薄いブルーに、大胆なオレンジのラインが鮮烈な印象を与える「ガルフカラー」。1968・1969年に、このガルフカラーをまとったフォードGT40が、ル・マン24時間レースで2連覇を果たした事により、一躍有名となりました。これまで様々なレーシングカーが、ガルフカラーを纏って活躍してきましたが、中でも最近関係を深めているのが2021年のモナコF1GPでF1マシンをガルフカラーに染め、最新スポーツカーの720Sもガルフカラー仕様をリリースした、マクラーレンです。そんな伝統のガルフカラーの復活と、過去の名車を振り返ります。

2021年5月のF1モナコGPでガルフカラーをまとった特別仕様のマクラーレンF1マシン / 出典:https://www.mclaren.com/racing/2021/monaco-grand-prix/mclaren-racing-and-gulf-oil-international-unveil-limited-edition-monaco-grand-prix-livery/

レースとは切っても切れないガルフカラー

908や917でも活躍もあり、古いポルシェ911にもガルフカラーがよく似合います / Photo by Steven Tyler PJs

現在は、エンジンオイルやギヤオイルなどのオイルメーカーとして名高い「ガルフ」ですが、そもそもは1901年に、アメリカのテキサス州で当時世界最大規模の油田を発見した事を機に創業され、1950年に世界の石油市場を牛耳る「セブン・シスターズ」の一員ともなった石油会社です。

創業初期にライバルとの競争に打ち勝つべく、明るいオレンジ色で目立つコーポレートカラーで描いた丸の中に社名を入れた「オレンジディスク」をロゴとして採用、1960年代に現在のロゴが完成します。

初期の「ガルフカラー」をまとってガルフの宣伝ツアーを行ったグラマンG-22”ガルフホークII” / Photo by Gary Todd

初期のガルフカラーはあくまで「オレンジを主体に青文字の社名が入る」というスタイルで、1930年代に当時のガルフカラーに塗られたグラマン製戦闘機を飛ばし、アメリカやヨーロッパで宣伝に使うなどの広報活動で、多用されていました。

ボディの大部分を彩る薄い水色にオレンジのラインという、現在の「ガルフカラー」が本格的に登場するのは1960年代で、ジョン・ワイヤー率いるイギリスのレーシングチーム「JWオートモーティブ・エンジニアリング」の活動が始まったあたりとみられます。

2013年のシルバーストン6時間レースに現れたガルフレーシングのレーシングトレーラー。もちろんガルフカラーだが大迫力! / Photo by David Merrett

時代によってカラーリングやパターンは若干異なるものの、現在も「ガルフカラー」はレースファンにとってお馴染みの存在であり、サーキットでひときわ目立つのみならず、ファンによるレプリカ的なカラーリングも人気です。

フォードやポルシェ、マクラーレン、ミラージュで栄光を築いた1960~1970年代

1960年代のガルフとフォードGT40の栄光を象徴するガルフカラー / Photo by David Merrett

ガルフの資本で運営されていたJWチームのマシンは、フォードGT40とGT40をベースにしたオリジナルマシン「ミラージュ」で、特に1968年と1969年のル・マン24時間レースを連覇する活躍で、名声を高めました。

1970年にタルガ・フローリオなどツイスティなコースで戦うため投入されたポルシェ908の軽量バージョン、908/3 / Photo by Andrew Basterfield

1970年になるとJWのマシンはポルシェへと変わり、ポルシェ908をベースに狭い峠道を疾走する公道レース向けに開発された小型軽量バージョン「908/3」で、タルガフローリオへ参戦。

1970-1971年にかけガルフカラーでル・マンなどを走ったポルシェ917 / Photo by Didier Lahousse

さらに1971年に公開された映画「栄光のル・マン」では、スティーブ・マックイーンの名演とともに、ガルフカラーに彩られたポルシェ917が銀幕デビューを果たし、名作レース映画とともにガルフカラーは憧れのレーシング・カラーとなりました(もっとも、現実のル・マンだとJWのポルシェ917は1勝もしていませんが)。

1972年型ガルフ・ミラージュM6 / Photo by David Merrett

その後もJWの独自マシン「ガルフミラージュ」での活躍や、ジョン・ワイヤーの勇退によるガルフ・リサーチ・レーシングへのチーム名変更を経て、ガルフワークスと言えるこのレーシングチームの活躍は、1975年まで続くことになります。

一時の没落を経て、マクラーレンやアストンマーティンなどによる華々しい活躍

BPRグローバルGTシリーズ(後のFIA-GT選手権)へ1992年に参戦、翌年も含め圧倒的な強さを誇ったマクラーレンF1 GTR / Photo by PSParrot

その後は世界情勢の変化でガルフが石油メジャーの座から滑り落ちますが、ライバル他社からの買収を経て、潤滑油(オイル)メーカーとしてのブランドと「ガルフカラー」は生き残ります。

その後、1970年代にアメリカのCan-Amレースでガルフのスポンサードを受けていたマクラーレンは、1992年に初の市販スポーツカー「マクラーレンF1」が発売された後、国際GTカーレースのBPRグローバルGTシリーズへ、マクラーレンF1GTRを参戦させました。

伝統のガルフカラーをまとって1997年のル・マン24時間レースで優勝した、マクラーレンF1GTR / 出典:https://www.gulf-japan.com/history/index.html

その時のガルフカラーは濃い青にオレンジのラインという、現在とは別のものでしたが、後にル・マン24時間レースへ参戦したガルフ・マクラーレンのF1GTRは、再び伝統のガルフカラーをまとっています。

2009年のル・マン24時間レースへ参戦したローラ-アストンマーティンB09/60(009号車・総合40位クラス16位) / Photo by David Merrett

2009年のル・マンシリーズ、シルバーストン1000kmへ参戦したローラ-アストンマーティンB09/60 / Photo by David

1997年にガルフが拠点をイギリスへ移すと、ローラやアストンマーティンといったイギリスのスポーツカーやレーシングカーが、鮮やかなガルフカラーでの参戦を継続します。

2012年にFIA世界選手権を戦った、日産-ローラB12/80 / Photo by Simon Williams

2013年のシスバーストン6時間へ参戦した2台のガルフカラー、アストンマーティン ヴァンテージV8 / Photo by David Merrett

そして、ローラB9/60やB12/80、アウディR8といったプロトタイプ・レーシングカーや、アストンマーティン ヴァンテージV8といったスーパーカーが、ル・マン24時間レースをはじめとする国際耐久レースなどの大レースで活躍し、ガルフカラーの伝統が引き継がれていったのです。

再びマクラーレンとタッグを組んだガルフカラーの栄光はまだまだ続く

ガルフは再びマクラーレンとの結びつきを強め、2021年のF1モナコGPに参戦したマクラーレンMCL35Mは、両社のパートナーシップを祝うガルフカラーに染め上げられた / 出典:https://www.mclaren.com/racing/2021/monaco-grand-prix/2021-monaco-grand-prix/

そして2020年、ガルフは再びマクラーレンとの結びつきを強め、2021年以降のマクラーレン車でガルフが推奨オイルとなったほか、最新型スポーツカー720Sで「ガルフカラー仕様」を発売します。

そんなマクラーレンとの関係を象徴するマシンは、20日もかけて手作業で仕上げられるという、ガルフカラー仕様の720Sのみに留まりません。

そして2021年5月に開催されたF1モナコGPでは、マクラーレンチームのF1マシンが伝統のガルフカラーをまとう特別仕様で参戦し、両社の長期的なパートナーシップ協定を強調してみせたのです。

みんな大好きガルフカラー、イギリスのキュートな3輪自動車リライアント ロビンもレースを見に来て何やらモソモソ / Photo by Mike Roberts

レーシングカーの定番カラーリングは数多ありますが、ファンがレプリカ的なカラーリングを施した愛車で、サーキットに押し寄せるほど人気が高いものは、そう多くはありません。そんなガルフカラーはこれからも、伝統のレーシングカラーとして愛されていくことでしょう。