少し古めの国産車のなかでも、特に1990年代のスポーツモデルで中古車価格の高騰が目立ちますが、それらは以前から盗難被害にあう事も多い車種ではありました。しかし、今後はより一層注意が必要になっているため、盗難にあいやすい、目をつけられやすいクルマの理由と、防犯対策を紹介します。
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盗難されやすい車その1:ホンダDC2/DB8 初代インテグラタイプR
1995年に登場するや、スポーツ派のドライバーの心を鷲掴みにした初代インテグラタイプR。DOHC VTECエンジン初搭載車にも関わらず、それまで「スポーティ」でこそあれ、シビックに比べれば本格派スポーツというイメージが薄かったホンダ インテグラを一気にFF最強スポーツへと昇華させたのが、3代目インテグラをベースにした同モデルでした。
しかも3ドアクーペ(DC2型)のみならず、ファミリー派にも嬉しい4ドア(DB8型)を設定。1.8リッターの排気量から200馬力を叩き出すB18C Spec-Rの初期型は、手作業で仕上げるポート研磨など、レーシーなエピソードが満点で、各種モータースポーツからストリートまで、あらゆるジャンルで活躍。
その現役当時から、特にチューニングカーを中心に盗難被害にあう事が多かった車ですが、現在は程度良好のフルノーマル中古車の販売価格が900万円近いプレミア価格をつけるなど、価格の高騰が著しく、チューニングカーだろうとノーマルだろうと盗難被害に注意せねばならない車の筆頭格となっています。
2001年にモデルチェンジした2代目(DC5型)もそれなりに人気はありますが、発売当時の熱狂と無敵ぶりのエピソードを抱えた初代DC2/DB8が、あらゆる意味で一番人気なのは間違いありません。
盗難されやすい車その2:ホンダEK9 初代シビックタイプR
NSX、インテグラに続く第3のホンダタイプRとして1997年に登場したEK9型初代シビックタイプRも、1.8リッター級のインテグラよりやや格下のテンロク(1.6リッター)級ながら、ベースのシビックSiR(EK4)はもとより、同クラスライバルの三菱CJ4AミラージュRSや、日産N15パルサーセリエVZ-R/ルキノハッチVZ-Rを蹴散らす実力の持ち主です。
しかも競技ベース車は200万円を切るという、今なら軽ターボすら買えるか怪しいほどの安価で、最高出力185馬力のタイプR用B16Bエンジンを搭載したクラス最強スポーツを購入できるという、若いスポーツ派ドライバーにはうってつけの車でした。
そのような背景もあり、インテグラ同様あらゆるステージでセンセーションを巻き起こし、現在でも第一線で活躍できる実力を持っています。
このEK9、クラス最強とはいえ安価な車だっただけに使い潰された車も多かったようで、2010年代には既に程度のよい中古車はタマ数が少なく、今や中古車市場では最高値で800万円近い超プレミア価格となっています。
しかし「結局はシビックでしょう?」というわけか、盗難被害にあいやすい車の割には意外な場所で無造作に青空駐車されている車も多く、少し心配です。
後継のEP3やFD2、FK2シビックタイプRユーロなどもソコソコ人気ですが、「プレミアがついている割に無防備すぎる」という危うさを考えると、初代インテグラR以上ではないでしょうか。
盗難されやすい車その3:日産S13~S15シルビア
1988年に発売されるや、先進的デザインでライバルを圧倒。デートカーとして一斉を風靡した5代目S13から7代目S15までのシルビアも、盗難されやすい要注意車です。
もっとも、バブル崩壊後にデートカー需要が終わってからは、もっぱら「最後の小型2リッターターボFRスポーツ」として、主にドリフトで活躍した事もあり、中古市場でノーマル車のタマ数など、AT車の自然吸気エンジン車以外ではそうそうないため、盗難のターゲットはS13やS14なら主にチューニングカー。
S15ならフルノーマルだと最高で600万円ほどのプレミアがつきますが、SNSなどで盗難被害をよく見かけるのはエアロもカラーリングも派手なチューニング済みの個体で、無造作に保管していると痛い目にあうようです。
盗難されやすい車その4:日産BNR32~BNR34スカイラインGT-R
国産高性能GTの代名詞的存在であり、昔からSNSなどでの盗難被害報告や、オークションサイトや個人売買サイトでの怪しげな出品が目立っていた第2世代スカイラインGT-R(RB26DETTを搭載したBNR32/BCNR33/BNR34)ですが、通称「25年ルール」により、近年は新たな展開を迎えています。
アメリカでは新車販売をしていない車の登録は原則不可ですが、新車発売から25年が経過すれば、実用車というより趣味の嗜好品扱いで登録可能となるため、アメリカで販売されていなかった古い高性能車が今や大人気。
スカイラインGT-RもまずはBNR32、次いでBCNR33の中古車価格が高騰し、中古車市場でのタマ数不足が深刻化しています。
要するに片端から売れてアメリカに流れているわけですが、将来的な価格高騰を見込んで「最後のスカイラインGT-R」BNR34まで中古車のプレミア化とタマ数不足が進み、BNR34のVスペックIIの程度極上車などは最高値3,000万円オーバー。
そのへんのスーパーカー顔負けです。
既に高騰を経験したBNR32や、今もっとも熱いBNR34はもとより、現在もっとも注意しなければいけないのはBCNR33で、今までは中古車価格が控えめで、最高価格もせいぜい600万円台だったものが、今や約1,700万円ほどまで高騰。
国内では人気がなかったからと油断していると、アッサリ盗まれて気がつけば海外で走っているかもしれません。
盗難されやすい車その5:トヨタX100系マークII/チェイサー/クレスタ
やや意外なところでは、1996年に発売されたX100系マークII3兄弟(8代目マークII、6代目チェイサー、5代目クレスタ)も、盗難には注意せねばならない車です。
いずれもスポーツグレードのトップは2.5リッター直6ターボの1JZ-GTEを搭載している程度で、ライバルの日産スカイラインやローレルの2.5ターボと同程度であってスカイラインGT-Rには及ばず、クレスタに至ってはノーマルだとホットモデルのルラーンGですら4ATのみです。
しかしこの代のマークII3兄弟は、従来型保守路線でスポーツとラグジュアリーの中間的なマークIIや、全長を縮めてJTCCなどのレースでも活躍したスポーツ志向のチェイサー、明確にラグジュアリー路線のクレスタなど、車種ごとに分けたキャラクターが評価されており、トヨタ末期の直6ターボ+MTセダンとして人気があります。
この次の代であるX110系が9代目マークII/ヴェロッサ(チェイサーとクレスタは廃止)ともども人気車とは言えなかっただけに、90年代ハイパワーFRセダンをMTで操りたい層や、衝突安全対策、居住性改善でデップリしてしまったセダンではない、引き締まったスポーツセダンに乗りたい層にウケる車として、特にチューニングやドレスアップされた車は要注意です。
防犯対策の例
ここまで紹介した車に共通するのは、BMR34スカイラインGT-Rなど2000年代に入る直前までイモビライザー(盗難防止装置)の標準装備がなかった事で、後付けも可能ですが取り付けているかどうか?装着していても通称「イモビカッター」などで対策が可能なため、それだけで満足していないか?という懸念があります。
また、住宅街を歩いていて「思わぬレア車発見!」などと喜んでみた後に、「考えてみると盗難対策はどうなっているんだろう?」と心配になるケースもあり、盗難率の高い車はせめて日頃からボディカバーで覆うなど、たまたま通りかかった泥棒に、パッと見で程度まで見破られないぐらいには隠すくらいは必要です。
できれば屋外での青空駐車、それも自宅からも近くない適当な月極駐車場などは避け、自宅の目の前で監視カメラ(目立つ場所にダミーカメラ、目立たぬ場所に本物のカメラなど)や振動センサーくらいは設置したいところ。
最近ではバッテリーからの消費電力を最小限で待機しつつ、車の周囲に動くもの(人間など)がある時だけ動態センサーで検知してカメラ起動し、スマートホンへ映像を送ったり、GPS監視を始めるなど、進化したセキュリティもあります。
「盗まれたらその時はその時だ!」と割り切った挙げ句、SNSで「探してください」情報を書き込むのも悲しければ、たまたまTVで見た海外からの中継に盗まれた自分の車が映っていた!元気で走ってたよ!という喜劇的状況(実話)もなかなか悲しいものなので、後悔しない程度に、できる対策はしておきましょう。
泥棒にも意地があり、最終的には保険頼み?
以上、盗まれやすいスポーツカーや対策の一部を紹介しましたが、盗まれたくないオーナーだけでなく、盗みたい泥棒の方にも意地があります。
万全に対策をしたはずの自宅敷地内駐車場から、寝ている間にアッサリ盗まれたケースも少なく有りません。だからといって諦めるのではなく、せめて盗難補償のある車両保険くらいは入っておきましょう。
新車購入時の価格はどうであれ、今や中古車価格が高騰していて簡単に買い換えられない、あるいは中古車買取りにだしてもあまりプレミアのつかないチューニングカーでも、それまでかけたお金が盗難一発でぶっ飛ぶと思えば、多少値が張っても有効な、せめて次のベース車か後継車を購入できる程度の保険に入っておく事を強くオススメします。