マフラー交換は自動車チューニングの定番の1つ。では、なぜマフラーを変えるのでしょうか。変えることで音が変わる以上にどのような理屈でどのような効果があるのでしょうか?今回マフラーを変えるメリットについて簡単に紹介します。

出典:http://www.jasma.org/

 

マフラーとはどこからどこまで?

出典:https://www.fujitsubo.co.jp/mechanics/

 

はじめに「マフラー」とは具体的にどこからどこまでを指すのでしょうか?

エンジンの排気システムは、エンジンから順に下記のように呼ばれています。

・エキゾーストマニフォールド(エキマニ)

・タービン(※ターボ車の場合)

・フロントパイプ(メインパイプ)

・キャタライザー

・センターパイプ

・サブサイレンサー

・メインサイレンサー

・テールパイプ

※車種によってその順番や位置、有無、分割されているか一体化されているかは異なります。

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このような配置での「マフラー交換」と言えばフロントパイプ以降を指しますが、製品によってはセンターパイプ以降、あるいはテールパイプのみという場合もあります。

 

マフラーの役割とは?

 

Photo by Bill Abbott

マフラーを外したことがある人、あるいはサイレンサーだけでも外したことがある人ならご存知だと思いますが、マフラーが装着されていないエンジンは、たとえ軽自動車のような小排気量であっても凄まじい爆音を立てます。

これはエンジンの燃焼室で燃料の爆発・燃焼を経た排気が非常に高温かつ高圧になっており、排出時に急激に膨張する際、空気を振動させるからです。

そのため排気を一気に排出せず、段階的に膨張させたり干渉させることで音を小さくしたり、音質を変えるのがマフラーの役目となっています。

その性質を活かし、車のキャラクターに合わせた音に調律(チューニング)したり、三菱 GTOやジャガー Fタイプのようにサイレンサー内のバルブを開閉して音を変える「アクティブエクゾースト」を純正装備している車種も!

他に排ガス浄化という役割もありますが、これはマフラーの中でも「キャタライザー」あるいはディーゼルエンジンのDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)が主に担当しており、動力性能にも重要な役割を果たすのですが、今回は割愛させて頂きます。

 

ボクサーエンジンやV8エンジン特有のサウンドはエキマニで調整

 

Photo by Bill Abbott

 

こうしてマフラーからは、「排気音」「エキゾーストノート」「エキゾーストサウンド」などと呼ばれる音を立てながら排気が排出されます。

この時、ボクサーエンジン(水平対向エンジン)やV型8気筒エンジンなどでは「ドコドコドコ…」あるいは「ドロドロドロ…」という特有の音を立てるのを聞いたことがある人もいると思います。

これはエンジンからの排気がエキマニで集められる際に、エキマニの長さがシリンダー(ピストンが上下する筒。気筒。)によって違うため、他のシリンダーから流れてきた排気に別なシリンダーの排気がぶつかることで「排気干渉」が起きるためなのです。

この音は好みが分かれるので、現在販売されている車では純正でエキマニの長さが調整され、ノーマルでは排気干渉音が起きにくくなっている反面、個性を失うためあえて排気干渉音を出すアフターパーツも販売されています。

いずれにせよ排気音や排気抵抗などの性能は、マフラー以外にエキマニも大きく影響しているのです。

 

マフラー交換で変わるもの

 

出典:http://www.trust-power.com/products/exhausts/power_extreme_r/

 

さて、キャタライザーやエキマニを除いたマフラーのみ交換の効果ですが、基本的には以下のようになります。

・パイプを太くする:排気抵抗減少、排気効率アップ、トルク減少。

・パイプを細くする:排気抵抗増加、排気効率減少、トルクアップ。

・サイレンサー廃止または交換:音質と音量、排気効率、トルクの変化。

・見た目や排気音:やる気があるように見える。

・耐久性:サビにくい素材を選べば塩害によるマフラー本体は腐食しにくくなる(ボルト類などはまた別)。

・軽量化:素材や形状により排気系の軽量化を行える。

※車種や製品により異なります。

大抵のマフラーでパイプが太くなっているのは排気効率を上げてレスポンスや馬力向上が狙いですが、マフラー出口形状は特にその見た目に影響するため、性能とはまた違った意味で出口のみを太くしたり、テールエンドのみを太く見せるパーツも販売されています。

また、音量や音質が変わる効果も大きいので、ドレスアップ目的の場合は性能云々はあまり考える必要は無いかもしれません。

 

ターボとNAではマフラーが基本的に異なるので注意!

 

 

ドレスアップにせよチューニングにせよ注意が必要なのが「対応品以外への交換」で、極端な話、口金さえ合ってしまえば何でも装着できますが、できれば同車種で流用した方が加工は最低限で済む事がほとんど。

ただしその場合に、同車種・同系統のエンジンで「NA(自然吸気エンジン)には社外品が無いのに、ターボエンジンにはあるからターボ車用マフラーをつけよう!」などと考えてしまうと大変です。

なぜかと言えば、ターボエンジンはターボチャージャーがある程度の消音効果を発揮するので、サイレンサーの性能がNAエンジンのマフラーより劣る場合があるからです。

そのマフラーをNAエンジン車に装着してしまうと、意図せず爆音マフラーになってしまうかもしれません。

ドレスアップ目的だからそれでもいいと割り切る人もいるかもしれませんが、車検に通らなかったり、最悪の場合は違法改造車として捕まる場合もあるので要注意です。

 

太いマフラーが良いとは限らない

 

Photo by dave_7

 

ドレスアップ目的ならばともかく、性能を重視する場合は単純にマフラーを太いもの、排気効率の良いものに交換すればいいとは限りません。

何しろ排気効率を上げ過ぎるとトルクが細くなるので、エンジン性能のバランスを崩しかえって遅くなってしまうからです。

そのため、特に小排気量の高回転型かつ低速トルクの細いエンジンではパイプ径はテールエンドを除きほぼ同様、サイレンサーの構造や数、パイプの曲げ方の工夫でのトルクアップが主目的というアフターパーツも存在します。

 

マフラーの効果を最大限に追及するなら、どこまでやりますか?

 

出典:http://www.trust-power.com/products/cooling/intercooler/

 

また、排気効率が優れるということはそれだけエンジンを高回転まで回すレスポンスの向上が狙えますが、そのためにはより短時間で多くの空気を吸い込み、より多くの燃料を燃やし、かつそれを急激に増やす能力が必要です。

それはマフラー交換で得られるものでは無く、吸気系や燃料系パーツの持つ性能、エンジンコンピューターが補正できる範囲に左右されるのです。

そのため、マフラー交換のメリットを最大限まで追求するなら、以下のようなチューニングも必要となってきます。

・エアフィルターや吸気パイプなど吸気系の変更

・燃料ポンプやインジェクター(燃料噴射装置)またはキャブレター(燃料と空気の混合装置)など燃料系の変更

・コンピューターのプログラム変更やサブコンと呼ばれる補助コンピューターの装着、フルコンと呼ばれる別なエンジンコンピューターへの変更

もちろん、マフラー交換だけで得られる性能で満足しても良いでしょう。

ただし、特に2000年代以降にデビューした車ではエンジン単体だけでは無くミッションやブレーキ、デファレンシャルギアまで含めた総合的なコンピューター制御が行われるものが増えました。

「マフラーとエアクリをポン付けして、サブコンで実走セッティング」という昔とは異なり、ワンオフマフラーで手軽にチューン!とはいかなくなってしまったのです。

 

音やエンジン性能以外に、チタンマフラーなら軽量化!

 

出典:https://www.fujitsubo.co.jp/prods/detail/000000000000001718/00000000000000003906/00001103

 

マフラー単体で効果を期待できる部分は、それだけではありません。

大抵の場合、マフラーはコストの問題で鉄で作られていますが、これをステンレス製に交換すれば錆に強くなりますし、チタン合金製にすれば軽量化することもできます。

中には日産 R35GT-Rのようにダウンフォースの代わりに車重で路面とのグリップを稼ぎ、空気抵抗を増やさないコンセプトの車種もあり、軽量化が一概に性能をアップするとは言えません。

それでも、特に車体重心位置から遠いテールエンドの軽量化で性能アップを狙いたい車種・用途では効果的なので、エンジン性能アップが狙えない車種でもチューニングを目的としたマフラー交換という選択肢は”有り”ではないでしょうか。

チタンマフラーの場合は独特の焼き色が入っている製品もあるので、ドレスアップ向きでもありますね。

 

まとめ

パーツ交換によるチューニングやドレスアップは「考えている時間が一番楽しい」ものですが、マフラー交換も検討する過程でこれだけ多くの事が考えられます。

もちろん車種別・用途別でここに書かれていることと違う場合、別な効果があったりもするので、マフラー選びの際は「この車でこのような使い道をするなら、何がいいだろう?」と、考え始めると自分ひとりではなかなか答えが見えてこないかもしれません。

周りの仲間やインターネット上で質問できるところ、ショップのプロなどに積極的に相談し、カスタムをもっともっと有効に楽しんでいきましょう!

 

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