かつて「日産 スカイライン」に搭載され、モータースポーツ界に旋風を巻き起こした「RBエンジン」。中でも「BNR32」に載せられた「RB26 DETT」は、当時サーキットで圧倒的な強さを誇り、現在も高い人気を集めるエンジンです。今回は、そんなRBエンジンの成り立ちや特徴、搭載車種についてご紹介します。
掲載日:2020/03/12
RBエンジンの概要
「RBエンジン」は日産が1984年〜2004年まで生産していた直列6気筒エンジンで、6代目スカイラインまで搭載されていた、L型エンジンの後継機として開発されました。
RBという名前は「Response(レスポンス)」と「Balance(バランス)」の頭文字からとったもので、「D」はDOHC、「T」はターボ装備仕様であることを示しています。
また、同エンジンは先代であるL型と同様のコンセプトに基づいて設計されており、排気量上昇を主眼に置きながらも、ライバルであったトヨタの「1Gエンジン」と同じ重量であることが特徴です。
また電子ダイレクト点火システム、「NDIS(NISSAN DIRECT IGNITION SYSTEM)」を世界で初めて採用し、DOHC仕様では日本初となる直動式ハイドロリックバルブリフターを装備するなど、多額の費用を掛けて開発されたエンジンでもあります。
歴代RBエンジンと搭載車種
RBエンジンには数多くのバリエーションがあり、搭載車種もスカイライン系列に限らず、「ローレル」や「ステージア」、「セフィーロ」、「フェアレディZ Z31」などにも載せられました。
ここでは数あるバリエーションの中から代表的なモデルと、その搭載車種について見ていきましょう。
RB20DET
「RB20」はおもに「日産 スカイライン R31」に搭載された、直列6気筒のツインカムエンジンです。
バリエーションには、以下のようなものがあります。
- RB20E:SOHC 12バルブNA仕様
- RB20P:RB20Eと同じ仕様
- RB20ET:20Eにシングルターボを付けた仕様
- RB20DE:DOHC24バルブ NA仕様
「RB20DET」はRB20DEにインタークーラーとシングルターボを付けた仕様であり、最終モデルの排気量は1998cc。
最大出力は215ps/6,400rpm、最大トルクが27.0kg・m/3,200rpmです。
RB20DETは前期、中期、後期に分類され、それぞれでカムカバーやプラグカバーの色が異なることから「赤ヘッド」や「黒ヘッド」と呼ばれています。
前期〜後期までの違いは以下の通り。
- 前期赤ヘッド:可変吸気ツインポートを採用し、赤いカムカバーを装着。
- 中期赤ヘッド:サージタンクの容量を増やし、スロットルセンサーを追加、インテークをシングルポート化してセンサー電圧を7Vに変更。
- 後期黒ヘッド:カムカバーをシルバー、プラグカバーを黒に変更するが、基本的な性能は中期赤ヘッドとほぼ同じ。
また先述通り、「RB20DET」はおもにR31に載せられたエンジンですが、それ以外にもフェアレディZ Z31やセフィーロA31、ローレルC33にも搭載されました。
このシングルターボ仕様のRB20には、FIA(国際自動車連盟)のグループA認証を得るため生産された「RB20DET-R」というモデルがあり、大容量インタークーラーやギャレット製のTO4Eハイフローターボなどを装備しています。
そんな、「スカイライン R31 GTS-R」に搭載されたこのエンジンの最高出力は、210ps/6400rpmであり、最大トルクは25.0kg・m/4800rpmでした。
RB25DET
「RB25」は、2.5リッター直列6気筒エンジンです。
「RB25DET」はローレルC34型や「スカイライン R33型」などに搭載されたエンジンで、DOHC24バルブのNAモデル、「RB25DE」がバリエーションとしてあります。
こちらもインタークーラーとシングルターボを備えたモデルで、前期モデルと後期モデルが存在。
特に「スカイライン R34型」に搭載された後期モデルの「NEOストレート6」は、排気量は同じ2498ccでありながら、当時の馬力規制上限の280ps/6400rpmを達成し、最大トルクは前期仕様を上回る37kg・m/4800rpmにまで到達します。
この後期モデルは従来型とは異なり、約70%以上が新しく設計され、「NVCS(可変バルブタイミング機構)」を装備したことで低回転域からのトルクが良く、後継機よりも扱いやすいとさえ言われていました。
RB26DETT
「RB26DETT」はRBエンジンの中で唯一、GT-R専用に設計されたエンジンであり、2.6リッターの直立6気筒ツインターボ仕様になっています。
バリエーションには以下のようなものがあります。
- RB26DE:RB26DETTのNA仕様
- RB-X GT2:「NISMO 400R」のために排気量を2771ccに拡大した仕様
- RB-XII:シングルターボ仕様
「スカイライン GT-R R32(BNR32)」に搭載されたRB26DETTは、国産車では珍しい多連スロットルを備えており、ノーマルで最高出力280ps/6800rpmを発揮。
チューニング次第では1000ps超えも可能という高い耐久性を持ったこのエンジンは、チューニングシーンを強く牽引する存在になり、モータースポーツの世界で圧倒的な強さを誇りました。
またこのエンジンは2.6リッターという中途半端な排気量になっていますが、それもレースで勝利を掴むためのもの。
当時グループA規定のもとで行われていたJTC(全日本ツーリングカー選手権)でのレギュレーションは、排気量ごとにクラス分けされていました。
このクラスごとに最大タイヤ幅と最低重量が決まっており、過給器付きはNAが不利にならないよう過給係数の1.7を掛けて、車の排気量を扱っていたのです。
そのためもともとは排気量を2.35リッターに調整し、ターボ付き仕様にする予定だったのですが、同時にトルクスプリット4WDシステム、「ATTESA E-TS」を搭載する関係上、軽量化を図っても4リッタークラスの最低重量を上回ることに。
しかし、目標の600ps仕様では、このクラスで採用可能な10インチのタイヤ幅には対応不可と判断され、上の4.5リッタークラスでの参戦を考えて排気量を上げました。
このことからも、RB26DETTが「圧倒的な走り」のために開発されたエンジンだということが分かります。
その優れた性能から、RB26DETTは後の「スカイライン GT-R R34(BNR34)」まで搭載され、現在も強い人気を集める名機となっています。
まとめ
RBエンジンは容易にハイパワー化が可能で、文字通り高いポテンシャルを持ったエンジンだと言えるでしょう。
中でもBNR32から搭載されたRB26DETTは、優れた性能と高いチューニング耐性を誇る名機として現在も語り継がれており、多くのドライバーを魅了しています。
そして2019年現在、1993年までに製造された車は北米への輸出対象車として海外に輸出されており、BNR32までのRBエンジン搭載車が姿を消しているそうです。
そのため、もしBNR32までのRBエンジン車に乗りたい方は、早めの検討が必要です。
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