軽自動車用エンジンといえば直列3気筒エンジンが主流です。その中でもスポーツ性に優れ一発のパンチ力では随一の実績を誇り、長らく使われたものといえば?スズキK6Aの名が上がると思います。F6Aに続くスズキの名機はどのような車に積まれ活躍したのでしょうか?
掲載日:2018/12/24
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「初の近代軽自動車エンジン」とも言えるスズキK6A、誕生
最近ホンダに追い上げられ、世界戦略としては小型車が主流になりつつあるとはいえ、今でもダイハツと並ぶ軽自動車界の雄であるスズキ。
550cc時代から長らく使われてきたF型エンジンは、初代アルトワークス用のDOHC4バルブインタークーラーターボ仕様のF5Aで前人未到の64馬力を叩き出し、2017年9月現在も続く軽自動車64馬力自主規制を作りました。
その後2代目前期アルトワークスに搭載したビッグボア・ショートストローク版F5Bを経て、ロングストローク化した660cc版F6Aが2代目後期アルトワークスで引き続き使われましたが、スズキは660cc旧規格第2世代から新型エンジンの採用を決めたのです。
それがスズキ初のタイミングチェーン採用オールアルミエンジン、K6Aです。
これは現在の軽自動車に多用される、ショートボア・ロングストローク・高圧縮で低回転からトルクの出る高効率エンジンではありません。
しかし、ビッグボアで低回転からのトルクはF6Aより太く、DOHC4バルブヘッドのみ設定されていた軽量エンジンという意味では、70~80年代からの流れを引きずっていない初の軽自動車用近代エンジンだったとも言えるのです。
主な搭載車1:3代目アルトワークスR、RS/Z(ターボ、HA21S / HB21S)
K6A初搭載車となったのは3代目アルトワークスで、1994年に登場。
最高出力や最大トルクなどカタログスペック上はF6Aと大差はありませんでしたが、回転が上がるにつれて盛り上がるようなトルクフィールを持つF6Aに対し、K6Aは低回転から太めのトルクが立ち上がる実戦向きのエンジンでした。
旧規格660cc後期に登場したとはいえほとんどアルトワークス、それも上級グレードのRS/Z(FFがHA21S、4WDがHB21S)専用に近いエンジンで、軽自動車レースからラリーやダートトライアルまで活躍。
特に全日本ラリーや全日本ダートラでK6Aターボを搭載したHB21SアルトワークスRの強さは圧倒的で、ダイハツの新型4気筒DOHCエンジンJB-JLを搭載したL512SミラX4では全く歯が立たず、713ccターボのJC-DETを搭載するストーリアX4を開発させたほどでした。
なお、K6Aターボ搭載型のイメージがあまりにも強いため、3代目アルトワークスといえばDOHC4バルブターボのイメージが強いのですが、K6AターボはRS/Zのみ。
特に「スズキスポーツリミテッド」といういかにも速そうなカラーリングのアルトワークスがありますが、エンジンはSOHCターボのF6Aなので、間違えないよう要注意です。
主な搭載車2:初代ワゴンR RS(ターボ)、RXなど(NA)
1993年にデビューするや大ヒットとなったワゴンRですが、最初はNA(自然吸気)でSOHCのF6Aしか搭載されておらず、ターボ車などは後から追加されています。
そもそもそんなに売れると考えられてもいなかったので、発売当初は地味なグレード展開でしたが、ユーザーからは「アルトワークスと同じK6Aターボが欲しい!」という要望が多数寄せられました。
そこで1997年4月のマイナーチェンジ時にアルトワークスRS/Zと同じK6Aターボを搭載した「RS」グレードが設定されるとともに、「RX」および「FX」グレードなどにはK6Aとして初のDOHC4バルブNA仕様(58馬力)が搭載されたのです。
これは本来の主力車種であるアルトにも搭載されていなかったもので、この瞬間からワゴンRはスズキの主力車種になったと言っても過言ではありません。
主な搭載車3:カプチーノ後期型(ターボ、EA21R)
軽自動車最強の本格FRスポーツと言われるカプチーノにも1995年のマイナーチェンジでK6Aターボが搭載され、型式もEA11RからEA21Rに変更されました。
同時に3速AT仕様も設定されるなど乗りやすくなり軽量化で速くなって良いことづくめ…かと言えばそうではなく、スポーツカー不況の中で既に販売台数が低迷していたことから人気は出ず、現存して中古車市場に流通するカプチーノもほとんどはF6AのEA11Rとなっています。
チューニングベースとして使われるのもほとんどの場合はEA11Rなため、カプチーノ用パーツもEA11Rが多く、EA21Rは現存台数も少なければ人気も低い、影の薄いカプチーノと言えるかもしれません。
なお、カプチーノと同期の軽ターボスポーツとしてはオートザム AZ-1 / スズキ キャラがありましたが、こちらはカプチーノほど支持を得られず短命に終わったため、F6Aターボのみで1995年に生産を終えています。
主な搭載車4:2代目ジムニー末期(JA22W)
EA21Rカプチーノに続く縦置きK6Aターボは2代目ジムニーで、2代目末期のJA22Wを搭載。
JA22Wはどちらかといえば一般ユーザー向けに舗装路での高速巡航性能などを高めた仕様で、業務用モデルを中心にタフさを求めらるユーザー向けのJA12系ではSOHC6バルブのF6Aターボが引き続き搭載されました。
また、1998年10月に新規格へ移行した3代目ジムニーは、短期間のみ存在した2WDモデルのジムニーLやジムニーJ2も含め、2017年9月現在に至るまで一貫してK6Aターボが搭載されています。
主な搭載車5:4代目アルトワークスRS/Z(ターボ、HA22S)
新規格初期に短期間のみ存在した4代目アルトワークスにも、最強グレードのRS/ZにK6Aターボが搭載されています。
その中でも特にFF・MT仕様の初期型にのみ設定されていたVVT+電子制御スロットル仕様K6Aターボは鋭いレスポンスで新規格化による重量増を感じさせませんでしたが、不具合が多発したため短命に終わった4代目アルトワークスの中でも早期に消えてしまいました。
以降、スズキのK6Aターボ搭載ホットハッチはkeiスポーツ、keiワークス、アルトラパンSSと受け継がれ、最新のHA36Sアルトワークスでは新型エンジンのR06Aターボに代わっています。
主な搭載車6:5代目アルト(NA)、5代目アルトバン(同)
NA仕様のK6Aは軽耐久レースのNA部門や新規格NA軽自動車レースで定番エンジンとなっていますが、その中でも比較的新しくて改造範囲の狭いレースでも強く、軽くてハイパワーでポピュラーなのが5代目アルト / アルトバンのHA22 / 23系です。
新規格移行時に軒並み重くなった軽自動車の中では例外的に旧規格並の軽量ボディで3ドア車がまだ設定されており、58馬力のDOHC4バルブ仕様K6A、に加えVVT仕様もあったため、レースでは抜群の強さを見せました。
また、同じような条件であれば「なるべく軽く、なるべくハイパワーが正義」を最良の形で実践したのが、K6A搭載型5代目アルト / アルトバンです。
なお、アルト自体は5代目途中の2000年12月に行われたマイナーチェンジによりF6Aが廃止され、全車DOHC12バルブのK6Aに統一されています。
主な搭載車7:11代目キャリイ(NA) / 4代目エブリイ(NA)
意外な代表的搭載車は軽トラックのキャリイ、および軽1BOXエブリイの新規格最初のモデルです。
各メーカーの軽トラ / 軽1BOXの中でも燃料供給方式がキャブレター仕様のF6Aを採用し続けた最後のもので、軽自動車で最後のキャブレター車でもありました。
それが廃止となったのは2001年月の一部改良で、キャリイ / エブリイともに全車DOHC4バルブのK6Aに変更。
エブリイバンとエブリイワゴンのターボ車もK6Aターボになり、スズキは軽自動車各メーカーの中で初めてエンジンが全車DOHC4バルブ化されました。
他社はむしろキャブレターの廃止こそ早かったもののDOHC4バルブ化は遅く、ホンダに至っては現在もアクティ系でSOHC4バルブのE07Zが現役です。
主な搭載車8:ケータハム セブン130 / 160
カプチーノのごとく小さな車体にK6Aを搭載すれば軽自動車規格で激速のスポーツカーができる!というのはだいぶ以前から知られていました。
ニアセブン(ロータス セブンおよびケータハム セブンの類似車)で軽規格を実現したニュージーランドのフレイザー FC-4などその代表格でしたが、限りなく本家ロータス セブンに近い、今や本家と言ってよいくらいのケータハムがついに軽規格セブンに参入しました。
といっても、そのデビューは既に新型R06Aエンジンが登場しスズキでもK6A搭載車が少なくなっていた2013年のことで、なぜかかなり遅いものでした。
通称「軽タハム」とも呼ばれるケータハム セブン160は399万6,000円と「量産車としては史上最高額の軽自動車」ですが、当初日本に導入された64馬力のセブン130とは異なり、80馬力を発揮した最強のK6A搭載モデルでもあります。
輸入車だからこそ存分に力を発揮できるセブン160のK6Aこそ、もっとも「素」に近いK6Aターボかもしれません。
まとめ
初期にはモータースポーツで軽自動車のみならず小排気量クラス最強エンジン、新規格軽自動車の時代には実用車からスポーツモデルまでが使い、スズキの統一エンジンにもなったK6Aですが、今や軽トラのキャリイですら新型のR06Aに代わっています。
2017年9月現在でもK6Aを使っているのは世界最強クラスのオフローダー、ジムニーとケータハム セブン160のみですが、両者ともターボ車なのでNAのK6Aは今や絶版。
ジムニーも間もなくの登場が噂されている新型にK6Aを積むことは無いと予想されるので、国産車用K6Aは間もなくその歴史の終焉を迎えます。
しかしオールアルミエンジンのため軽量な反面、チューニングの限界は鉄製のF6Aより低いとも言われるK6Aは、数多く使われたこともあり、今後も長く活躍を続けることでしょう。
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