中古車情報を見ていると、時々「現状販売」、「現状渡し」という但し書き付きで、相場より少々安めに販売されている中古車を目にします。言葉通りなら、個人売買のNCNR(ノークレーム・ノーリターン)と似たようなものかな?と思いますが、買っても大丈夫なものでしょうか?

中古車ゆえに予算がシビア…かも。 / Photo by 写真AC

中古車の「整備渡し」と「現状販売」の違いは?

整備して納車する「整備渡し」。「現状販売」では省略されている場合もある。 / Photo by 写真AC

基本的に、中古車市場で販売されている車は、大雑把に言えば2通りに分かれます。

1つは「契約後に納車前整備を行ってから納車される車」で「整備渡し」とも呼ばれます。もう1つは「展示されている、そのままの状態で納車される車」、中古車情報サイトなどでも「現状販売」あるいは「現状渡し」との但し書きが付けられていて、一般的に同条件の整備渡し車より、安めの価格で販売されている事が多いようです。

言葉通りと考えると、「多少高くても整備してから渡してくれた方が安心できる」と思ってしまいますが、整備渡しには「どれだけの整備を行えば整備渡しとみなされるか」という決まりはなく、結局程度は様々です。

さすがに車検なし(車検切れ)の車なら、車検を通すので安心と思いたいところですが、車検に通っても「車検で定められた検査をパスした車」というだけの状態であるため、たとえば次の車検まで万全の状態で安心して乗れる事を保証するものではありません。

結局リスクがあるのなら、「現状販売」でもいいのでは?と言われると、売る店がその車の「現状」を、どの程度把握しているのかが問題となってきます。

大手中古車情報サイトで検索してみると、以下のような現状販売車の例がありました。

  • 18年落ち走行13.8万kmと低年式・過走行ながら「大きな不具合はなし」の一言で現状渡し14万円のコンパクトカー。
  • 2年落ち走行4.3万km、高年式ながら若干走行距離が長めで、何より車内にペットの毛や臭いがあり、ルームクリーニング後も残る可能性があると記載した273万円のSUV。

前者は「大きな不具合」がないなら、細かい不具合は何がどの程度あるのかが気になりますが、入念な整備をしたとてあまり高額で売れそうにもない車です。

後者は前もって説明しているだけ好感が持てますが、見方を変えれば無駄に終わる可能性があるルームクリーニングを省略し、ペットにアレルギーのないユーザー向けにルームクリーニング代を差し引いた程度の価格で安価に販売しているとも受け取れます(加えて、ルームクリーニング以外の整備は行われているかもしれません)。

このように、売り手の方で整備を行っても、かけた手間の分だけ価値(販売価格)が上がるとは限らない場合に、「現状販売」となる傾向が強いようです。

現状販売の車を買って、すぐに故障などトラブルが起きたら?

買ってすぐにエンジンチェックランプが点いたら嫌ですよね? / Photo by Geoff Parsons

ユーザーとして「現状販売」や「現状渡し」で一番心配されるのは、「買った直後に不具合が判明しても、整備なしでの納車というリスクを知っていて買ったのだからと、クレームを受け付けてくれないのではないか?」という疑問だと思います。

実際にクレームを出してみると「現状渡しなので受け付けられません。直すなら有料です。」と言われるケースもあるだけに、現状販売車の購入は相当な大バクチ。安物買いの銭失いになりかねないリスクがあると思う人も多いはずです。

しかし、実際には、中古車販売において整備渡しであろうと現状販売であろうと、民法で「売られたものが契約通りのものでなかった場合、それを知ってから1年以内なら売り主に返品や返金、代金の減額や損害賠償などの責任を問える」と定められています。

令和2年(2020年)3月以前は、「売主の瑕疵担保責任」という制度だったのが、同年4月以降は「契約不適合責任」という制度に変更され、内容が少し変わっているため、調べる際は注意してください。

中には「契約時の特約に定められているから無効!」という業者もあるかもしれませんが、これも消費者契約法により、「売りっぱなしで責任を負わなくていいなど、売主が一方的に有利になるような条件の特約自体が無効」で、「デタラメなものを売り逃げするのは、たとえそれでいいという条件で売っていてもダメですよ」と、法律で決まっています。

これらの法律では、「売主が知らなかったで済ますのもダメ」と定められているため、たとえ現状販売の車であろうと、エンジンが壊れたりコンピューターに不具合が起きるなど、車としての機能を発揮できない「契約違反」があれば、無償修理や返品と返金、場合によっては損害賠償も請求できるのです。

もちろん、売主が「この車にはこれこれこういう問題があるので、安く現状販売しています。」など、キチンと不具合を説明していれば、その説明された部分に言われた通りの問題が起きても、その責任は問えません。

また、中古車店など業者から購入した場合だけでなく、ネットオークションなどを通じた個人売買でも、キズや不具合などを知らせずに販売した売主には、同じように責任を問う事ができます。

現状販売は「買い」か、「なし」か?

これは車検代の見積もりですが、どんな取引でも納得する説明と明朗会計が一番です。/  Photo by uka0310

法律で、かなり細かく定められているため、現状販売で少々不安のある車でも、いざとなれば責任を取ってもらえるから大丈夫!かと言えば、話はそう単純ではありません。

中古車販売店は販売のプロであっても法律のプロではなく、知らないふりをする業者も存在。個人売買なら、なおさらです。

そこへ「法律で決まっているんだから!」とユーザー自身が乗り込んでも、まず最初は相手にされない場合もあるでしょう。

結果、専門家(弁護士など)を雇って出るところへ出てとなれば、余計な手間もお金もかかるため、実際にはよほど高い買い物か、よほど腹に据えかねた出来事でもなければ、何としても売主に責任を取らせようというユーザーは、そう多くないと思われます。

一方で、「どういう理由で現状販売なのか」を、丁寧に教えてくれるお店なら、現状販売車を購入してもよいでしょう。

新車にせよ中古車にせよ、そして中古車なら整備渡しにせよ現状販売にせよ、「気持ちよく買い物ができる店」で買うのが一番です。