最近は古い車の自動車税・軽自動車税が上がるなど「古い車を持つのがいけないことなのか!」とお怒りの人もいるかと思いますが、世界的にはどうなのでしょう?これまで税金が安かったばかりに、今になって大変なことになっている国などもあり、その実情も含めた日本の「税金の不自由・走る自由」をご紹介します。

掲載日:2017/06/28

Photo by __U___

 

「古い車は重税」という打撃

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

登録車のガソリン車やLPG車、あるいは軽自動車は新車登録から13年超、登録車のディーゼル車ならば11年超で約15%、自動車税がアップされるようになっています。

具体的には以下のような形です。

※いずれも自家用・乗用車のガソリン車で、標準税率から13年超過で15%重課の場合

(単位:円)

軽自動車:10,800→12,900

1,000cc以下:29,500→33,900

1,000cc超~1,500cc以下:34,500→39,600

1,500cc超~2,000cc以下:39,500→45,400

2,000cc以上も同様ですが、見ての通り同じ15%でも排気量が上がるほど増税額は増えていくので、おそらく排気量の大きい車を所有している方ほど、この税制には不満を持っているのでは無いでしょうか。

そう考えると軽自動車は一番増税額が少ないように見えますが、2015年3月31日までに新規登録された軽乗用車の軽自動車税は7,200円だったので5,700円アップとなっており、実は1,500cc超~2,000cc以下の車に次ぐ増税となっているのです。

しかもこれに加えて古い車は重量税も上がっていくので、1989年式ダイハツ リーザ・ケンドーンS(軽乗用車)のユーザーである筆者も、かなりフトコロに痛い話です。

来年の車検、どうしましょう?

エコカー減税の財源だと考えても良いのだけど…?

 

出典:http://toyota.jp/

 

対してエコカー減税は続いており、燃費基準を達成していればその達成状態によって自動車税も自動車重量税も割引されていきます。

税金は、家計に例えれば給料のようなもので、生活していこうと思えば給料が減れば節約するか、何か別の方法で収入を得るしか無く、税収も減れば何か別なもので補うしかありません。

単純に考えれば、新車購入時のエコカー減税の税収減を古い車の増税が補い、環境問題に貢献しているのだ!と言えなくもありません。

ただ、実際には税金の使われ方そのものに一言あったり、エコカーで環境に役立つのかという疑問もあるので、納得できない人も多いのではないでしょうか。

愛するものにお金がかかるのは当たり前!

 

©Motorz

 

そもそも税金と言うのは誰もが安ければ安いに越したことはないと思うので、一般的には安く済ませたいと思います。

しかしそれで税収が減っては国や自治体が困るので、何とか税金を確実に徴収できる方法を考えます。それが「愛するもの、好むもの」に対する増税!

筆者は前述のように古い車に乗っていますが、何らかの不具合が出ることも多く、燃費も今どきの車に比べるとあまり良くないので、維持費だけで考えれば相当なコストがかかります。

それでも乗り続けているのは単純に貧乏だからというだけでなく、好きな車だからなのです。

しかし、愛するもの、好きなものというのは、それがゆえにやめられません

なので税金が高いなと思いつつ、所有し続けているわけなのですが、国や自治体の増税はそこをうまく突いています。

なぜなら、「税金が高い!」と言ったところで、愛着の無い人から見れば「だったらやめれば税金払わなくていいじゃない」で済んでしまうので、全く支持を得られないからです。これはタバコやお酒と一緒ですね。

実際、エコカー減税の恩恵を受けている人の中には「自動車の増税?ウチには関係無いね」という人も多いのではないでしょうか。

それでも日本は古い車に優しい国

 

©Motorz

 

しかし、税金が高いと感じる一方で日本は先進国の中でも有数の「古い車に優しい国」でもあります。

例えばの話ですが、日本で「古い車だから」「排ガス規制を満たしていないから」という理由で、古い車の乗り入れが規制されている場所がどのくらいありますでしょうか?

・富士山の「ふじあざみライン」「富士スバルライン」はバスやタクシー、許可車両を除くと、一般の自動車・軽自動車で通行できるのはEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)だけ(静岡県富士山マイカー規制)。

・ディーゼルエンジン車に関しては、商用車を中心に排出基準を満たさない車両の通行や乗り入れが禁止、あるいは条件付きというケース(九都県市あおぞらネットワーク)。

こうした例外を除くと、古い車はほぼ日本全国走り放題だと考えてもいいでしょう。

他の国のケースを見ると、税金が高いだけで古い車でどこにでも行ける日本という国は、恵まれた環境にあるとも言えます。

他国で古い車に厳しいケース

 

 

ポルシェやメルセデス・ベンツなど古い車の部品供給に熱心なメーカーがあり、「古い車に優しいイメージ」のあるヨーロッパは、その車の維持はともかく自由に走れる環境にあるとは言えません。

例えばフランスのパリ。

2016年7月1日に施行された条例により、以下の車が平日の8時~20時の乗り入れを禁じられました。

・1997年より前に製造された自動車

・2000年より前に製造されたオートバイとスクーター

1997年に登場した自動車で代表的な車種と言えば、日本車ならトヨタの初代プリウス初代ハリアー、スバルの初代フォレスター、日産 初代エルグランドなどとなりますが、そこまでがギリギリセーフのラインとなっており、それ以前の車は走る事ができません。

軽自動車などの旧規格車(1998年9月まで)は、よほど末期に作られたもの以外全滅で、日本ではまだまだ見かける年代の車がゴッソリ走れなくなったら大変です。

実際、パリでも約50万台の車が乗り入れ禁止となた為、旧車ユーザーを中心に抗議行動や訴訟が起こされており、「せめて1997年以降の車を購入するためパリ市は補助をすべき」という声も上がっているそうですが、パリ市当局が手綱を緩める様子はありません。

同種の規制はローマやミラノ(イタリア)、北京(中国)、ロンドン(イギリス)でも行われており、旧車どころか「まだまだ数多く走っているちょっと古い車」への規制が激しくなっているのです。

その他、ドイツなど各地で排ガス規制に対応したステッカーを車に貼る制度があり、「この色のステッカーはこの先乗り入れ禁止」という標識もあります。

「税金高い」と「乗り入れ禁止」はどちらがユーザーに優しいか?

 

©Motorz

 

そうした「乗り入れ禁止区域」が設定されている国・地域では、自動車の代替えとなる公共交通手段などが発達しているケースが多いと言われます。

また、北欧各国のように日本より自動車関連の税金が高い国でも同様で、それに加えてそれらの国では国による国民へのサービスがより多く提供される代わりに各種税金が高い「福祉国家」で、前提がかなり異なるのです。

日本の場合はむしろ、公共交通の廃止や縮小で自動車を使わざるを得ない環境にありながら、それに加えて自動車関連の税金を上げていることで批判の対象になっていると言えるでしょう。

もちろんそれに対応して環境に優しいエコカーへの税金をもっと下げて買い替えを促し、環境対策を行うことで、古い車の乗り入れ規制を避けているとも考えられます。

ただ、「排ガス規制などを原因とした乗り入れ規制」は日本だとディーゼル車が対象で、ユーザー以外からはあまり馴染みが無く、どこでも走れるのが普通だという感覚が強いので、ありがたみを感じられないのかもしれません。

まとめ

 

「古い車に税金をより多く払わせる」、この日本のシステムはおかしいのではないか!そう感じる人も多いかもしれませんが、他国でも単に自動車関連の税金が安いだけではない、ということがわかります。

むしろ古い車でも税金が安い上に排ガス規制の緩い国が多かったため、大気汚染を助長した結果として今になって古い車の通行を制限しているケースもあるのです。

日本の場合はむしろ、「古い車の税金が上がることで、それをどこでも自由に乗れるようにしている」のかもしれません。

そういったプラス思考の上で、せっかく高い税金を払って維持しているのですから、あなたの古い愛車をより深く愛してみる、そう考えてみるのはいかがでしょうか?

こう思い続けるためにも、せめて好きな車でいつまでも、どこでも走れる日本でいてほしいものです。

 

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!