1949年、日本に軽自動車カテゴリーが設立されてから、製造されるボディタイプは車高の低いハッチバックと1BOXタイプの乗用/貨物、そして軽トラックが主流でした。しかしそんな軽自動車の常識を打ち破る1台が、1993年にスズキから発表されます。それが、当時としては世にも奇妙な車高の高いボンネットワゴン、初代ワゴンRでした。
掲載日:2019/11/26
初代スズキ ワゴンR誕生の背景
1949年に軽自動車が、道路運送車両法でカテゴリーとして新設されて以来、スバル360やホンダ N360などの名車が発表されてきました。
そして現在では新車販売台数の半数が軽自動車で、このブームの礎となったのが1976年に軽自動車の排気量が550ccに変更されたことでしょう。
この変更を受けて1979年にスズキ アルト、1980年にはダイハツ ミラクオーレ(現ミライース)が発売されて大ヒット。軽自動車ボンネットバンの黄金期を迎えます。
ちなみにボンネットバンとは車高の低いボディを指し、現在でいうセダンに属する形状。
ボンネットバンが普及するにつれ、室内空間の狭さの改善を要望するユーザーが、後を絶ちませんでした。
しかし、軽自動車はその規格により車両サイズが制限され、室内の幅と長さはミリ単位の拡大しかできず、居住性の劇的改善にはほど遠いのが現状。
そこでスズキが目をつけたのが、車高を高くすることでした。
車高を高くし、頭上空間に余裕をもたせる作戦を選んだのです。
初代スズキ ワゴンRが名車たる理由
日本初のトールワゴンボディ
ワゴンRのプロトタイプは1987年には完成していましたが、社内の事情や売れるはずがないという思い込みにより、なかなか市販化には至らず、1993年になってようやく市販されました。
日本で初めてのトールワゴンという新ボディタイプが、初代ワゴンRによって実現したのです。
ちなみにダイハツ ムーブは、スズキがトールワゴンを開発しているらしいとの情報を聞きつけ、開発は後発ながら市販車の完成はワゴンRより先だったといいます。
しかしダイハツにとっても新たなボディタイプのため、なかなか市販化へのGOサインは出ませんでした。
そうこうしているうちに、ワゴンRに先を越されたのです。
レジャーと移動の道具に徹し、使い勝手を追求
初代ワゴンRは若い男性をターゲットに開発がすすめられ、発売当初のエンジンは直3SOHC12バルブのみ。
ミッションは3速ATと5速MTのフロアミッションのみで、右後部ドアを廃した1+2ドア、現代の保安基準ではあり得ない後部座席のヘッドレストなしが標準仕様でした。
つまり、後部座席に人を乗せる事への優先順位は高くなく、むしろ後部座席をたたんでラゲッジスペースとして使用する意図で作られていたのです。
特に1+2ドアは2019年に販売されたホンダ N-VANと同じで、乗用車でありながらバンのような使用も想定されていたのでしょ。
初代ワゴンRのオプションカタログには、天井に吊るして小物置き場にするハンモックや、サイドウインドウと並行に設置して釣り竿を収納するラックなど、レジャー向けグッズが多く掲載されていました。
初代ワゴンRには、日常の足として使用されていた軽自動車の用途に加え、レジャーツールの1つとしての用途も提案されていたのです。
シンプルなシリーズ体系とエンジニアリング、華美を廃した機能優先の室内が、ツールとしての機能美を感じると当時の自動車評論家は言い、LOFTとコラボした限定車も発売されました。
このコンセプトと79万8,000円~108万3,000円とリーズナブルな価格帯がバブル崩壊後の日本人に受け、ターゲットとしていた若い男性だけでなく、文字通り老若男女がユーザーとなり、大ヒット。
かく言う筆者も新卒の身でありながら、初代ワゴンRの使い勝手の良さとかわいらしいスタイルにほれ込み、購入を真剣に検討した過去があります(買えませんでしたが)。
初代スズキ ワゴンR主要スペックと中古車価格
スズキ ワゴンR RG 1993年式
全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,640
ホイールベース(mm):2,335
車両重量(kg):740
エンジン仕様・型式:F6A 水冷直列3気筒SOHC12バルブ
総排気量(cc):657
最高出力:55ps/7,500rpm
最大トルク:5.8kgm/5,500rpm
トランスミッション:3AT/5MT
駆動方式:FF(4WD車もあり、グレード名はRG-4)
中古車相場:5.9~59.8万円(2019年11月現在)
まとめ
初代ワゴンRは、軽自動車にトールワゴンという新しいボディサイズを導入した点が革命的で、歴史的な1台です。
その功績はダイハツ ムーブや三菱 ミニカトッポ、ekワゴンや日産 デイズなど、現在に至るまで続くラインナップを見れば、一目瞭然でしょう。
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