自動車に関する法律や規制は、車の性能向上と共に変化しています。今回は、安全性の規制や法律の中の「衝突安全ボディ」の制定により、消えた名車をご紹介します。
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衝突安全ボディの歴史
「衝突安全ボディ」は、車の衝突時における乗員保護を考慮して設計されたボディです。
フロントまわりやリアまわりなどには、衝突時にあえて潰れて衝撃を吸収するボディ構造「クラッシャブルゾーン」が設けられています。
衝撃吸収ボディの法律は、1993年に道路運送車両の保安基準の改訂により定められました。
翌年1994年以降の新型車には、衝突実験が義務付けられ、年々実験項目が増えているのが実情です。
保安基準改定後の死傷者数の変化
車の安全性が向上した結果、交通事故の死傷者数に変化はあったのでしょうか。
令和3年1月に交通局企画課が発表したデータによると、1994年(平成6年)以降、交通事故の件数が2005年(平成17年)までに、多少の増減はあったものの上昇傾向にあります。死傷者数は、1999年(平成11年)に100万人を突破。
2004年(平成16年)には、118.3万人にまで増加した後に、減少傾向に転じています。
死亡者数は、1994年(平成6年)と1995年(平成7年)に1万人を超えていましたが、衝突実験が義務化されてからは、1万人以下となり、年々減少傾向です。
衝突安全の観点から姿を消した名車たち
衝突安全の保安基準が変更されたことにより、車そのものにも大きな変化が起きています。
乗員の安全を確保するためのクラッシャブルゾーンが設けられたボディの採用のみならず、対歩行者の衝突安全の観点から、リトラクタブルヘッドライトが消滅。
ボンネットとエンジンの間に、空間が設けられる構造が採られるようになったのも、衝突安全の影響と言えるでしょう。
中でも、リトラクタブルヘッドライトはスポーツカーの象徴であり、今でもリトラクタブルヘッドライトファンは多く存在します。
衝突安全の観点から、姿を消した名車にはどのような車があるのでしょうか。
リトラクタブルから固定式へ変更したスーパーカー「NSX」
ホンダ初代NSXは、1990年に登場した世界で初めてオールアルミニウムボディを採用したミッドシップスポーツカーです。
3.0LのV型6気筒自然吸気エンジンを座席後方ミッドシップに搭載し、後輪を駆動するMR方式を採用。
リトラクタブルヘッドライトによる凹凸のない、滑らかなボディラインが特徴です。
2001年に衝突安全性やフロントまわりの軽量化を図るために、リトラクタブルヘッドライトから固定式ヘッドライトへ変更され、2005年までの15年間にわたり、ホンダのフラッグシップスポーツカーとして君臨し続け、生産終了となりました。
歴代唯一のリトラクタブルヘッドライトを採用した「NAロードスター」
ライトウェイトスポーツカーの代名詞とも言える国産オープンスポーツカーが、マツダのロードスターです。
1989年にデビューした初代NA型は、歴代ロードスターの中で、唯一リトラクタブルヘッドライト採用したモデル。
ヘッドライトを格納しているときは、伸びやかなプロポーションを見せ、ヘッドライトを点灯すると丸型ライトが現れる、ひと味違う表情に変化します。
1998年まで製造・販売され、2代目へフルモデルチェンジしましたが、2代目以降は固定式ヘッドライトが採用されました。
日本最後のリトラクタブルヘッドライト「RX-7(FD)」
現在でも根強い人気を誇るリトラクタブルヘッドライトのロータリースポーツカーが、マツダRX-7(FD)です。
1991年にデビューした3代目FD型は、滑らかなボディパネルで構成される、流麗なフォルムが特徴。
歴代RX-7から受け継がれたリトラクタブルヘッドライトは、FD型の流れるようなボディラインの美しさに貢献しています。
2003年までリトラクタブルヘッドライトを装備し続け、生産を終了したFD型は、日本最後のリトラクタブルヘッドライト装着車となりました。
まとめ
衝突したときの衝撃を吸収する衝突安全ボディの「クラッシャブルゾーン」は、自動車の安全性を向上させました。
そして自動車の安全は、クラッシャブルゾーン、対歩行者などの安全予防安全システムなど、年々向上しています。
また、自動車そのものも、ポップアップボンネットなど、技術や構造が進化している真っ只中。
これからも、どんどん優れた安全性能とスタイルの良さを両立した車が登場することに期待せずにはいられません。
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