かつてF1には「John Player Special」というスポンサーが存在しました。現在は広告が規制されているタバコメーカーの1つです。そんな、漆黒のボディカラーに金のラインと文字が印象的なJPSカラーを身に纏ったマシンたちの中から、特に印象深い物をご紹介していきたいと思います。
「走る広告塔」となったレーシングカー
1960年代後半から1970年代初頭にかけて、モータースポーツ界では様々な革命が起きました。
その革命の一つが、FIAが広告活動を解禁したことにより、資金や技術などを提供する企業のカラーやステッカーを身にまとったマシンがサーキットを走るようになった事でした。
後に「走る広告塔」と呼ばれたこのシステムを大々的に行い始めたのは、F1の名門チームであるロータスだった言われています。
当時、チームロータスのイメージカラーはグリーンでしたが、スポンサーとなった「ゴールドリーフ」というタバコのイメージカラーであるオレンジとゴールドに塗り替えられ、ひときわ目立つ存在となりました。
現在ではカラフルに彩られたマシンがサーキットを走る姿は当たり前のように見られていますが、その原点はここにあるのです。
チームロータスはその後、「John Player Special」(以後JPS)というタバコメーカーからサポートを受け、イメージカラーである黒地に金のロゴで被われたボディとなりました。
このカラーリングはチームロータスのイメージカラーと言ってもいいほどに世間に定着し大人気となったのです。
今回は、このJPSカラーにまつわる代表的なマシンをご紹介していきます。
JPSロータス72D
ロータスの創設者、天才コーリンチャップマン氏がF1に送り出した傑作、ロータス72は、改良を重ねながら長きに渡りF1で活躍したマシンです。
1970年にデビューしたこの72は、1975年までF1に参戦しており、1970・72・73年のコンストラクターズタイトルを獲得しています。
その中でもこの72Dは、若手の成長株であったエマーソン・フィティパルディを当時の史上最年少ワールドチャンピオンに押し上げた、ロータス初となるJPSカラーをまとったマシンでもありました。
史上初となる黒地に金のラインと文字で飾られたこのマシンの姿、いかがでしょうか?
当時のモータースポーツ界では、黒はあまり縁起の良くない色として認識されており敬遠されていましたが、この斬新なデザインとその活躍により、瞬く間に話題となり世の中のから注目される存在となったのです。
スポンサーであるJPSにとっても、大成功といえる活動だったといえるでしょう。
JPSロータス77
このカラーとマシンを見て懐かしい想い出が甦る方は多いのではないでしょうか?
このマシンは、アメリカ人ドライバーであるマリオ・アンドレッティが1976年、日本初開催となるF1GPで記念すべき勝利を納めたJPSカラーのロータス77です。
このロータス77は、当時不振に喘いでいたロータスを象徴するかのようなマシンであり、開発に息詰まっていた天才チャップマンの「迷作」ともいえるでしょう。
日本GPでの優勝も、他のマシンと比べ低いとされたロータス77のメカニカルグリップが助けとなり、タイヤが長持ちした結果だったといわれています。
このようなロータスが不振だった時にもサポートを絶やすことはなかったJPSの力添えは、その後のロータスの大躍進を支えたのです。
ちなみにこのマシンは、2017年に富士スピードウェイで行われたサーキット生誕50周年のイベントにも参加しており、今もなお元気に走る姿を見せてくれています。
JPSロータス79
「F1史上最も美しい車」として挙げられることの多いJPSロータス79は、その美しいデザインとJPSのカラーリングが最高にマッチした1台といえるのではないでしょうか。
ロータスチーム内では、このマシンを「John player special MK.Ⅳ」と呼んでおり、JPSとロータスがいかに協力的な関係であったかを物語るエピソードといえます。
「ブラック・ビューティー」と言われた美しい見た目と共に、グランドエフェクト効果(空力効果)を与えられたこのマシンは当時最強と呼ばれ、他のマシンより2秒も速く走ってしまうこともあったそうです。
その強さはタイトル争いにも表れ、マリオ・アンドレッティとロニー・ピーターソンのドライブにより、1978年のドライバーズタイトル1・2とコンストラクターズタイトルを獲得するという圧倒的な成績を残しました。
JPS.MK.Ⅳは、まさに「special」と呼ぶに相応しいマシンだったといえるでしょう。
JPSロータス91
1982年に登場したこのJPSロータス91は、ロータス創設者であるコーリン・チャップマンが生前に手掛けた最後のマシンで、レギュレーション変更のために、ロータス最後のグランドエフェクトカーともなったという、時代を物語るマシンとも言えます。
1978年以降、未勝利であったロータスに4年ぶりの勝利をもたらしたマシンでもあり、ナイジェル・マンセルやロベルト・モレノ、ジェフ・リースという日本でも知られた選手がドライブしていました。
また、当時富士スピードウェイで行われたF1フェスティバルに参加したり、JPSトロフィーの賞典として中嶋悟氏がドライブをするなど、日本とも縁の深いマシンでもあるのです。
そのロータス91は、当時流行になりつつあった丸みを帯びたデザインでしたが、JPSカラーはその丸みにも抜群の相性を見せマシンを引き立てていました。
1981年までチームロータスは複数の企業からサポートを受けていたため、JPSカラーが控えめとなっていましたが、この91より再びJPSカラーがメインとなっています。
JPSロータス98T
モータースポーツ界において、JPSカラー最後のマシンとなったのが、このJPSロータス98Tです。
JPSはそのサポート活動のほとんどをF1で行っており、チームもロータスのみで行われていました。
このことからも、JPSとロータスの繋がりが非常に強かったことがお分かり頂けると思います。
JPSカラー最後となった98Tは、ルノー・ターボエンジンを搭載し、アイルトン・セナのドライブにより、16戦中2勝、8回のポールポジションという速さを見せました。
また、アイルトン・セナの予選のタイムアタック専用車両であるQカーと呼ばれるマシンがあったのも特徴です。
まさにspecial!!
速さを見せたこの98Tは、ジェラール・ドゥカルージュによってデザインされたマシンであり、当時の流行を取り入れ、より丸みを帯びたデザインとなりました。
そして、1970年代に見られた直線基調のマシンと比べるとかなり丸みを帯びたデザインとなっていますが、JPSカラーは非常に良くマッチしており、アイルトン・セナが限定的に着用した蛍光イエローのヘルメットとも相性が良く、マシンもヘルメットもいっそう際立つマッチングを見せたのでした。
日本人も大活躍したJPSカラーマシン
1982年の全日本F2選手権では、i&iレーシングのマシンがJPSカラーで参戦していました。
このマシンに乗った中嶋悟氏は、1982年度のシリーズチャンピオンを獲得しています。
また、JPSトロフィーと名付けられたJPSが冠スポンサーとなったレースに勝利した中嶋氏は、翌1983年にイギリスのドニントンパークにてJPSロータス91をテストドライブする機会を得たのです。
中嶋氏は後にチームロータスでF1デビューを果たしますが、JPSのサポートが終了した翌年であったため、残念ながらキャメルイエローのロータスでの参戦となりました。
また、最近盛り上がりを見せている「ヒストリックF1」に参戦している日本人選手が居ます。
彼の名は久保田克昭。
クラシック・チームロータス・ジャパンの代表を務める久保田氏は、歴代のJPSロータスに乗り大活躍を見せています。
2014年にJPSロータス72Eで参戦したモナコでは優勝もしており、JPSロータス78で参戦した2016年にはアメリカ・メキシコと連勝を飾るなど破竹の快進撃を見せているのです。
現代のF1も注目ですが、JPSカラーのロータスと日本人ドライバーである久保田氏が活躍するヒストリックF1にも注目していきたいですね。
まとめ
「John Player Special」カラーのマシンを特集してみましたが、いかがでしたか?
2011年には、ロータス・ルノーF1が当時のJPSカラーを真似たデザインを復刻しましたが、タバコ広告規制のため、残念ながら今後本物のJPSカラーが復活することは無いと思います。
そんな、F1の一時代を築いたと言っても過言ではないJPSのサポート活動は、名門と呼ばれたチームロータスと共に歩み去っていきました。
シンプルなデザインでありながらこれほどまでに印象深く、そして人を魅了したカラーリングは他にはないのではないでしょうか。
貴方には、お気に入りのカラーリングはありますか?
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