と車両、ともに待ち時間が長くなる傾向がある
特に3番目の“待ち時間が長くなる傾向にある”ことは、渋滞の発生しやすい交差点では歩車分離式信号を導入しづらいというデメリットに繋がっています。
また、交差点の幅が広い場合にスクランブル式が導入されていると、斜め横断をする距離が長くなりがちであり、横断に時間がかかるというデメリットも出てきます。
運転時に歩車分離式信号が設置されていた場合の注意点は、次のとおりです。
- 右左折車両分離式と右折車両分離式でない場合、信号が青から黄に変わる際に無理な右折・左折をしない
- 時差式の場合は、進行方向と対抗側の青信号の標示時間が違うので注意する
そして、歩行者が歩車分離式信号機を横断する際の注意点は、次のとおりです。
- スクランブル式以外の、歩車分離式信号の場合は斜め横断しない
- 車の通行量が多い場合は、歩行者用信号が青の時間が短いことがある
特に、斜め横断不可の場合は斜め横断は絶対にしないことは、安全面の観点から大切です。
「渡った先でまた信号待ちをしなければならないから」と、斜め横断をする人がいますが、それは非常に危険な行為。
何故ならスクランブル交差点以外の歩車分離式信号は、交差点の対角線上の横断を想定していないので、斜め横断をした場合、右左折してくる車のドライバーにとって迷惑です。
ドライバーにとっては、車道横断中の歩行者の動きを予測することが難しく、咄嗟の対応ができなくなるといった問題に繋がり、歩行者にとっては横断距離が伸びて危険です。
また、スクランブル交差点以外での斜め横断は、道路交通法違反にもなるので、絶対にやめてください。
第十二条 歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。
2 歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。
(横断の禁止の場所)引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/335AC0000000105_20170312_427AC0000000040/0?revIndex=3&lawId=335AC0000000105#I
まとめ
歩行者の安全を考えて設置されている、歩車分離式信号。
歩行者が交差点横断中に事故に遭う危険性を減らせるものの、一方で“信号待ちの時間が長くなる”、“信号が青の時間が短い”などのデメリットがあります。
しかしドライバーにとっても、“信号待ちの時間が長くなりがち”というデメリットがあり、どちらか一方だけがデメリットを受けているというわけではありません。
歩車分離式信号のデメリットは、歩行者とドライバー、双方にとっての安全性を考えたがゆえのものだと考え、交通ルールを守った横断・運転を心がけてみてはいかがでしょうか。
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