レーシングドライバー織戸学。近年のドライバーはカートやフォーミュラからトップカテゴリにステップアップする選手が多い中、走り屋出身という異色の経歴の持ち主。雑誌やDVDなどのメディアでの露出も多く、大人気ドライバーです。今回は、織戸さんのシミュレーターショップ「130R YOKOHAMA」に取材に行ってきました。その取材から見えた織戸選手の素顔に迫ります。
掲載日:2016/08/26
織戸学とは
1968年12月3日生まれ、千葉県船橋市出身のレーシングドライバー「織戸学」
キャビンやラークなど、レーシングドライバーが出演していたCMを見て感動し、小学校低学年ぐらいにはレースに夢中な少年だった織戸さん。
学生時代はバイクに夢中でしたが、現ARTAエグゼクティブアドバイザーの土屋圭市さんに憧れて4輪の世界へ飛び込み、いわゆる”走り屋”となります。
その後、ジムカーナやドリフトコンテスト、富士フレッシュマンレースなどを経て、全日本GT選手権(JGTC)に参戦。1997年には、GT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得。
カート、フォーミュラと着実にステップアップしてからプロドライバーになる選手が多い中、走り屋出身のチャンピオンは、かなり異色の経歴でした。
2016年現在も、スーパーGT、GT300クラスにJLOCマネパ ランボルギーニ GT3で参戦中。
また、自身のレーシングシミュレータショップ「130R YOKOHAMA」も営業しており、プロアマ問わず多くのドライバー達が、練習に訪れています。
その気さくな人柄と、異色の経歴、歯に衣着せぬ言動などから、大人気ドライバーのひとりです。
レース経歴
レースへの憧れ~坂東商会入社まで
前述の通り、プロドライバー出演のタバコCMに影響を受け、レースに興味を持ったのが小学校低学年。
当時は今のようにインターネットもなかったため、雑誌で情報を集める日々が続いたとのこと。
とにかくレーサーに憧れて、元祖日本一速い男、星野一義さんを真似て、家出してみたこともあるそうです。
実際、今回のインタビューでも、何故レースを始めたのかという問いに「タバコのcmがカッコよかったからだよ。当時のレーサーはCMにも出ていてカッコよかった。タバコ吸わないとレーサーに成れないと思ってたからね。」という回答をいただきました。
バイクに明け暮れていた学生時代を一変させたのが、ドリキン土屋圭市さんの存在。
雑誌やビデオで土屋さんを見てからドリフトの存在を知り、4輪へ転向。
その後、ジムカーナなどを経て、自動車雑誌「CARBOY」が主催していたドリフトコンテストにて、初代チャンピオンに輝きます。
そろそろ本気でレースに参戦してみたい。そう考えた織戸さんは、このコンテストの審査員であり、現GTAの坂東正明さんの会社、坂東商会の門を叩きます。
しかし、何度アポを取っても、坂東さんは何故か不在。それでも、持ち前の根気で諦めずに通い続け、5回目でついに会うことに成功。
後に坂東さんが”やる気を試していた”ということを知ったそうですが、これを機に坂東商会へ入社。この時21歳だったそうです。
富士フレッシュマン参戦開始~スーパーGTシリーズチャンピオンへ
入社後は1年目から、富士フレッシュマンレース(現・富士チャンピオンレース)に出場。
初年度こそいい成績ではなかったものの、翌年にはシリーズチャンピオンに輝くなど、才能を開花。
96年にJGTCの第4戦でGT500クラス(JUNートラスト スカイライン)、第5戦、第6戦ではGT300クラス(つちやMR2)にスポット参戦。あっという間に国内最高峰のツーリングカーレースまで登りつめます。
そして97年にはGT300クラスで福山英朗選手とペアを組み、RS☆Rシルビアでシリーズチャンピオンに輝きました。
その3年後、2000年からはGT500クラスへ参戦し、2003年の第7戦オートポリスにて、DENSO SARD スープラで初優勝。
このレースは織戸さんの中でも大事な一戦と仰っており「フォーミュラもカートもやってこなかった、ハコ車あがりの自分が、当時”フォーミュラに乗っていないと乗りこなせない”と言われていたGT500で勝った。本当の意味で、プロになった瞬間だったし、走り屋あがりでも勝てるんだという証明にもなった。」と語っています。
その後も途切れることなくGTには参戦し続け、2009年はレーシングプロジェクトバンドウからIS350でGT300クラスに参戦。片岡龍也選手とともに再びシリーズ制覇。
2011年以降はJLOCから参戦を続けており、2016年までランボルギーニ(2011~15:ガヤルド 2016:ウラカン)で参戦を継続中です。
ドリフトの世界でも活躍
雑誌のドリコン初代チャンプという肩書もあり、D1グランプリ(全日本プロドリフト選手権)において、2001年から2004年まで審査員でしたが、2005年から参戦を表明。
2006年、2007年は欠場しましたが、以降はアリストやスープラ、86、IS350などで参戦を継続。
2011年には、第3戦オートポリスでD1初優勝を飾っています。
そして2015年に惜しまれつつ引退。なお、競技としてのドリフトは引退しましたが、イベントのデモランなどでは、まだドリフトする姿を目にすることができます。
130R YOKOHAMAとは
2013年に織戸選手が立ち上げたレーシングシミュレーターショップ、130R YOKOHAMA。
横浜市都筑区の、住宅街と工場の間にある、秘密基地のような建物がこのショップです。
中に入ってまず目を引いたのは、並んでいるクルマやバイクたち。
フレームだけにされている車両から、織戸さん自身のスープラまで、カスタムされたクルマたちが多く並んでいます。
これは、この建物自体が「MAX★ORIDO RACING」というガレージであり、クルマのカスタムを取り扱っているため。
そして、その2階で130R YOKOHAMAが営業していました。
確かに、ガレージに入って見上げると真っ赤なトレーラーハウス。
中は織戸さんの”好き”が集められた空間。
今回の取材で、130Rは、運転を練習するシミュレータショップというだけではなく「シミュレータの開発・販売」も行っていると仰っていました。
これは、既存のモノを販売するのではなく、練習に最適な状態までシミュレータ自体をカスタムしていくということ。
ただショップを営業するだけでなく、何故そこまでするのかと伺ったところ、
織戸選手:俺は凝り性だから、既存の物じゃ満足できなかったのよ。
だから、挙動とか再現するソフトは勿論だけども、ハンドルからシート、フレームまで全部作ってるの。
なんだかんだ、レーシングドライバーをやらせてもらってるからさ、セッティングとか出来るわけよ。
それなら、拘ったものちゃんとした物を作ろうと思ってね。
他のシミュレーターより全然精度がいいと思うよ!プロドライバーも良く練習に来るしね。
という回答を頂きました。
また、実際、ゲームとしての側面もあるシミュレータはどこまで実車の練習になるのか?といった質問に関しては
織戸選手:なるね。運転の精度が確実にあがるよね。
例えば、今まで1つのコーナーを5つのアイデアを持ってアプローチしていた所を10個に増やせている。
との回答。
きちんとした目的意識をもって望んだ上で、精度の高いシミュレータを使用して練習すれば、実車に役立てれることの裏付けのようなお言葉。
バーチャルだからこそトライできる内容が増え、それによって実車では練習しにくかった部分を確認することができる。
だからこそシミュレータは必須の練習機材であり、織戸さんのようなシミュレータ自体の開発も必須である。ということが今回のインタビューで見えました。
そして、完成したのがこちら。
価格は1,100,000円。これはシミュレータ1台+モニター3枚の価格となっており、ここに別途セットアップ料金と取り扱い講習料金が100,000円。
ここに消費税が乗って、総額1,296,000円となっています。
※別途交通費などかかる可能性あり。
少しでも気になった方は公式ページより、お問い合わせください。
公式HP:http://www.130r-yokohama.com/
駐車場でモータースポーツ “cheetah”
童夢と織戸さんの共同開発が行われている、新しい車両cheetah(チーター)についても語っていただきました。
テーマとしてあるのは、積載車などではなく、ハイエースのようなバンに積んで持ち出せること。
極力小さく、高性能にし、スライドコントロールを学べること。そしてランニングコストを抑えることを意識して開発中とのこと。
そして、何より大事なのは、それを使って走れる場所。
織戸さん曰く、都市型にしたいと考えており、ショッピングモールなどの駐車場など、ある程度広い場所ならどこでも乗れるように調整中とのことです。
これによって、場所とコストによって、人を選んでしまうモータースポーツを、もっと身近に楽しませたいという思いも込められているようです。
また、それだけ様々な人に向けている以上、何よりもドライバーの安全を第一に考えて作っている。と語っていました。
なお、cheetahのスペックは以下。
まとめ
今回の取材で見えたのは、織戸さん自身がバイタリティに満ち溢れた人間である、ということ。
インタビューの中で、自身が29歳の時に坂東商会から独立したことを指して「30歳までに何をするか?やり切るかがとても大事。」と語っていました。
今この記事を読んでいる10代、20代の皆さんは、30歳までに何をしますか?
そして30歳以上の方は、40歳、50歳、60歳といった未来までに何をしますか?
ここで一歩踏み出すことが、人生を思い切り楽しむ重要なポイントなのだと思います。
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