車を正面からじっくり見ると、様々な場所に穴があいていることが分かると思います。実はこの穴、ただのデザインではありません。車の顔、つまりフロントマスクに開けられた多くの穴は、外部の空気を取り込むことが目的です。では、一体何のために空気を取り込む必要があるのでしょうか。解説します。
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グリルやバンパーに開けられた“穴”にはすべて意味がある
穴はただのデザインではなく冷却の為
車の前面部に開けられた穴は「ダクト」と呼ばれ、デザインのためではなく、エンジンルーム内を冷やすために、走行風を取り入れる目的であけられています。
内燃機関であるエンジンは、読んで字のごとく、内部で燃料を燃焼し、爆発させることで動力を得ています。
そのため、エンジンは常に発熱しており、放っておくと温度はどんどん上昇してしまうので、高温になり過ぎるとエンジンは壊れてしまいます。
そこで、エンジンが高温になり過ぎないように冷やすのが冷却水で、その冷却水を冷やすのがラジエーターと呼ばれる装置です。
ラジエーターには無数に折り重なるフィンと呼ばれる薄い板があり、そのフィンが風で冷やされることで、内部を流れる液体を冷却する仕組みとなっています。
また、ラジエーター以外にも、エンジン内のオイルやオートマチックトランスミッション内のATF(オートマチックトランスミッションフルード)を冷やすためのオイルクーラー、車内の空気で熱くなったエアコンガスを冷やすエアコンコンデンサーといった、ラジエーターと同様の熱交換器を多数搭載。
車のフロント部分に開けられた多くの穴は、これらの熱交換器に風を当て、効率よく冷やすための手助けをしているのです。
ルーフやサイドに穴が開いている車種も
走行風を取り込むために、ほとんどの車は前面部に多くの穴が開けられていますが、中にはルーフ(屋根)やサイドなど、フロント以外にも大きな穴があいている車があります。いったいなぜなのでしょうか。
エンジンがフロントに無いMR(ミッドシップ・リア駆動)やRR(リアエンジン・リア駆動)の場合、効率よく空気を取り込むために、エンジンに近い場所に穴が開けられているのです。
入れるだけじゃなく出すことも大切
ここまで空気の取り込みの重要性について解説してきましたが、同様に重要なのが熱くなった空気を車外に出すことです。
車外から取り込み、熱を持ったパーツを冷ますことで熱くなった空気を適切に排出しなければ、エンジンルーム内の熱を排出することは不可能です。
また、空気が滞留している状態では、効率よく新しい冷えた空気を取り込むこともできません。
そのため、多くの車種ではエンジンルームに溜まった空気を車体下部からか排出しています。
車の床下には走行中、常に空気が前から後ろへと流れており、その流れる空気に引っ張られるように、エンジンルームの熱気が車外へ出ていくのです。
また、ごく一部の高性能スポーツカーでは、ボンネットの上部やボディサイドに排出用の穴が開けられているモデルもあります。
空気抵抗を考えたら穴は無い方がいい
オーバーヒートを防ぎ、本来の性能を発揮するために、車のフロント部分に開けられた穴は非常に重要な役割を果たします。
しかし、出来るだけ凹凸の無い方が空気抵抗を減らせるため、新幹線やジェット機を見ると、車とは違い顔に凹凸はなく、すっきりとした印象です。
また、あまり冷却を必要としない電気自動車は、ほとんど穴のないデザインになっており、例えば電気自動車である日産 リーフやテスラ モデルSなどは、ガソリンエンジン車ならグリルとなっている箇所に、全く穴が開いていません。
ナンバープレートの周囲にも、ほとんど開口部のないデザインが特徴です。
もちろん、エンジンを持たないと言っても、電気自動車は全く熱を発生しないわけではないため、走行用バッテリーやモーターなど、熱を持つ部分にのみを効率的に冷やす工夫が施されています。
環境性能を前面に押し出した電気自動車だからこそ、空気抵抗を極力低減し、航続距離を延ばすことが何よりも大切なのです。
まとめ
今回ご紹介した冷却を目的としたもの以外にも、近年の車は走行安定性や燃費など、さまざまなことが考えられて“穴”が開けられています。
ガソリンエンジン車なら、必要不可欠な穴をいかに効率よくデザインに取り込入れるか。逆に穴の不要な電気自動車は、いかにかっこ良いデザインにしているかなど、この機会に是非じっくりと愛車の顔を眺めてみると、各メーカーの性能とデザインに対する創意工夫が見えると思います。
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