偉大なるカーデザイナー ゴードン・マレーが率いる『ゴードン マレー オートモーティブ』は、新型スーパーカー『T.50』を発表。しかも、F1チーム レーシングポイントと提携し、開発は2社の合作として送り出されます。そんなゴードン・マレーT.50についてご紹介します。

掲載日:2020/01/05

© Gordon Murray Design

名門ゴードン・マレーがスーパーカー『T.50』を発表

© Gordon Murray Design

ゴードン マレー オートモーティブ(GMA)は、2019年12月10日に自社第一号のスーパーカーとなる、『T.50』のデザインを公開しました。

ゴードン・マレー氏は現在F1に参戦している『レーシングポイント フォーミュラー1』と提携し、空力性能とエアロダイナミクスの開発テストを行い、F1テクノロジーが詰まったスーパーカーを世に送り出します。

ゴードン・マレー氏は、かつて歴史的なスーパーカーであるマクラーレン F1を開発した人物でもあり、T.50はF1の第2世代的なモデルになる見込み。

シートもF1同様にセンターに運転席、その後方に2座席の3シートレイアウトが採用されています。

ゴードン・マレーとは

ゴードン・マレー氏 / © Gordon Murray Design

ゴードン・マレー氏は南アフリカ出身の自動車デザイナーで、2007年7月に自身のコンサルティング会社『ゴードン・マレー デザイン』を設立しました。

その後、多くのフォーミュラーマシンとロードカーの開発に携わり、数々の名車を生み出しています。

F1での業績

マレー氏はナタール工科大学(現:ダーバン工科大学)を卒業後、イギリスのブラバムに就職。

ブラバムの新オーナーに、後のF1グループ CEOとなるバーニー・エクレストン氏が就任すると同時にチーフデザイナーに任命されました。

そこからF1マシンの開発に着手し、斬新なマシンを次々と生み出します。

そして1981年にフィラスポーツ・ブラバム・BMWチームから出場したネルソン・ピケ氏は、マレー氏の開発したマシンでドライバーズチャンピオンを獲得。2年後の1983年にもシリーズタイトルを手にします。

1986年にマクラーレンへ移籍したマレー氏は、アイルトン・セナ氏とアラン・プロスト氏が乗っていた『MP4/4』の設計・開発に携わり、1988年にグランプリ全16戦中15勝の圧倒的な速さを見せ、セナ氏をドライバーズチャンピオン、マクラーレン・ホンダのコンストラクターズ・チャンピオンへと導きました。

ゴードン・マレーの作品

マレー氏は、フォーミュラーカーの開発後にマクラーレン・カーズへ移籍し、ロードカーの設計に回ります。

その時に開発したのが、マクラーレン・F1とメルセデスベンツSLRマクラーレンでした。

そして、ゴードン・マレー デザインを立ち上げてからは、1リッターのバイク用エンジンを搭載した1960年代のグランプリマシンをモチーフに設計した『ロケット』、コンパクトな車体のプロトタイプシティカー『T.25』、イギリスの自動車メーカー『カパロ(Caparo)』が製造したスポーツカー『カロパ・T1』の開発に携わり、日本メーカーではヤマハ『MOTIV』、東レの開発した電気自動車『TEEWAVE AR1』の開発に参加しています。

目を引く直径400mmのファン!驚異のエアロダイナミクス

© Gordon Murray Design

T.50で一番目印象的なのは、車体後部に装備された直系400mmのファンです。

これは、マレー氏がブラバム時代に設計し、1978年にF1へ投入した『BT46B』のアイディアで、このマシンは通称『ファンカー』と呼ばれます。

そんなBT46BのファンをT.50にも採用し、大型ファンを回転させることにより、アンダーフロアの空気を強制的に車体後部へ吸い出し、強力なダウンフォースを獲得。

ファンは、可変式の車体下部ダクトとリアウィングにより6種類のエアロモードが選択可能で、ドライバーの操作と車速によって、ウィング、ファン、アンダーボディディフューザーを最適化させます。

また、ブレーキモードに切り替わり、ブレーキング時にファンが高速回転になると、ダウンフォースは2倍となりブレーキの制動距離を短縮。

ほかのエアロモードでも、それに沿ったダウンフォースに調整し、走行時のスタビリティーを高める設定がなされています。

しかし、まだこれは試作段階であるため、T.50の空力テストはまだまだ続けられており、レーシングポイントと提携したことでレーシングポイント本社ファクトリーにある風洞実験施設が利用可能になりました。

これにより、2020年初頭からは風洞施設で40%スケールの模型を使った物理的な試験を開始します。

F1マシンにおいて経験豊富なレーシングポイントのエンジニアが開発に携わることで、マレー氏が発明したファンと、現代のF1テクノロジーがT.50で上手く融合していくことでしょう。

コスワーズ製V12エンジン搭載にVmaxモードを装備

© Gordon Murray Design

T.50のパワートレインは、コスワーズ製3.9リッターV型12気筒NA(自然吸気)エンジンとISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と呼ばれる48Vスタータージェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッド機構です。

ドライビングモードで設定された『Vmaxモード』では、ISGを作動させ最大3分間の追加ブーストを発動。

その間は約30馬力のパワーが上乗せされます。

これに、トランスミッションは英国Xtrax製の6速MTが組み合わされ、今ではスーパーカーには珍しいHパターンとなっています。

しかも、デュアルクラッチをあえて採用しないため、クラッチペダル付きのMTになるかもしれません。

フレームは独自開発のカーボンファイバー製モノコックを採用し、ほぼすべてのボディパネルもカーボン製。

また、ブレーキもカーボンセラミックが採用され、車両重量は980kgと他のスーパーカーより圧倒的に軽く、エンジンは650馬力を発揮するため、パワーウェイトレシオは驚愕の1.5を達成します。

スペック

© Gordon Murray Design

GORDON MURRAY T.50
全長×全幅×全高(mm) 4,329×1,850×1,152
ホイールベース(mm) 2,700
車両重量(kg) 980
エンジン 65°V型12気筒DOHC36バルブ
排気量(cc) 3,994
最高出力(hp) 650
最大トルク(Nm) 450
最大回転数(rpm) 12,100
トランスミッション 6速MT
サスペンション アンチロールバー付きダブルウィッシュボーン
ダブルウィッシュボーン

まとめ

ブラバス・BT46B / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Brabham_BT46

40年以上も前のF1テクノロジーがマレー氏とレーシングポイントにより蘇ることは、誰も想像できなかった夢のような話です。

過去に一世を風靡したF1マシンの技術が今となって現行車に採用されるのは、これまでのスーパーカーではあまりありません。

これは、コレクターやF1好きにとって非常に興味深い1台ですが、手にできるのは2億7,500万円以上を用意できる100人のみとなっています。

 

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